この文章のトピックスは以下です。
・自然体験をしたことがない子どもは約1/3
・子どもの自然体験はここ10年で-10.9%
・子どもの数によって経験割合の差はない
・一人親の子どもはそうではない子どもに比べ体験経験は-4.6%
・三大都市圏の子どもはそれ以外の地域と比べて3.4%体験経験が多い
・親が大卒の子どもの体験割合は親が大卒以外に比べ9.9%多い
・親の年収が高く学校外体験している親の子どもの経験割合は高い
・小学校時代に学校外体験がある親の大卒率は大卒以外に比べ+12.8%
・小学校時代に学校外体験がない親の年収は300万円未満が30.5%と最多
・自然体験は自分を研ぎ澄ます1つの有力な手段
子どもの自然体験はここ10年で-10.9%
出典:青少年の体験活動等に関する意識調査(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は2022年の、小4~小6、中2、高2が回答した自然体験の実態です。
経験がある中で1位は「海や川で泳いだ」で、「何度もある」と「少しある」足すと76.1%。
現代は川で泳ぐのは強く止められているので川で泳ぐ経験は少ないと思いますが、海で泳いだ経験も含め約3/4は経験があり、残りの約1/4が経験なしと回答しています。
「キャンプをした」経験は、「何度もある」と「少しある」を足すと50.3%。
「大きな木に登った」経験は、「何度もある」と「少しある」を足すと49.9%。
昭和時代を知っている世代からは、時代は変わったと感じられる数字かもしれません。
出典:青少年の体験活動等に関する意識調査(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は2022年、小4~小6、中2、高2が回答した自然体験の経年変化情報です。
総論、この10年でも経験は減っています。
2012年と2022年を比べると、回答選択肢「多い」が一番減っており、2012年15.8%、2022年10.3%で-5.5%です。
経験している側の2つ目の選択肢「やや多い」も、2012年と2022年を比較すると-5.4%。
選択肢「ふつう」は、2012年と2022年を比較すると+0.1%。
選択肢「やや少ない」は、2012年と2022年を比較すると+6.3%。
選択肢「少ない」は、2012年と2022年を比較すると+4.5%。
世帯年収が高い方が子どもの体験率は高い
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は学校外の体験に参加している子どもの割合、多子世帯か1子世帯かの情報です。
総論、ほぼ差はありません。
いずれの項目においても2%未満の差しかないため、多子世帯かどうかは無関係と言えます。
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は学校外の体験に参加している子どもの割合、一人親か一人親以外かの情報です。
多子世帯かどうかは有意差なしでしたが、一人親かどうかは差があります。
「文化芸術活動を定期させているか」は「ひとり親」18.7%、「ひとり親でない」24.8%でその差6.1%です。
「自然体験・単発」は、「ひとり親」26.2%、「ひとり親でない」30.8%で、その差4.6%です。
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は学校外の体験に参加している子どもの割合、3大都市圏かそれ以外かの情報です。
「スポーツ活動・定期」は「三大都市圏外」41.8%、「三大都市圏」24.8%でその差7.0%です。
他の項目も「三大都市圏」の方が高い数値になっており、都市部在住家族の子どもは各種活動割合が高くなっています。
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は学校外の体験に参加している子どもの割合、保護者が大卒かどうかの情報です。
「スポーツ活動・定期」は「大卒者なし」38.3%、「大卒者あり」53.6%でその差15.3%です。
「文化芸術活動・定期」は「大卒者なし」17.9%、「大卒者あり」29.4%でその差11.5%です。
親が大卒かどうかで、10%以上の子どもの経験差になっています。
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は学校外の体験に参加している子どもの割合、世帯年収が300万円未満の家庭、保護者が学校外経験があるかどうかの情報です。
「スポーツ活動・定期」は「保護者の体験なしの子ども」16.3%、「保護者の体験ありの子ども」45.4%、その差29.1%です。
「自然体験・単発」は「保護者の体験なしの子ども」11.2%、「保護者の体験ありの子ども」28.4%、その差17.2%です。
世帯年収が300万円未満のご家庭では、保護者の学校外経験有無によって、子どもに大きな差が生まれています。
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は学校外の体験に参加している子どもの割合、世帯年収が300~599万円の家庭、保護者が学校外経験があるかどうかの情報です。
「スポーツ活動・定期」は「保護者の体験なしの子ども」33.3%、「保護者の体験ありの子ども」50.0%、その差16.7%です。
「自然体験・単発」は「保護者の体験なしの子ども」14.2%、「保護者の体験ありの子ども」35.1%、その差20.9%です。
この世帯年収に属するご家庭も年収300万円未満と同様、保護者の学校外経験有無によって子どもに大きな差があります。
