プロスポーツ選手でも会社員でも変わらない

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日本のスポーツ市場は、右肩下がりです。中でもコロナウィルス禍で大きく下げたカテゴリもあり、その業界にいる人たちにとって向かい風となりました。プロスポーツ選手は華やいだ表面であり、そこへたどり着くためには厳選が存在します。プロスポーツ選手に覚悟をもって挑戦するのは1つの道ですが、そこはいばらの道です。

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スポーツ市場規模はここ20年で-23.9%

日本人の余暇についての『レジャー白書』にある、スポーツ市場全体の情報が以下です。

スポーツ市場全体
出典:レジャー白書 2022(公益財団法人 日本生産性本部)

グラフは緩やかに右肩下がり、日本のスポーツ市場はここ20年、縮小傾向です。グラフ内では一番古い1999年が最高値の51,170億円、2021年は38,940億円で76.1%になっています。特筆点の1つは、2020年のコロナウィルス禍での市場減少で、グラフが大きく凹んでいます。3密回避でスポーツ自体、自粛する風潮(社会環境)でもあり、スポーツ観戦もそれにあたります。

スポーツ市場 各カテゴリ別の増減推移
出典:レジャー白書 2022(公益財団法人 日本生産性本部)

1つ上のグラフは市場全体ですが、このグラフは以下の各カテゴリ別情報です。1999年を基点として、その後の増減率を表しています。
・球技スポーツ用品
・山岳・海洋性スポーツ用品
・その他のスポーツ用品
・スポーツ服等
・スポーツ施設・スクール
・スポーツ観戦料

「スポーツ服」と「その他スポーツ用品」は、1999年に比べ増加。「スポーツ観戦料」はコロナ過前までは増加で、コロナ過で一気にマイナス。それ以外のカテゴリは、1999年がピークで下り坂です。

それとグラフ内、2020年はすべてカテゴリで下がっています。2021年は戻していますが、黄緑色の線「スポーツ観戦料」だけはそうではなく。日常的にスポーツ観戦していた人が2020年に離れ、それが戻らないならスポーツ市場全体は暗い未来が待っています。他に、2021年がスポーツ市場自体向かい風だった読みのもとして、以下もありました。

スポーツ参加市場規模は昨年比 3 割減の約 1.1 兆円。
新型コロナウイルス感染症前(2019 年)に比べると市場は半減

・スポーツ参加市場規模は約 1.1 兆円となり、昨年より 3 割減少(▲32.0%)。一昨年より 5 割減少(▲51.5%)。
・過去1年間にスタジアム観戦した人は全体の8.3%に減少。観戦者一人あたりの平均観戦回数も 3.4回に減少。
・コロナ前と比べたスポーツに対する関心の変化は、「スポーツをすること」はやや減退、「スポーツを見ること」は
やや好転。

出典:2021 年スポーツマーケティング基礎調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

世界のスポーツ人口1位はバレーボール

日本では、プロスポーツと言うと野球やサッカーが身近ですが、世界の人気スポーツは違います。世界のスポーツ人口をGoogle検索すると、結果ページによって順位にズレがありますが、だいたい似ている。その中の1つ、MUFGの情報が以下です。

世界での人気 世界参加人口 日本での人気 日本参加人口
1位 バレーボール 約5億人 サッカー 約91.9万人
2位 バスケットボール 約4億5,000万人 野球 約65万人
3位 卓球 推定約3億人 陸上競技 約42.5万人
4位 クリケット 約3億人 バレーボール 約41.8万人
5位 サッカー 約2億6,000万人 卓球 約36万人

出典:スポーツ競技の人口ランキングTop5(MUFG)

スポーツ人口、世界1位は「バレーボール」、2位は「バスケットボール」です。日本の学校の運動部では、両者はたいてい存在している気もしますが、1番人気かというと馴染みが薄い。世界での人気4位の「クリケット」に至っては、そのルールを知っている人を日本国内で探すのも難しい。

今回のこの文章、この世界と日本の参加人口の違いがおもしろいと感じたので書いています。日本では野球の「甲子園」をみんなが知っている国であり野球は2位、いまはサッカーが1位です。

収入の多いアスリート Top10 2022年
出典:Highest-paid athletes of 2022 revealed(FOX sports)

プロスポーツの話題の中でも、興味が高いトップアスリートの収入。2022年はサッカーのワールドカップイヤーだったのが影響しているのか、1位がリオネル・メッシの190M$。年収200億円以上ですが、いろいろな面で2022年はメッシイヤーでした。他にも、Top10の数字は全員100M$以上ですが、プロになりそこで活躍するのは簡単ではありません。

プロスポーツ選手になれる割合は0.16%

プロ野球選手になれる確率は、わずか0.16%

生まれながらにして類まれなる身体能力が求められ、つねに記録や順位という序列が形成されるアスリートの世界では、ことさら「夢」は遠いところにある。インターハイや甲子園で活躍し、オリンピックに出場したり、ドラフト上位指名を受け、プロとして活躍できる一流のアスリートはわずかに一握り。プロ野球で言えば、2019年度のドラフト指名選手の合計は74名で、育成指名を入れても107名(うち21名は社会人)。高校・大学からプロになれる確率は、卒業年度の野球部員合計54,624人から算出すると0.16%という途方もない数字であり、さらにいえば、そのうち10年以上在籍できる者は4割しかいない。

出典:フィールド・オブ・ドリームス 夢を追い続ける力(日テレジータス)

メジャーなプロスポーツで、1軍に在籍する割合はネットで検索すれば、たくさんヒットします。そのどれもが1%未満であり、厳選された人たちがプロと呼ばれていることが分かります。他に、プロになってもその選手寿命は一般的な会社員とは違い短く、セカンドキャリア問題があります。

プロ野球選手の約 50% の最終学歴が高校
そのため、セカンドキャリアに困る人が多い!

