この文章のトピックスは以下です。
・学校外の教育資金はここ9年で171.8%に増加
・学齢別一番金額が高いのは中学生、2位は小学生
・子ども一人あたりの進学費用のための備えは9年で139.2%に増加
・子どもの教育費の負担を重いと感じる親の割合は0年で-4.0%と減少
・子どもの教育資金に不安を感じる理由の1位は物価の上昇で55.7%
・日本の教育機関への支出、対GPD比は世界比較で見ると最下位集団
学校外の教育資金はここ9年で171.8%に増加
出典:子どもの教育資金に関する調査 2024(ソニー生命)
上記は子ども一人あたりの学校以外での教育費の月額・平均支出金額です。
全体推移で増加しています。
2016年と2024年を比較すると、7,353円増加しており前後比171.8%です。
出典:子どもの教育資金に関する調査 2024(ソニー生命)
上記は学齢別で学校以外での教育費の月額・平均支出額です。
一番金額が高いのは一貫して中学生、一番低いのは未就学児です。
2位は小学生、3位は大学生で大学でも教育費がいる状況にある子どもがいます。
子どもの教育資金は増加だが負担と感じる親は減っている
出典:子どもの教育資金に関する調査 2024(ソニー生命)
上記は子ども一人あたりの進学費用のための備え金額推移です。
こちらもこの文章の1つ上のブロック、平均支出額の推移と同じく基本的には増加傾向。
2016年と2024年を比較すると、4,775円増加しており前後比139.2%です。
出典:子どもの教育資金に関する調査 2024(ソニー生命)
上記は子どもが小学生から社会人になるまでに必要だと思う教育資金の推移です。
これまでのデータと同じく、増加しています。
2016年と2024年を比較すると、210万円増加しており前後比117.1%です。
出典:子どもの教育資金に関する調査 2024(ソニー生命)
上記は子どもの教育費の負担を重いと感じる親の割合推移です。
この情報はこれまでの右肩上がりの情報と違い、横ばいから微減です。
2018年は71.4%、2024年は67.4%、前後比-4.0%で子どもの教育費を負担と感じる親は減っています。
1つ上のグラフで教育費が増えると考えているが、負担と思わない。
子どもの教育を大事(そこにお金を投下)と考える人が増えています。
出典:子どもの教育資金に関する調査 2024(ソニー生命)
上記は子どもの教育資金に不安を感じる理由、複数回答の結果です。
1位は物価の上昇55.7%、2位は必要教育資金の目安が不明35.2%、3位は収入の維持や増加に自信がない33.5%。
1位から3位を眺めると「子どもの教育資金に不安」でなく一般論としても、似た結果になるであろうと思われる結果です。
現実は物価上昇が続いており、収入が追いついていなければ不安は増します。
日本の教育機関への支出、対GPD比は下位
出典:Education at a Glance 2024(OECD)
上記は2021年、教育機関への支出、対GDP比です。
1位ノルウェー6.5%、2位英国6.2%、3位アイスランド6.1%、4位イスラエル6.1%。
上記4か国が6%超えの国々です。
真ん中から少し下にOECD平均4.9%があります。
その位置取りから考えると、OECDは教育機関への支出対GDP比は、それ以外の国を比較すると低い。
日本はこのグラフの中では下から3番目の4.0%。
日本の1つ下に、一人当たりGDPが1位常連のルクセンブルクがいますが、これは何らかの理由がありそう。
上記はあくまでGDP比で、どの教育機関へ支出したのかも全体でザックリの結果です。
因果関係があると言えるか不明ですが、以下論文数など基礎となる部分が衰退傾向にあるお話は近年よく聞きます。
日本の論文数は横ばいであり、他国・地域の増加により順位を下げている。Top10%補正論文数で日本の順位低下が顕著である。中国はTop1%補正論文数でも、世界第1位となった。
出典:科学技術指標2022(文部科学省 科学技術・学術政策研究所)
大学のへの交付金は税金投入の1つで、基礎研究費を削った先に国は衰退しないか。
財政状況が厳しい日本、どこにお金をかけていくのか気になります。
教育費補助制度は増えている
2024年時点での教育費補助制度はたくさんありますが、以下その一例です。
【幼児】幼児教育・保育の無償化
幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳までの全てのこどもたちの利用料が無償化されます。
幼稚園については、月額上限2.57万円です。出典:幼児教育・保育の無償化概要(こども家庭庁)