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は学校外の体験に参加している子どもの割合、世帯年収が600万円以上の家庭、保護者が学校外経験があるかどうかの情報です。
「スポーツ活動・定期」は「保護者の体験なしの子ども」35.2%、「保護者の体験ありの子ども」64.7%、その差29.5%です。
「自然体験・単発」は「保護者の体験なしの子ども」25.3%、「保護者の体験ありの子ども」42.6%、その差17.3%です。
このアンケートの世帯年収区分では最上位に属するご家庭情報ですが、まずはそれ以下の年収に比べ各数値が高く、スポーツ活動や自然活動などの体験が重要視されていると言えます。
その中でも「スポーツ活動・定期」については保護者の体験有無で29.5%と、年収別アンケートの中で最大の差になっている点が特徴的です。
学校外体験がないと学歴や収入が低い可能性がある
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は小学生の頃に学校外体験がない保護者が大卒かどうかの割合です。
小学生の頃に学校外体験がない保護者が「大卒ではない」29.4%、「大卒」16.6%、その差12.8%です。
出典:子どもの「体験格差」実態調査(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)(令和4年度調査)(国立青少年教育振興機構)
上記は、小学生の頃に学校外体験がない保護者の年収割合です。
小学生の頃に学校外体験がない保護者が「300万円未満」30.5%、「300~599万円」22.6%、「600万円以上」16.8%です。
保護者の学校外体験がない保護者の年収は、300万円未満が一番多く、これだけでは因果関係にはなりませんが、経験がない大人は年収が低い可能性があります。
頭だけではなく経験も必要
2024年7月7日、東京の天気は晴れでした。
例年、七夕は梅雨なので星空が見られる可能性は低いですが、この日は雲はあるものの夜空を見られました。
この日の日中の気温は30度台後半で、日中は不要不急の外出を控えましょうとニュースで耳にする高温。
日本の夏らしく蒸し暑さが身体にまとわりつくようで、エアコンの効いた屋内から屋外へ一歩外に出ると、全身を何かに掴まれるようなまるで水中にいるような気候でした。
七夕の日の夜、天気は引き続き晴れており、もしかすると天の川が見られるかもしれない。
そう思い、僕は家の前に出て夜空を見上げてみました。
いま、東京で夜空を見上げても、雲1つない晴天であってもほぼ星は見られません。
基本的には道にはかなりの数の街灯が設置されており、家も立ち並びその家の明かりもある。
駅に近いとマンションなどの高層物が点在し、それが夜空を見上げたとき視界を遮ります。
この環境で育つ子どもは、星空がどんなものか意図的に体験しないと知らないと、当たり前ですがあらためて感じました。
今回見てきたデータでは、自然に触れる体験などをしている子どもが減っていました。
そして高所得層は特に、体験が重要と考える人が多い結果でした。
あくまで僕の身近なお話ですが、たとえば体操クラブで2泊3日の夏休み合宿(キャンプ)の募集があると、一瞬で参加枠が埋まります。
冬のスキー合宿や潮干狩りなどの短日イベントも大人気で、夏休みの人気工場見学予約と同じ状況になります。
2泊3日のイベントに参加するなら、子ども一人で4万円前後の費用がかかりますが、参加される子どもの親にとって金額は重要ではなさそう。
ここには家計に余裕があるかどうか、余力がなければ参加できない差が生まれると想像できます。
東京で星を見たいと考えるのは無理筋で、星空を知らない子どもが増えている。
これを当たり前と育った子どもが、田舎のキャンプ場でキャンプファイヤーなどで楽しんだ後、自分の部屋やテントに戻る帰り道に、ふと上を見上げる。
そこには、無限とも思える小さな光があることを知ります。
当然ですが東京の子どもであっても、星空が何かという知識は持っています。
テレビアニメや教科書、本好きな子どもであれば本で星座があるのは知っているが、それを実体験では知らないだけです。
そんな子どもが、都会から離れて視界いっぱいの数えきれない星の光を見て、これが星空なんだと理解する。
空気の澄んだ場所で無数の星を眺めることに意味があるのかと言われれば、意味はありません。
ただ、このお話は「効率化特化」のお話に近い。
効率化だけを求めても片輪、効率化した先に何をするか、あるいは効率化ではないところにその人の特徴が表れる。
一見無駄と思われても、そこに興味や嗜好があって、時間をかけてその分野の知識と経験を蓄積していく。
やがてそれがその人の専門性になり、人間の厚みに繋がります。
自然体験は、都会慣れした身体には厳しい状況も多いものです。
キャンプすると、トイレや食事は手間がかかるし、寒かったり暑かったり、虫はたくさんいる。
ただこの辺りの自分ではどうしようもないものに触れ、状況を受け入れ、考え工夫をして楽しむのはのちの人生に生きてきます。
思い通りにならない自然との対話は、自分を研ぎ澄ますのにも良い対象です。
さいごに
生存者バイアスとも言えますが、社会で生き残っている人たちは体力と精神力が高い。
例外は存在しますが、あの人凄いなと周囲から評価される人はたいてい鉄人に属しており、体調不良で会社を休むようなことはほとんどありません。
取引先との夜の会食イベントもこなして日中は通常出社しているので、まさに体力お化けです。
体力がないと精神エネルギーも低く、何かにトライできなくなる。
トライできなければ経験値はたまらず、体験を繰り返したくさんの失敗とともに成功体験が積みあがらない。
結果を出して評価されたいかは人それぞれですが、一定以上の体力や健康、たくさんの体験は結果創出に必要条件に近いものです。