謙虚なサポーターは日本人にマッチする

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育児・子供観察

少し前に書いた「自己有用感」について、「自己肯定感」と組み合わせて考えてみる。
「自己有用感」も「自己肯定感」も、うまく育てられると自他ともに良い状況になります。
反面、過度になりすぎは、他者尊重の低い自己満足で終わってしまう。
前に出るのが苦手な日本人気質から考えると、両方を兼ねそろえた「謙虚なサポーター」は受け入れられます。

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自己有用感と自己効力感

少し前に「自己有用感」について、以下の文章を書きました。
今回はそこに、「自己肯定感」を掛け合わせたものについて考えました。

シンプルにうれしい自己有用感
人の役に立つと嬉しいと感じる自己有用感。 日本人らしいと言って良いのか、年齢が上がるとともに減少します。 自己有用感の世界比較を見ると、意外と言って良いのか平均値周辺。 人の役に立つ良い理由はさておき、だれかに謝意を受けると嬉しい気分になり...

子どもを見ていると、できる子ができない子のサポートするシーンを目にします。
多分100%の利他精神ではなく、100%利己的とも思えず。

年齢が高い子どもが、年齢の低い疲れた子どもの手を引っ張っていく。
自分の片付けが早く終わったから、隣の人の片付けも一緒にやる。

大人になると、他人に何かをするときいろいろ考えて、時に見て見ぬ振りをします。
鬱陶しいと思われないか、何か考えがあるのではないか、セクハラにならないか。

社会性が身に着く前の子どもを見ていると、だれかの役に立って誇らしげにしている顔があります。
他者貢献のような難しい言葉ではなく、相手の感謝の言葉を受け、恥ずかしそうに嬉しそうにしている。

横道に逸れますが「自己有用感」と並んで良く出てくる「自己効力感」があります。

「自己効力感」(self-efficacy)は心理学用語の一つで、何らかの課題に取り組むときに困難な状況であっても、「自分は対処できる」と自分に対して確信、自信といったイメージが持てることをいいます。カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した言葉で、「自己効力感」があることによって人は物事に前向きに取り組み、困難にも耐えられるようになります。人は「どうせできない」と考えるよりも「きっとできる」と考えたほうが行動できるように、「自己効力感」は人の行動に大きな影響を及ぼします。

出典:自己効力感(weblio辞書)

自分に自信をもち、前向き行動ができる「自己効力感」。
周囲からの褒め言葉で「自己有用感」が高まり、これで良いのだと「自己効力感」が高まるパターン。
あるいは、着実に「自己効力感」が積み上げる経験を積み、「自己有用感」に結びつくパターンが考えられます。

自己肯定感の国際比較

さらに「自己有用感」と並んで良く出てくる「自己肯定感」。
意味は言葉通り、(素の)自分を肯定できるかです。

僕はいま子育て中なのでこのワードにアンテナが反応しやすい時期ですが、身近な若者の口からも時々聞く単語でもあります。
10歳代~20歳代の若者は、ほとんどの人が「自分は自己肯定感が低いから」と言います。

自分を肯定するとき、一定以上の自信は必要です。
日本の若者の自信有無についてのアンケート結果が上記です。

私は自分自身に満足している
出典:我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)(内閣府)

肯定的意見の「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」を足すと、2013年は45.8%、2018年は45.1%と-0.7%下がっています。
一番自信を持っている選択肢の「そう思う」は、2018年の方が2013年に比べの比率が2.9%プラスですが、2番目選択肢の「どちらかと言えばそう思う」が-3.6%と、中間層が減っています。
これを格差社会に結びつけるのは乱暴ですが、その一面を否定できるものでもなく。

国別 私は自分自身に満足している
出典:我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)(内閣府)

国際比較したときの日本の若者の自己肯定感低さは耳タコですが、上記が2018年の情報です。
欧米人のみ突出しているわけではなく、アジア圏であっても韓国は73.5%とスウェーデンの74.1%と肩を並べています。

日本には謙虚を美徳する文化もあるため一概に言えませんが、このグラフを見ていると日本の若者の自己評価は低い。

自己有用感と自己肯定感の掛け合わせ

「自己有用感」は、他人が自分を評価しているのではなく、自分が他人の役に立ったかの主観です。
それゆえ、自分評価が甘いと自他の認識齟齬が生まれる点は否めません。
自分は良かれと思っても、相手に暑苦しいと煙たがられる。

「自己有用感」と「自己肯定感」の有無をパターン別に考えてみると以下です。

自己有用感と自己肯定感の有無による評価 ドラえもんキャラ

親として、自分の子どもにどうあってほしいか考え方にもよりますが、「自己有用感=ある」と「自己肯定感=ある」なのか。
自分に確たる自信を持ち、慢心することなく、周囲と調和できる人あたりが上記の表では左上に当たります。
悪例としては、自信があり結果を出しているから他者尊重しないスタンスもあり得るポジションです。

