この文章のトピックスは以下です。
・ここ18年で心の豊かさを実感している人は-7.0%、実感していない人は+9.6%
・心の豊かさを実感する条件として21年で「時間的な余裕」が最も伸びている
・この18年で経済的な豊かさを実感している人は-1.2%、実感していない人は+3.5%
・心の豊かさを実感する条件として「ある程度の額の金融資産の保有」が一番増加している
・世界幸福度ランキング2026年情報では日本は61位
心の豊かさの実感は減っている

出典:家計の金融行動に関する世論調査(金融経済教育推進機構)
上記は「心の豊かさの実感」の推移です。
「実感している」2007年12.0%、2024年7.6%、前後比-4.4%。
「ある程度実感している」2007年50.0%、2024年47.4%、前後比-2.6%。
「あまり実感していない」2007年28.2%、2024年34.6%、前後比+6.4%。
「全く実感していない」2007年7.2%、2024年10.4%、前後比+3.2%。
単純計算ですが、ポジティブ回答の減少割合と、ネガティブ回答の増加割合を足すと16.6%。
ここ18年で16.6%の人が、心の豊かさの実感をなくしています。

出典:家計の金融行動に関する世論調査(金融経済教育推進機構)
上記は「心の豊かさを実感する条件」です。
以下の3つがここ21年で増加しています。
「経済的な豊かさ」1998年49.2%、2024年52.0%、前後比+2.8%。
「趣味の充実」1998年20.0%、2024年30.6%、前後比+10.6%。
「時間的な余裕」1998年21.9%、2024年33.6%、前後比11.7%。
以下3つは21年で10%以上低下しています。
「健康」1998年72.6%、2024年57.9%、前後比-14.7%。
「将来の生活への安心感」1998年37.4%、2024年24.2%、前後比-13.2%。
「家族とのきずな」1998年46.9%、2024年28.1%、前後比-18.8%。
またグラフを見ると、2021年のところで大きく上下しています。
コロナウイルス渦で人々の考え方が変わったと読み取れます。
経済的な豊かさ実感は下がっている

出典:家計の金融行動に関する世論調査(金融経済教育推進機構)
上記は1つ上のグラフにある「経済的な豊かさ」について、細分化した「経済的な豊かさの実感」情報です。
「実感している」2007年3.7%、2024年3.5%、前後比-0.2%。
「ある程度実感している」2007年33.4%、2024年32.4%、前後比-1.0%。
「あまり実感していない」2007年41.6%、2024年43.5%、前後比+1.9%。
「全く実感していない」2007年19.0%、2024年20.6%、前後比+1.6%。
心の豊かさの実感同様、ポジティブ回答が減ってネガティブ回答が増えています。

出典:家計の金融行動に関する世論調査(金融経済教育推進機構)
上記は「経済的な豊かさを実感する条件」です。
「マイホームなどの実物資産の取得」1996年29.4%、2024年30.9%、前後比-1.0%。
「ある程度の額の金融資産の保有」1996年48.1%、2024年61.2%、前後比+11.6%。
「ある程度の額の年収の実現」1996年49.3%、2024年41.0%、前後比-14.2%。
「消費財購入やレジャー関連消費の充実」1996年23.6%、2024年17.9%、前後比-3.0%。
23年で伸びているのは1つだけで「ある程度の額の金融資産の保有」。
興味深いのは「ある程度の額の年収の実現」は-14.2%と下がっており、お金は欲しいが年収増加は見込んでいない、見込めていない、あるいは望んでいないのか。
2026年世界幸福度ランキングでは日本は61位

