全国書店ネットワークが2006年より発行している『ミリオンぶっく』というものがあります。
ここには0歳~5歳までのベストセラー(100万冊以上)売れた本が記載されています。
2017年版『ミリオンぶっく』でベストセラーになっているのは112冊。
その中でも【3歳】に絞ったTop10を並べました。
絵本ベストセラーTop10【3歳編】
【3歳編】で100万部を超えている数は、30冊。
冊数だけでいうなら【4歳編】の次の2番目の順位です。
1位の『ぐりとぐら』は全ベストセラー中、おしくも2位。
【3歳編】は『ノンタンシリーズ』が5冊を占めます。
書籍名 | 著者 | 発行部数 | 補足 | |
1位 | ぐりとぐら | 中川李枝子/さく 大村百合子/え | 495万部 | 子どもの食事 お友だち お出かけ |
2位 | てぶくろ | エウゲーニー・M・ラチョフ/え うちだりさこ/やく | 309万部 | やさしい気持ち お友だち |
3位 | おおきなかぶ | A.トルストイ/再話 内田莉莎子/訳 佐藤忠良/画 | 288万部 | スキンシップ やりとり遊び |
4位 | ぐりとぐらのおきゃくさま | 中川李枝子/さく 山脇百合子/え | 277万部 | クリスマス |
5位 | ノンタンぶらんこのせて | キヨノサチコ/作絵 | 251万部 | お友だち イヤイヤ期 入園 |
6位 | ノンタンおやすみなさい | キヨノサチコ/作絵 | 235万部 | お友だち 寝かしつけ |
7位 | ノンタン!サンタクロースだよ | キヨノサチコ/作絵 | 234万部 | クリスマス お友だち |
8位 | はじめてのおつかい | 筒井頼子/さく 林明子/え | 224万部 | お手伝い |
9位 | ノンタンおよぐのだいすき | キヨノサチコ/作絵 | 196万部 | お友だち 夏休み 水あそび |
10位 | ノンタンおねしょでしょん | キヨノサチコ/作絵 | 189万部 | お友だち トイレトレーニング |
出典:ミリオンぶっく 2017(全国書店ネットワーク)
全年齢を通してのTop10は以下です。
あらすじと感想
ぐりとぐら
▼あらすじ
ふたごの野ねずみ、青と赤のとんがり帽子をかぶった「ぐり」と「ぐら」。
仲良しのふたりが歌を歌いながら、今日も大きなかごを持って森へでかけます。
大きなたまごを発見し「おおきいかすてら」を外で焼くことにしました。
するとおいしそうなにおいにつられて、森じゅうの動物たちが集まってきました。
焼っけたっかな?
▼感想
著者は「子どもたちにおいしいおやつを」という想いから描かれた作品
焼きあがったかすてらの、美味しそうなこと。
言葉リズムもすばらしい。
背景は白が基調、そこに鮮やかな色彩の動物たち。
動物たちとの共生、最後の展開、安定の1冊です。
てぶくろ
▼あらすじ
ウクライナ民話の手袋のお話。
雪の降る森で、おじいさんがてぶくろを片方落としたました。
ねずみがてぶくろのところに来て「ここでくらすことにするわ」と手袋の中に入ります。
次にやって来たかえるが「わたしも入れて」と言うと「どうぞ」と入れてくれました。
うさぎ、きつね、おおかみ、いのししがやって来て中に入ります。
最後はくま。
満員ですがなんとかくまも入りました。
手袋が片方ないのに気付いたおじいさんが犬とともに戻ってきました。
もぞもぞ動く手袋に犬が「わん、わん、わん」。
動物たちは・・・。
▼感想
写実的にちかい絵がとても美しい。
全編に雪が待っていて、冬の寒さが伝わってきそう。
そんな中で1つの手袋のなかにたくさんの動物達が仲良く入る。
絵本らしい暖かい設定。
最後のページの「深さ」も印象的。
おおきなかぶ
▼あらすじ
おじいさんがかぶを植えました。
やがて大きなかぶができました。
