この文章のトピックスは以下です。
・温水洗浄便座普及率は2016年まで伸びてその後横ばい
・単純計算だと2025年は1家に1台以上の普及台数
・男女別では男性が、年代別では40台の普及率が高い
・年収別では高年収ほど普及率が高く1200万円以上で94.5%
・住宅ローン有無では有が、持ち家と賃貸では持ち家が普及率が高い
・地域別では大きな差はないが北海道・東北、九州・沖縄は少し低い
全体で8割強の普及率でいまは横ばい
出典:消費動向調査(内閣府)
上記は温水洗浄便座、二人以上の世帯の普及率推移です。
1992年14.2%、2025年82.5%、前後比581.0%と約6倍になっています。
2016年は81.2%で、その後はほぼ横ばいになっており、伸び率に一服感が出ています。
出典:消費動向調査(内閣府)
上記は温水洗浄便座、二人以上の世帯、100世帯当たりの普及(設置)台数推移です。
1992年16台、2025年117.7台、前後比735.6%と7倍強になっています。
2025年の普及台数は100世帯当たり117.7台で、世帯数よりも普及数が高い数値ですが、1家に複数台設置されているところがあります。
持ち家は温水洗浄便座の普及率が高い
出典:消費動向調査(内閣府)
上記は温水洗浄便座、2025年の二人以上の世帯、世帯主の属性別普及率です。
世帯主が男性は83.8%、女性は75.0%と男性世帯主の方が8.8%設置率が高い。
世帯主年代別では1位「40~49歳」85.5%、2位「60~69歳」84.0%、最下位は「29歳以下」74.3%です。
出典:消費動向調査(内閣府)
上記は温水洗浄便座、2025年の二人以上の世帯、世帯主の年収別普及率です。
グラフを見てすぐにわかる通り、年収が高いほど温水洗浄便座普及率は高い。
世帯主年収の温水洗浄便座普及率は「300万円未満」70.9%に対し、「1200万円以上」94.7%と23.8%の差があります。
出典:消費動向調査(内閣府)
上記は温水洗浄便座、2025年の二人以上の世帯、住宅の所有関係別普及率です。
住宅ローン有無では「有り」92.1%、「無し」78.8%と、「有り」が13.3%上回っています。
住宅ローンがあるということは2000年以降に家を購入したと考えられ、その時一緒に設置した。
住宅ローンなしの家は古い家で、昔からのシンプル便器を設置しているシナリオは思い描けます。
持ち家か賃貸かでみると、持ち家が圧倒的に普及率が高い。
賃貸でわざわざ自分で設置する手間を考えると、普及率が低いのもうなずけます。
地域別や都市規模別では大差ない
出典:消費動向調査(内閣府)
上記は温水洗浄便座、2025年の二人以上の世帯、地域ブロック別普及率です。
1位「関東」85.9%で以下、本州の地域ブロックが並んでいきます。
最下位は「北海道・東北」77.4%で、後ろから2位は「九州・沖縄」78.1%と日本の南北は普及率が低い。
出典:消費動向調査(内閣府)
上記は温水洗浄便座、2025年の二人以上の世帯、都市規模階級別普及率です。
1位「県庁所在地市」86.1%、最下位「市」78.2%。
都市規模階級別でも地域ブロック同様、1位と最下位に10%の差はありません。
最新機能との向き合う姿勢
上記データでは、2025年時点で温水洗浄便座普及率は8割を超えています。
僕がいま住んでいる家は温水洗浄便座を設置しており、僕の実家の古い家は設置されていません。
実家の古い家は建築時に温水洗浄便座が存在しておらず、シンプルな洋式便器でその後も取り換えはしていません。
これは日本全国で見られる光景だと思っています。
数十年前、外国の有名人が日本に訪れた時、トイレのふたが自動で開け閉めされる光景に衝撃を受け、自国の自宅に日本の温水洗浄便座を付けた話題がありました。
そんな温水洗浄便座ですが、さらにいまは進化しています。
単語としてはいまは「スマートトイレ」と呼ばれている。
・IoT連携
インターネット接続により、使用履歴や健康データをクラウドに保存。
・健康モニタリングとAI分析
排泄物の成分を分析し、糖尿病や腎臓疾患などの兆候を検知。
取得したデータをAIで分析する。
・体重・体温測定
座るだけで自動測定し、健康状態を記録。
・高齢者・介護向け機能
音声操作やリモコンの簡素化。
転倒検知や緊急通報機能。
新たな技術が出てくると、素直に受け入れられるものと社会に浸透するのに時間がかかるものがあります。
一例として、インターネットがあり、その登場はARPANETの1960~70年代として、一般普及まで20~30年かかっています。
2000年以前のインターネットは、技術者や学者など一部の人のみが使っていました。
今回見ている温水洗浄便座も登場は1980年ですが、発売当初は高価でぜいたく品と見なされたていて普及まで10~20年かかりました。
発売当時はバブル崩壊前なので、金額的には無茶とは思えず、お金ではなく気持ち的なハードルと言えそうです。
気持ち的な要素として、上記のスマートトイレの特徴の1つ、自分の排泄物分析など抵抗感がある人はいると予想できます。
近い話題として、リアル世界で僕の知人の話を思い出します。
その知人は自分の排泄物を、看護師の奥様が健康管理目的で目で確認する。
「もう慣れたから平気だけど、最初はちょっと抵抗感があった」とその知人は言っていました。
僕はスマートトイレは社会浸透すると予想しています。
健康管理思想は一般的になっており、この先もそれがゆるやかに上がっていく。
是非はともかく健康体が標準のような思想がより強まり、それを支えるものとしてスマートトイレや他の機器が管理する。
あまり必要と思っていなくても、みんながやるようになり自分も受け入れる。
スマートトイレといっても外見上はただのトイレなので、慣れてしまえば空気のような存在です。
そのスマートトイレが自分の身体異常を発見、重い病気の早期発見となったなら、生涯感謝するようなシナリオもあり得ます。
排泄という人間の根源的行為にそこまでやる必要があるのかという考えも同感できますが、社会の流れがそちらに傾いたら逆らえない。
そして新しい技術は、若い人から使われていきます。
いまの子どもたちがスマートトイレで健康管理を当たり前と考え、自宅を建てる時、設置する。
20年~30年後にはそれが大半になっており、上記データにあった普及率の通り、昔ながらの便座が温水洗浄便座に取り替わったのと同じ動きが想像できます。
さいごに
上記のスマートトイレの特徴1つ、時代にマッチしているものとして「使用履歴のクラウド保存」があります。
日本は高齢化社会で、この先も単身高齢者が増え続けていきます。
単身高齢者が自宅で死亡したのに気づけないのを避けるため、おじいちゃん・おばあちゃんのトイレ使用有無がネット確認できる。
これであれば、遠方に住んでいる子どもたちは随分気が楽になります。