2024年牛乳生産量はピーク比-15%、飼養状況は大きく変化している

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この文章のトピックスは以下です。
・2024年生乳生産量はピークの1996年比で15%減少
・生乳は半数が約飲用、約半数が加工品になっている
・乳用牛飼養戸数は65年間で-97.1%
・飼養頭数は65年間で約1.5倍
・1戸当たりの飼養頭数65年間で約55倍
・国内の生乳生産量は北海道が57.5%

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2024年の生乳生産量はピーク比で15%減少

生乳生産量
出典:牛乳乳製品統計調査(農林水産省)

上記は生乳生産量推移です。
1985年7,380,369トン、2024年7,357,451トン、ピークは1996年8,656,929トンです。
ピークの1996年と2024年を比べると-1,299,478トンで、85.0%と15%減少しています。
これが牛乳消費が減っていると言われる数字です。

生乳 用途別処理量 2024年
出典:牛乳乳製品統計調査(農林水産省)

上記は2024年の生乳・用途別処理量です。
牛乳等向けが3,823,034トン(52.0%)、乳製品向けが3,487,162トンで(47.4%)。
約半数が牛乳として飲まれ、残り半数が加工されています。

65年間で乳用牛の飼養戸数は97.1%減

乳用牛飼養戸数
出典:畜産統計調査(農林水産省)

上記は乳用牛飼養、戸数です。
乳用牛の飼養戸数は1960年410,400戸、2024年11,900戸、前後比-398,500戸(2.9%)です。
今回見たデータで一番インパクトがある数字で、65年間で乳用牛の飼養戸数97.1%減っています。
これだけ減っても生乳供給量は15%減少なので、小規模農家は激減したと想像できます。

乳用牛飼養・頭数
出典:畜産統計調査(農林水産省)

上記は乳用牛飼養、頭数です。
乳用牛飼養頭数は1960年823,500頭、2024年1,313,000頭、前後比+489,500頭(159.4%)です。
1つ上のグラフでは乳用牛飼養戸数が9割以上減少していましたが、飼養頭数は約1.5倍になっています。
小規模農家が減って、残っている乳用牛飼養農家の飼育頭数が増えている。

乳用牛飼養戸数・頭数
出典:畜産統計調査(農林水産省)

上記は1戸当たりの飼養頭数です。
1戸当たりの飼養頭数は1960年2.0頭、2024年110.3頭、前後比+108頭(5498.7%)です。
残っている飼養農家は大型化しています。

国内の生乳生産量は北海道が半数強

生乳生産量 地域ブロック別 2024年
出典:牛乳乳製品統計調査(農林水産省)

上記は2024年、日本の地域ブロック別の生乳生産量です。
圧倒的1位は北海道で、57.5%の生乳を生産しています。
2位は関東の14.8%で、これ以降は10%以下です。
それでも地域別に有名な牛乳はあり、総じてそうした牛乳は味が濃くおいしい。

現実的に変化していく

今回見てきたデータの中で、2つトピックスがありました。
1つ目は乳用牛・飼養戸数が65年間で97.1%減っている点。
2つ目は乳用牛・飼養頭数が減っているにもかかわらず、生乳生産量はそれほど落ちていない点です。
ここには技術革新が大きく影響しており、以下その一部です。

1955年 ・ミルカーの利用開始
1965年 ・凍結精液の普及
・後代検定、牛群検定の開始
1970年 ・パイプラインミルカー及びバルククーラーの導入
1975年 ・受精卵移植産子の誕生
・TMR(完全混合飼料)の導入
1985年 ・ミルキングパーラーの導入
1989年 ・全国統一の種雄牛評価開始
1993年 ・ほ乳ロボット、搾乳ロボット導入
2003年 ・インターブル参加 ・牛トレサ法制定
・搾乳ユニット自動搬送装置販売
2008年 ・乳用牛群検定全国協議会設立
・性判別精液の商業利用開始
・発情発見装置販売
・分娩監視装置販売
2013年 ・ゲノム評価の開始
・搾乳ロボット導入が本格化
2017年 ・ロータリー型ロボットの導入

出典:乳用牛の改良増殖をめぐる情勢(農林水産省)

農業の機械化、AI導入は続いているのはニュース等で認識していましたが、その一例が乳牛飼養関連です。
牛乳を人間が絞る姿は、観光客向けには残っていても、本業としている農家の方は少ない。
効率化の概念はすべての産業に強制的に適用される時代です。
こうした、現実の農家の話としてわが家の家族全員で楽しんで読んだ本が荒川弘さんの漫画「百姓貴族」です。

「百姓貴族」は著者の荒川さんご実家の実体験漫画です。
フレンドリーというか楽しい雰囲気で描かれていますが、生々しい話題が盛りだくさん。
荒川弘さんの別の漫画「銀の匙 Silver Spoon」にもそうした場面があり、小規模農家が離農する話であったり、大規模農業で生計を安定させるなどがあります。

「百姓貴族」の中で、牛や豚を指して「経済動物」と表現されています。
乳牛のうち牛乳が出ているのであれば生かされるが、そうではなくなったとき処分される。
「命を奪う」厳しさが描かれており、表面を取り繕っていない点が良い。
わが家の子どもは東京生まれの東京育ちで、こういう世界があると親のエゴを持ちつつこの漫画を子どもにも読ませました。
幸い、わが家の子どもは「百姓貴族」が気に入ったらしく、何度も読み返していました。
たぶん、僕が思う命のやりとりような点には思い至っていないとは想像していますが、それはそれ。
牛乳が大好きな子どもなので、その牛乳がどんな環境や状況で自分の口に入るのか一部でも理解してくれたら良い。
きれいごとではすまない現実があり、人間は他者の命をいただいて生きています。

さいごに

最近、ヒグマが人を襲って殺処分すると、どこからかクレームが入るニュースをよく耳にします。
どう思うかについては個人の自由なので、いろいろな考え方の人がいるのは良い。
ただ、当事者ではない人が安全な場所からクレームを上げている面はいかがなものか。
現実を見ない、幼稚な人がいるのだと見ています。