出典:world happiness report 2026(Wellbeing Research Centre)
心の豊かさと幸福度は同じではありませんが、近いものとしてメジャーな世界比較情報である世界幸福度ランキング、2026年情報が上記です。
10点満点評価で、上位1〜5位は北欧を中心とした欧州諸国・ラテンアメリカが占めています。
4位のコスタリカは中南米にあって幸福度が高い地域の中でも特殊な国で、ほかは一般認識通り北欧が強い。
G7トップはドイツの17位。
アメリカはドイツの少し下の23位ですが、30歳未満の生活満足度が急低下し近年順位が下落傾向。
日本は61位と全世界の中でいつも通りの中位です。
心の豊かさを感じるために
「定年したら、何をして過ごそう?」
一定以上の年齢になると、こんなことを考える機会が増えてくる。
仕事をしている間は、毎日やることがある。
朝起きて、会社へ行く。
仕事をして、帰宅する。
休日になれば、買い物や家事をする。
そんな生活を何十年も続けてきた。
ところが、定年を迎えればその「毎日やること」が突然なくなる。
そこで初めて「自分は、仕事以外に何を楽しめるんだろう?」と気づくのであれば、準備不足感は否めない。
高齢化社会らしく「老後の趣味を見つける」とか「老後の仲間をつくった方が良い」と、そんな読み物が目に付く。
これについて、僕は少し違う考え方を持っている。
「老後に楽しめるものを探す」のではなく「老後に楽しめる状況を、中年期から探しておく」。
そのほうが、ずっと現実的ではないか。
上記のグラフの通り、1998年と2024年を比較すると、日本人が「心の豊かさ」に求めるものが変化していた。
横道にそれるが、グラフではコロナ渦を境に人々が大切にしていることが変化しているのは興味深いデータだった。
あるいは「趣味の充実」増加と「家族とのきずな」低下からは、文化度成熟に伴う個人主義の進行と取れる。
もちろん、これだけで「日本人が家族を大切にしなくなった」と結論づけられない。
少子化進行もその一例だが家族構成そのものが変わっているし、何より価値観も多様化している。
ただ1つの傾向として「家族や社会の中で与えられる幸せ」から、「自分自身で選ぶ幸せ」へ意識が移ってきているようには見える。
特に注目なのが、「時間的な余裕」と「趣味の充実」の増加。
これは中年期以降の人生を考えるうえで、とても重要なポイントとなる。
現役時代は、どうしても仕事や子どもがいるなら子どもが生活の中心になる。
「自分が何をしたいか」より、「今日は何をしなければならないか」で一日が決まる。
これが、仕事を辞めると逆になる。
「何をしなければならないか」が減り、「何をしたいか」が問われるようになる。
自由時間が増加するのだが、「自由な時間」は、必ずしも「楽しい時間」ではない
老後は時間がたくさんあり、これは間違いなく大きなメリットと言える。
しかし、時間があるだけでは人生は充実しない。
むしろ、「時間はある、でもやることがない」状態になる可能性もある。
こんな状態になったとして、ありがちな現実を想像するなら。
ネットを見る。
スマホを見る。
昼寝する。
テレビを見る。
そして一日が終わる。
最初のうちはそれも楽しいと感じられるかもしれないが、それが続くとこれで良いのかと考えそうである。
よく「老後のために趣味を持とう」と言われているが、これは間違っていない。
でも「何か趣味を見つけなければ」と脅迫・強制のものと考えるほどのものではない。
そもそも、だれもが「これが生きがいです」と言えるような趣味を持っているわけではない。
趣味がなくても、毎日のちょっとした楽しみを感じられる方が現実的ではある。
朝、コーヒーを飲む。
散歩する。
気になっていた店に行く。
本を読む。
料理する。
写真を撮る。
庭いじりをする。
昔好きだった音楽を聴く。
平日の空いている時間に映画を見る。
こうした小さな楽しみでも、積み重なれば心豊かな人生と言える。
がむしゃらに「趣味を見つけなければ」と考える必要はない。
むしろ「自分が自然に楽しめる時間を増やす」くらいでいい。
老後は仲間が支えてくれる文章もよく見かける。
・定年後は人とのつながりが大切だ
・友達をつくっておいたほうがいい
・老後は仲間がいないと寂しい
確かにこれも一理ある。
仕事を辞めると、会社での人間関係がなくなる。
