最近の子育てではスタンダードは、「子どもを褒めて伸ばす」だと思っています。
昭和時代は「厳格な父親がいた最後の世代」、それと比較すると隔世の感です。
では、何でも褒めれば良いのか。
褒め方によって逆効果という研究結果があります。
幼児期は褒めると課題に前向きになる
「褒める」が子どもにとって良いとされる根拠の1つとして、以下のアメリカ国立医学図書館 国立衛生研究所にあります。
75人の2歳の子どもとその母親のやり取りから、その後3歳時点の子どもがどうなったかを調査した。
2歳時点で、母親が子どもに否定的な評価をしている親子の場合、3歳時の子どもは恥を強く感じ、挑戦しない傾向がある。
2歳時点で、母親が前向き(褒める)親子の場合、3歳時の子どもの課題への向き合い方は、自信をもって意欲的に取り組んだ。
正直、この研究レポートは、対象者数が75人(75組の親子)なので、微妙かもしれません。
それでも極論で考えれば、虐待やネグレクトを受けた子どもと、たくさん愛情を受けた子どもが、その後の課題に取り組む姿勢として、後者が優位なのはわかります。
極論でなく大人社会で考えても、否定的な言葉ばかりの上司がいたとして、その部下がどこかで「何もしたくない」と考えるとして納得です。
当たり前かもしれませんが、「褒められた子どもは挑戦する可能性が高い」は、僕は納得です。
もしかすると逆で、「否定された子どもが挑戦しなくなる」と比較して、褒めることが優位なのかもとも思います。
では、どんな褒め方でも良いのか、褒め方によって差が出るいう研究結果があります。
褒めるのは「努力」で「能力」ではマイナスになる
コロンビア大学のキャロル・ドゥエックとクローディア・ミューラーによる、小学5年生を対象にした「褒め方の効果」の研究です。
最初に比較的易しいテストを実施。
その結果はバラバラにもかかわらず、全員同じ80点と子どもに伝える。
その伝えるときに「褒め方」を使い分けて、それぞれのグループに伝える。
1つは「頭がいいね(能力を褒める)」、もう1つは「努力の成果だね(努力を褒める)」ここからがこの調査の目的部分で、その後の以下の2つの調査を行った。
1つ目は、次のテストで「難しい課題を選ぶ子どもの割合」。
2つ目は、さらに追加テストしたときの1回目テストとの差。
その結果が以下です。
ほめ方 難しい課題を選ぶ子どもの割合 考察 追加テスト結果 頭がいいね
(能力を褒める)35% 自分を賢く「見せる」ようになる
間違いをしたくないので挑戦しなくなった最初の試験に比べ25%悪化 努力の成果だね
(努力を褒める)90% 失敗に向き合い、良い方法を考える
次に生かすという挑戦をする傾向が強い最初の試験に比べ25%良化 出典:いい子だとほめられた人ほど自信をなくしやすい(Harvard Business Review)
「能力」を褒められた子どもは、失敗を恐れ難しい問題に挑戦せず、「努力」を褒められた子どもは挑戦した。
考察では「能力」を褒められた子どもは、自分を賢く「見せる」、そして失敗リスクをとらなくくなった、とあります。
「努力」を褒められた子どもは、「失敗を次に生かす」という現代に最重要姿勢の1つ「あきらめない」子が多かった。
難易度の高い課題に対し褒め方で、逆の結果になりました。
さらに追加テストでも、「能力」を褒められた子どもは、「努力」を褒められた子どもより悪い結果になっています。
「褒め方」とは別に、出典元の「Harvard Business Review」の同記事に、男女差の記載がありました。
これも個人的には興味深い、そうなのかもと思える内容だったので、少し記載します。
(上記の研究を行った)ドゥエックが1980年代に行った子どもの男女差の研究。
女の子は、自己を律することを男の子よりも早く学ぶ(行儀よく座って集中していられる、など)。
そのため「いい子だね」とほめられる場面が多くなる。
女の子は「いい子であること」や「頭のよさ」を生来の性質だと受け止めるようになりやすい。
その結果、複雑なことを子どもに学ばせると、利口な男の子よりも利口な女の子の方が諦めが早い。
また、女の子のIQが高いほど、諦めてしまう確率も高かった。
成績がオールAの女の子たちが、最も救いようのない反応だった。出典:いい子だとほめられた人ほど自信をなくしやすい(Harvard Business Review)
成功経験に対し、周りの大人が不用意な発言「いい子だね」と言われ続ける。
結果、うまくやる(失敗しない)が、「いい子」と捉え、失敗できなくなる(目的化する)。
大人になって、社会適応できない人のインタビューなどで、よく見る内容です。
とちらの研究結果も、言えることは「親や周囲の大人の褒め方や、成功・失敗体験の評価」は、子どもに影響を与える内容でした。
「努力」を褒める以外の気を付ける点
「努力」を褒めること以外に、子どもを褒めるときに気を付ける点は何か。
- 「努力」の内容を親子で一緒に振り返る
- 親子それぞれの視点で、良かった点と悪かった点を上げる
- 振り返りはできるだけタイムリーに
- 過去できなかったことやできたことができなかった違いを見つける
- 次に生かせるものがあるか考える
子ども1人1人の性格によるところも大きいですが、褒めるときの気を付ける点を考えてみます。
- 大人側が子どもが自信過剰にならないようコントロール
- 他人と比較は一定までは効果があるが、比較が目的になってはいけない
- 子どもが褒められるために行動するようにならないように
子どもとうまく向き合おうと試行錯誤している大人であれば、日常行っている行動のような気もします。
発言の重さを認識していれば、不用意な言葉が大きな嵐になることは、容易に想像できます。
それは、バタフライエフェクトのようなものとも言えます。
さいごに
このお話は「褒めるなら、どんな褒め方が良いか」というお話です。
しかし、僕は一定以上になった人(子ども)に対しては「褒めない」も、有効だと思っています。
そもそも「褒める」という行為は、年長者など何らかの能力が高い人が、能力が低い人に対して行うことが一般的。
そこに対等な関係はありません。
親子が対等かどうか。
絶対的に対等になるのが難しい、経験や経済的なものがあることは前提です。
しかし、人としてと考えると、1対1の対話であったほうが良いと僕は考えています。
親が子どもを(能力を)褒めるのは、一定の年齢までは有効かつ必要だと思います。
しかし、ある段階に達したら、褒めないことが子どもの自立を促し、加速させると考えています。
何度も書いていますが「自分で考えなさい」は、幼児には難易度が高いとは思います。
それでも、早ければ小学生のどこかから、子どもをこの言葉で突き放すのは、愛情の言えるのではないか。
僕自身、現在は良い年をしたオッサンなので、褒められることは、ほぼありません。
お世辞としての言葉を受けることもありますが、正直、そう感じた場合は、良い気持ちではありません。
それでも、本心で言っているのではと感じるような、感謝の言葉を受けることがまれにあります。
あくまで僕の勝手な解釈なので、発話側の意図通りか分かりませんが、心のこもった言葉は、大きなプレゼントだと感じます。
親が子どもを褒めるのも、ダラダラと不明瞭な言葉の羅列は、心にも頭にも残らない。
ここぞという時に、厳選した言葉を子どもに贈る。
その言葉を受けた子どもが、将来にわたって支えになるようなプレゼントになったら、親冥利に尽きます。