高校生の学びを支えます。
私立高校(全日制)の場合 39万6,000円 世帯年収590万円以下
高等学校、特別支援学校(高等部)、高等専門学校(1~3年生)、専修学校(高等課程) 11万8,800円 世帯年収910万円以下出典:高等学校等就学支援金制度(文部科学省)
授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)
給付型奨学金の支給
の2つの支援により、大学や専門学校などで安心して学んでいただくものです。私立大学に自宅以外から通う場合
給付型奨学金:約91万円/年
授業料:約70万円/年
入学金:約26万円私立専門学校に自宅から通う場合
給付型奨学金:約46万円/年
授業料:約59万円/年
入学金:約16万円/年出典:高等教育の修学支援新制度(文部科学省)
他にも地域によってですが、給食費が無料になるなど、少子化対策としての意味が強いですが近年になるほどサポートが厚くなっています。
以下、2024年度から始まる直近のサポート内容です。
▼私立中学について
【これまで】
910万円未満の世帯年収が目安に、授業料について、都が年間10万円を上限に補助していました。
【今回の制度】
910万円未満の世帯年収の目安を撤廃します。
条件は、保護者が都内に住んでいることで、都外の私立中学に通っても対象となります。▼高校について
【これまで】
910万円未満の世帯年収を目安に支援がありました。
都立では、国の支援で無償化されていました。
私立については、都が、国の支援に上乗せして都内にある高校の授業料の平均にあたる47万円余りを上限に助成するなどしていました。【今回の制度】
910万円未満の世帯年収の目安を撤廃します。
条件は、保護者が都内に住んでいることで、都外の私立高校に通っても対象となります。▼都立大学 都立産業技術大学院大学 都立産業技術高等専門学校について
【これまで】
478万円未満の世帯年収を目安に無償化されていました。【今回の制度】
条件を満たす、すべての人が対象となります。
条件は、生活費を負担する親や親族などが都内に住んでいることです。ただ、世帯年収が478万円未満の世帯は、親などが都外に住んでいても引き続き対象です。出典:東京都 2024年度から「授業料無償化」どんな制度?対象は?(NHK)
上記は年収上限撤廃の内容が多く、高所得者にメリットと捉えられます。
ただ、東京で世帯年収910万円の子育て家庭であれば、生活全般で余裕があるとは言えないと、東京在住者として僕は体感しています。
国レベルでも家庭レベルでも予算の余裕がないなか、子どもの教育と向き合っていく。
悩ましいのは、教育がすぐ現実的な果実、主に金銭的収入になるかといえばそういうものは少ない。
例えば、義務教育レベルは土台を作っているので、どこにつながるか分かりません。
この段階は、まだ何かを期待するのではなく、広く浅くが一般的になって良い。
そして、親が「これは意味がありそう」と塾や体操などを選択した場合、それが子どもの幸せにつながるか未知です。
塾通いは未来の(主に親の)安心を買うもので、人生のつまずきを減らす可能性は高いですがそれでも万能ではありません。
ほかに、教育費と関連していまよく語られるワード「格差」があります。
高所得家庭の子どもは、学校外活動費が高く学力が高い。
お金で塾や実体験を子どもにさせ、それが現実的に学力格差になっている。
その格差をなくすために低所得家庭の子どもにも、広く学びのチャンスがある教育費がかからない社会にする。
子どもを持つ親として、上記は正論で賛成です。
付け加えるなら、全員が大学を出るようなシステムなら僕は違うと考えます。
人には向き不向きがあり、一定の責任のもと何を選ぶか自由。
その選択肢が狭まらないように、教育費にお金をかける親が現代では増えています。
さいごに
競争的環境では相対的な優劣を競います。自分が優れているということと、他者が劣っていることは、結果的には同じ意味になります。であれば自分以外の人間ができるだけ無能で愚鈍であることを願うことは避けがたい。
「意地悪」化する日本
内田 樹 (著), 福島 みずほ (著)
子ども達みんなが笑って過ごせる環境を社会全体で目指す。
子どもができて親になると、大小ありそうですが上記のような子ども達全員が良い環境になって欲しい思考が強まります。
その上で、現実的には自分の子どもが少しでも他者より位置が高くあってほしいとも思う。
そして、わが子の教育にお金をかける。
中長期戦略を立てるのが普通になった現代の子育て中の親は、考えることがたくさんあります。