現実を見回してみて、自信満々で周囲に役立つ人を見て、自分はちょっとしんどいと考える人はいる、と言うより日本人はこちらが多数なのではないか。
親が子どもになってほしいのは「自己有用感=ない」と「自己肯定感=ある」かもしれません。
調和を尊重する時代、俺が俺がは周囲に受け入れられにくく、謙虚なサポーターを目指すのは現代的と言えます。

自己有用感と自己肯定感の有無による評価 ドラえもんキャラ

上の表はお遊びですが、考えてみると面白い。
ドラえもんの登場キャラクターをあてはめてみると、僕は上記と感じました。

ジャイアンは「自己有用感」が「ない」ではなく「ある」かもしれません。
そうではくては、ジャイアンリサイタルは開催できない。

ドラえもんがどこに入るのか難しく、「自己有用感=ある」と「自己肯定感=ある」、のび太君の失敗を見てしょんぼりしている姿を見ると、「自己有用感=ない」と「自己肯定如何=ある」か。
しずかちゃんを「自己有用感=ある」と「自己肯定感=ない」としましたが、万人受けするキャラクターとして、日本人に受け入れられやすい。

控えめなサポーターが日本人特性にマッチ

「自己有用感」が高い子どもは、友達の役に立つ。
「自己肯定感」が高い子どもは、周囲との関係をうまく築け、自分の信念に沿って行動する。

出木杉君はフロントランナー感は薄いですがその一例ですし、他にドラマや漫画に出てくる正義の面が強調された「リーダー」が思い当たります。
現実的には、能力と自信がある人がリーダーになるかと言うとそうでもなく、金持ちが表に出たがらないように、能力がある人こそひっそりしている人もいます。

リーダーになりたいか、現代の若者のアンケート結果で大半はNoのリーダー不人気時代です。
新入社員や若手の役職希望者が激減しているのも、その1つ。

他にも現代の若者の特徴として以下が上げられます。
・横並びを望む
・競争が苦手
・嫌われたくない
・多人数の場で質問しない(空気を読みすぎる)
・目立ちたくない

この中で、自己有用感と相性が良いのが「横並び」です。
深い意味で他人の役に立つのは、自分が先回りして結果を渡すのではなく、その人が自分で行動し結果を受け入れるサポート。
このスタンスは「引っ張る(リーディング)」ではなく、「横でサポートする」か「後押し」です。
この点は、日本人の「控えめ」特性とマッチしています。

逆に自己有用感と相性が悪いのは「嫌われたくない」や「多人数の場で質問をしない」。
他人の役に立つ時、これお節介なのか?と躊躇しては役には立てません。
あるいは、公演の後で「質問がある方は?」と言われて、手を上げない。
実際は、だれか知らない人が質問している内容を聞いて分かる通り「それ、たしかに知りたい」がほとんどです。
自分が質問すれば、他人の役に立っていると言えます。

いまは、お節介が悪い方に受け取られることも考えると、立ち止まって行動するか考える人が多くなった気がします。
この大丈夫か判断点が多くなったため、なかなか行動に移せないのは、しかたがないのかもしれません。

判断の結果、これは相手に良い結果になりそうと思い、勇気を出して動いてみる。
相手から謝意を受け取ると、それは大きなモチベーションになります。
それは次回につながる燃料になり、近い状況の時、またやろうの好循環になります。

人間が生まれて、幼少期は積極的に人のお手伝いをして、周囲に褒められる。
学生時代に横並び思想を身に着け、出る杭になるのを避け、人助けが鳴りを潜める。
成人以降、一人で生きていく覚悟ができたころ、あるいは後輩や部下を持つにいたり、他者貢献のうれしさを思い出す。

「自己有用感」と「自己肯定感」のどちらも、突出しすぎているのもアンバランスです。
中庸が1つの理想形として、与えすぎるのは共依存の危険性も出てきます。

困っている人に出会った時、見返りを求めず行動する。
直接的な手助けだったり、相手の力を引き出すサポーターとして動く。
時に「大変だったねぇ」の言葉とともに、困った人の横にいて共感するのもその1つです。

他人の幸せの上に自分の幸せを築くような人は、だれからも愛されます。

さいごに

最近「人の役に立ってほしい」という発言を聞かなくなりました。
僕は昭和生まれで、その世代の人は親や先生、祖父母などから類似の言葉を投げかけられた経験が思い当たるのではないか。
聞かなくなった理由の1つに、他者介入が難しい時代になったのは思いつきます。

それでも、僕は「人の役に立つ」は、相手にとっても自分にとっても、良いことが多いと考えます。
相手も助かり、自分も嬉しい気持ちになるために、大きな何かは不要です。