プロバスケットボール選手の約98%の最終学歴が大学
就職先を見つけやすい!

出典:プロスポーツ選手のセカンドキャリア(順天堂大学 工藤ゼミナールB)

2022年サッカーワールドカップで時の人となった三笘薫さんの学歴が大卒について、ヨーロッパのサッカーニュースで取り上げられていました。欧州サッカーで活躍する選手のほとんどが大学を出ていない、大卒なのにあれほど活躍している三苫選手の異質さについてのお話です。

いずれのせよ結果が求められる

eスポーツ(イースポーツ、テレビゲームのプレーヤー)が、いまは職業として認知されました。プロ化して日が浅く、プロになれる人は一握りかつ、それだけで食べていける人はまだ少ない状況です。日本のプロゲーマーの第一人者、梅原大吾さんの『勝ち続ける意志力』を読むと、頂にたどり着くには相応のものが必要だと感じます。

僕の親戚の子どもが多分冗談半分で「eスポーツ選手になりたい」とつぶやいていたことがありました。僕はそれを聞いて、心の中で「険しい道を選ぶんだなぁ」と思っていました。

プロとしての椅子の数、それはその業界の市場全体やスポンサー金額になり、eスポーツはまだそのパイが小さい。パイが大きければ難易度が下がるわけでもなく、人気スポーツへは参加人口が多くなりライバルが増える。何にせよ、どんな業界でも頂点に近づくほどギリギリの削りあいでふるいにかかる。メンタルが弱いければそこには残れず、現代では一流プロスポーツ選手の横にはメンタルコーチがいます。

プロスポーツ選手によらず、たいていの職業でメンタルが強いに越したことはありませんが、自分が強心臓にはなれないと判断するなら、そこではないところで勝負するのも戦略としては正しい。一般的な会社員が何を指すかはフワッとしますが、ブラック企業などは別として、いまは会社での心理的安全性が内外から求められます。部下を追い込むようなプレッシャーをかけると、人事や上位の職位者に詰められます。

会社員が歩きやすい道かと言うと、僕はそうは思っていません。自営業者に比べ生ぬるい環境になり勝ちな面は間違いありませんが、いまの一般的な会社員に求められるものは年々上がっています。半期や1年の数値目標(KPI)は普通で、会社員であってもあっても自己責任の旗印のもと、自分の職歴に記載できるものがないと、会社が傾いたときにあたふたする。会社の寿命は短くなっており、転職は常に身近にあります。

その点、スポーツ選手は、最初からいばらの道が確定している点は明確です。スポーツ選手がプレーヤーとして表舞台に立てる年数は、会社員より圧倒的に短く、その短い時間の中でいかに輝くか。

わが家の子どもは、まだ本気で「〇〇になりたい」と言ったことはありません。子どもらしく、なりたい職業は時々で変わっており、「先週は〇〇といっていたじゃない」は子育てあるあるです。

そんな子どもが「プロスポーツ選手になりたい」と言ったなら、僕は自分でその業界のデータを集めて、本人の本気度を聞きます。最初から否定するつもりはなく、どれだけ険しい山か伝えたうえで、そこに挑む覚悟を知りたい。

僕は社会人になって以降、一般的な組織人として、平凡の極致の側にいます。それでも、自分が歩いてきた道を振り返ってみて、平易だったとは思っておらず常にハードルがありました。だいぶ頑張れば登れる山を登頂して一息入れた後、また次のさらに少し高い山に登るような。

職業選択では、当たり前ですがスポーツ選手か会社員の2択ではなく、どれが良いかはありません。「好きなことをやれば良い(好きを仕事にする)」物言いもありますが僕は同意できず、運動音痴の人が野球好きだったからといって、その道に進むのは少なくともお金は稼げません。一流スポーツ選手になれる一握りの人は、先天的(才能)にも生まれ育った環境でも選ばれた人。そうであるがゆえ、そういう人たちが見せてくれる一瞬の輝きはまぶしいもの。予定調和でないところでも、スポーツは人に感動を与えます。

2022年のサッカーワールドカップ、日本代表の予選リーグの大番狂わせもそうですが、決勝戦の濃密な内容。あの歴史に残る試合を見ただけで、スポーツは偉大だと感じます。

さいごに

以前もこのブログで書きましたが、自分がどんな人なのか、考えさせられる質問として「あなたがあるサッカークラブに属するとして、どの役割になりたいですか」があります。選手としてフォワードで点を取りまくったり、堅実なディフェンダーを目指す。あるいは、監督やGMになって、組織全体を統括する。

いまは裏方の職業も、ネットの発達で情報アクセスしやすくなり、ある程度の内容を把握できます。メディカル系や専属栄養士なども、チームの縁の下を支えるメンバーとして、どういう仕事でどうやったらそこにたどり着けるか分かる。

年齢を重ねると、未来の選択肢が狭くなりますが、視野が広がります。プレーヤーでなくとも、自分の好きなスポーツに携わっている人は、楽しい人生なのではと想像します。