毎日顔を合わせていた人と、会わなくなる。
結果、友人や趣味の仲間が人生の支えになる人はいるだろう。
ただ、ここでも「人による」と考えたほうがいい。
一人で過ごすのが好きな人もいる。
一人で旅行できる人。
一人で食事を楽しめる人。
一人で映画を観られる人。
一人で読書を楽しめる人。
一人で何時間でも好きなことをしていられる人。
こういう人にとっては、「たくさんの仲間をつくらなければ」ということ自体がストレスになる。
大切なのは「老後はこうあるべき」ではなく、「自分はどういう時間なら心地よいのか」を知っておく。
ここまで「時間」「趣味」「人とのつながり」に関する内容だ。
では「健康」や「お金」はどうなのか。
僕は、この2つは別格と置いている。
幸福の条件というより、幸福を楽しむための前提という位置づけだ。
たとえば、どれだけお金があっても、身体が思うように動かなければ旅行には行きにくい。
美味しいものを食べることも難しくなる。
趣味を楽しむのも難しくなる。
だれかに会いに行くのさえ、負担になるかもしれない。
また健康であっても、生活を維持するだけのお金しかなければやはり選択肢は狭くなる。
旅行に行けない。
趣味にお金を使えない。
やってみたいと思ったことに躊躇してしまう。
だから、老後を考えるなら、健康とお金はまず土台として考えておく。
これはかなり大切だと思う。
一方で、「お金があれば幸せ」という単純な話でもない。
生活に必要なお金がある。
多少の余裕がある。
突然の出費にも対応できる。
老後について最低限の安心がある。
ここまでくると、その先のお金がそのまま幸福につながらなくなってくる。
1000万円多く持っているより、そのお金を使って旅行に行ける。
好きなものを買える。
仕事を減らせる、しないで済む。
自由な時間を増やせる。
家族を助けられる。
あるいは、「何かあっても大丈夫」と思える安心感。
そうしたもののほうが、人生の幸福実感としては大きいかもしれない。
つまり、お金は「幸せそのもの」というより、「幸せになれる選択肢を増やすもの」と言える。
ここまで考えると、老後のために準備するものが少し違って見えてくる。
「老後の趣味を探そう」ではなく、「自分は何をしているときに心地よいのか」を知っておく。
「老後の仲間をつくろう」ではなく、「自分は人といる時間が好きなのか、一人の時間が好きなのか」を知っておく。
「老後資金をできるだけ増やそう」だけではなく、「どのくらいのお金があれば、自分は安心して生活できるのか」を考えておく。
繰り返すが土台となる「健康のために何をするか」を現役時代から考えておく。
そうすると、老後の準備は単なる「お金の問題」ではなくなる。
結局、中年期から考えておきたいのは、「老後に何をして楽しむか」ではない。
「老後に、自分が楽しめる状況をどうつくるか」なのだ。
一定の年齢を超えると、残った時間を意識するようになる。
これは漫然とした判断ではなく、積極的な意思表示をうながす要素にもなる。
極端な例なら、今日何を食べるのかもその1つと言える。
これまでの人生以上に「自分にとって何が心地いいのか」が大切になってくる。
だからと言って「自分が楽しめるものを見つけなければ」と焦る必要もない。
探すとするなら、趣味そのものではなく自分が楽しめる状況だ。
そして、その状況はある程度自分で作ることができるし、究極は思い込んでしまう手段もある。
もしかすると、これこそが「心の豊かさ」を考えるときに、一番大切なのかもしれない。
さいごに
活字離れのワードはよく見かけますが、実際には悩ましい状況です。
・「紙の本離れ」はかなり明確にそのデータがある
・「本離れ」についてもかなり明確に裏付けられている
・「文字情報離れ」は難しくネットでSNS含む文字情報閲覧は増加している
直近話題となった「PISA 2025」の結果で、読解力や数学的リテラシーは高かったが、「読みの流ちょう性」の衰退と「急ぎ読み」の弊害がニュース等で取り上げられていました。
ネット社会の進展で、文章全体を深く理解する前に、キーワードだけを拾い読みして解答しようとする「急ぎ読み」の傾向が15歳の間で強まっていると分析されている。
本とじっくり向き合うのは、楽しい時間の使い方で、心豊かになる時間だと僕は考えています。
ただ現代の若者は、ここに楽しみを見出す人は減少していくのだろうとも予想しています。
