この文章のトピックスは以下です。
・紙の回覧板と電子回覧板を併用している自治体がいる
・自治体以降としては電子回覧板にしたいがなかなか進展しない
・自治会加入者は減少し続けており、都心部では加入率は半数以下
・回覧板のメリデメはあるがそもそも時代の流れを考えても未来は暗い
回覧板は戦後の名残、現在は電子回覧板が普及途上
今回、見てみようと思ったデータは「回覧板」です。
いまの子どもたちのある程度の割合では、黒電話と同様、「回覧板って何?」の可能性があるもの。
そもそも回覧板とは、wikiでは以下記載となっています。
・日本で町内会などで連絡文書等を回覧するための板
・告知事項や配布書類等を挟んで順番に回覧するもの
・連絡文書などを板にばね金具で挟んで固定し(現在は用箋挟が多用される)、集落・町内の各戸を順番に回し、集落・町内全戸に連絡事項を伝える
・1940年(昭和15年)に内務省が下部機構整備を府県に通達したのを契機に隣組などの間における連絡手段として普及し今日まで採用されている出典:回覧板(wiki)
その回覧板について、以下のニュースが目に留まりました。
・回覧板の仕分け作業が大変
・物理的移動も手間
・紙の回覧板の内容をデジタル化したが紙ベースでないと情報が届かない人がいる
・電子回覧板の1世帯当たり利用料は月額約70円
・電子回覧板閲覧アプリの利用率は6割ほど
・電子回覧板は山間部の方がメリットが高い出典:“令和の回覧板事情” 家に不在、面倒くさい、読まない「回覧板」は時代遅れか…負担軽減へ「デジタル化」進む そもそも自治会に加入しない人が増加 生活スタイルの変化、進む少子高齢化…その「在り方」は(長野放送)”
自治会加入率は減少し続けている
そもそも回覧板を運営するにあたり、ベースとして自治会が存在します。

出典:地域コミュニティに関する研究会報告書(総務省)
上記は都市規模別、自治会加入率推移です。
大方の人が想像している通り、人口が少ないほど自治会加入率は高い。
人口最小時規模である人口1万未満の2010年自治会加入率は91.7%、2020年88.6%、前後比-3.1%。
人口最大都市規模である政令指定都市2010年の自治会加入率は77.2%、2020年70.3%、前後比-6.9%。
すべての区分で自治会加入率は下がっています。
上記以外に東京都区部や大阪市を個別にみると、自治会加入率は5割を下回っています。
日本全体で単身世帯が増え続けている世情も踏まえ、この先を考えても自治会加入率は下がる土壌があります。
もちろん、自治会加入率が下がれば、回覧板を見る人も下がります。
メリデメは上げられるが回覧板存続の理由としては薄い
紙の回覧板のメリットとデメリットを上げてみます。
▼メリット
・近所同士のあいさつ程度の物理的な接触
・だれが住んでいるか分かる(顔と名前の一致、安全確認、生存確認)
・インターネット環境や情報閲覧デバイス(おもにスマホ)不要
・紙の回覧板は電子回覧板よりは読まれる可能性が高い可能性
・地域交流、帰属意識
▼デメリット
・物理的な作成が必要
・製作コスト
・急な要件には向かない
・物理的に回すので不在者がいるとそこで止まる
・強制的に周囲の住民との付き合いが発生する
回覧板存続の見通しは暗い
君はなぜ学ばないのか? 田村 耕太郎著
上記の本の中で、シンガポールに学びに来る学生について以下の記述があります。
著者はシンガポール国立大学(NUS)で人気講座「アジア地政学プログラム」授業を持っておられ、そこに参加する学生の多様性を表す1つとして、生まれた場所、学ぶ場所、働く場所は違う人が多いと記載されています。
たとえば、東アジアや中東に生まれ、シンガポールで学び、ヨーロッパやアメリカで働く。
こうした多動と分類される人たちは、住んでいる場所への帰属意識はそれほど高くないと想像できます。
そして、事務手続きや情報はできるだけ、シンプルかつ端的にしたい。
もちろん彼らと紙の回覧板は相性が悪く、何で電子でないの?と疑問を抱くのは間違いありません。
現実、数値データは見つけられませんでしたが電子回覧板が普及しつつあるようです。
各自治体は電子回覧板普及に取り組んでいる情報が散見され、情報伝達としては物理伝達に比べより良い電子回覧板がこの先は主流になっていくのか。
僕はいま、東京在住で自治会に入っていません。
よって、紙の回覧板は回ってきません。
自分が学生時代まで住んでいた地方の実家では、回覧板はあったのでその存在は知っており、隣に回す役割も担っていました。
いま、紙の回覧板を見なくて不便かと問われたら、いま住んでいる地域の紙の回覧板を知らないので「分かりません」と答えます。
実際の回覧板に大事な内容が書かれているのかもしれませんが、見たことがないので判断できず。
ただ、自分が昔、地方で受け取っていた回覧は、自分が子どもだったこともありますが、興味をひかれる内容はありませんでした。
そしていま、回覧板なしで生活に支障があるかというと、思い当たる点はありません。
今回、この文章を作るにあたり、いくつかの自治体のアンケート結果などを見ました。
結果、大半の人がそう思うであろう、紙の回覧板を残したいと考えるのは高齢者層です。
そこにスマホでの電子回覧板へのハードルがあるとともに、地域の繋がりを大切にしたい思想があるのかと想像します。
また、若い人は自治会に入らないので、回覧板不要論者が大多数でした。
回覧板の目的を情報伝達とするなら、それはデジタル(電子回覧板)に軍配はあがります。
ただこのときいつも出てくるのが、高齢者でスマホを使えない人をどうするのか。
もしこれが電子回覧板普及の最大のボトルネックなのであれば、10年から20年でそうした人は極小化していきます。
そうではなく、地域住民の繋がりを重視しているなら。
これも自治会加入者が減少し続けている時代の流れに逆行しています。
僕は紙も電子も含め、回覧板不要に1票いれます。
回覧板発足当初目的としていた情報連絡手段は、公共サイトや必要に応じてメールに集約してほしい。
現実、行政からの重要情報は郵便ですが、これもそのうちマイナンバーと紐づけられ、電子でのやりとりになるのではないか。
僕はいま、近所の住民の顔と名前くらいは一致し、すれ違う時はあいさつします。
隣家の人とは雑談する間柄ですが、物のやり取りは(お互いの合意で)ほぼなく、お互い深く入り込むことはありません。
これが東京での令和時代の近隣住民との標準的な距離感だと考えており、そこに回覧板は不要です。
さいごに
ある時、僕の向かいに住んでいる独り暮らしのご老人の生存確認で、僕含め付近の住民が集まることがありました。
状況は、一人暮らしのご老人の洗濯物が2階のベランダで2日以上放置されているのを、隣の住民が見つけた。
一人暮らしのご老人がが家の中で倒れているのではないかと心配し、周辺住民に何か知らないかと声をかけて数件の大人が集まりました。
らちが明かないので警察に来てもらい、警察官が民生委員さんの連絡先を調べ本人連絡先を入手。
警察官がご本人に電話したところ、単に旅に出ていたというオチでした。
その時はその近隣住民が集まり、顛末を見守りました。
東京でも薄い近所付き合いは生きていると思った出来事でした。