おじいさんは「うんとこしょ どっこいしょ」と抜こうとしますが抜けません。
おばあさんと「うんとこしょ どっこいしょ」引っ張りますが、かぶは抜けません。
まご娘、いぬ、ねこも一緒に「うんとこしょ どっこいしょ」引っ張りますが、まだかぶは抜けません。
最後にみんなで「うんとこしょ どっこいしょ」・・・。
ロシア民話のおはなし。
▼感想
登場人物の頭が小さい写実に近いの絵柄。
幼稚園などでの発表会の題材になることもある絵本。
確かに子ども達が演じる、そしてそれぞれの役割を考えると納得。
言葉の「うんとこしょ どっこいしょ」の響きが印象的。
この翻訳が秀逸。
くりかえしの安定安心。
ぐりとぐらのおきゃくさま
▼あらすじ
森で雪合戦をしていたぐりとぐら、雪の上に大きな足あとを見つけました。
その足あとを追っていくと、自分たちの家までつづいていました。
家の中には大きな長靴、コート、帽子、手袋、靴下、そして大きな袋。
ベットルームやお風呂場を探しましたが誰もいない。
やがておいしそうなニオイが。
ドキドキしながら楽しめるサンタクロースの絵本。
▼感想
まだ子どもはサンタクロースが分からない年齢かもしれません。
それでもこどもと一緒に「誰がいるのかな?」と探偵気分。
著者自身、保母時代の経験で「子どもたちを喜ばせたい」と考えてつくられたお話。
やがて現れるおいしそうなケーキ。
人気のぐりぐらシリーズの1冊。
ノンタンぶらんこのせて
▼あらすじ
「ノンタン ノンタン、ぶらんこのせて。」
つぎつぎやってくる動物達。
ウサギ、クマ、タヌキ、ブタ、が乗らせてといいます。
にノンタンは「ダメダメ」と取り合わない。
10数えたら交代ね。
ノンタンと動物達は・・・。
▼感想
ことばのリズム感がすばらしい「ノンタンあそぼうよ」シリーズの第1弾。
交代で遊ぶ、という社会性についての絵本。
小さな子どもたちにとって順番という考えはまだまだこれから。
それでも最後にノンタンは動物にぶらんこをゆずります。
みんなで遊ぶ、という思いがつまった1冊。
ノンタンおやすみなさい
▼あらすじ
夜なのに眠くないノンタンは友だちをさそいにでかけます。
うさぎくん、ふくろうさん、くまさん。
起きていたのはふくろうくんだけ。
ふくろうくんとじゃんけんやおにごっこをしたら・・・。
▼感想
時間帯としては「夜」のお話。
だからと言って怖いお話ではありません。
寝付けない夜に遊ぶと・・・というストーリー。
決まった位置から文字がはじまるのではなく、字下げなど文字表現も特徴のある1冊。
睡眠儀式(この本を読んだらねようねぇ)にもよく候補に挙がる1冊です。
ノンタン!サンタクロースだよ
▼あらすじ
今回の物語はノンタンがサンタクロースを探しに行きます。
空いっぱいに飛びかういろんなサンタクロースたち。
サンタクロースを見つけるのですが、ウサギのサンタさん。
この世界では動物毎にサンタさんがいるようです。
ノンタンは猫のサンタさんを探していますがみつかりません。
やがてノンタンは疲れ寝てしまいました。
その時、猫のサンタさんが。
朝起きるとノンタンの枕元には・・・。
▼感想
ハッピーエンドの典型のようなストーリー。
クリスマスの定番絵本。
イロイロなサンタさんがでてきます。
子どもがまだサンタさんが分からないかもしれません。
サンタさんはプレゼントをもってきてくれるおじさんくらいと認識するようになるかも。
はじめてのおつかい
▼あらすじ
ある日みいちゃんは、ままからおつかいを頼まれます。
「あかちゃんの ぎゅうにゅうが ほしいんだけど、まま ちょっといそがしいの。ひとりでかってこられる?」
みいちゃんは今まで一人でおつかいに行ったことはありません。
それでもみいちゃんは買い物を引き受けます。
100円2つ握って、坂の上にあるお店に行きます。
道中のハプニングもあり、坂の上のお店でなんとかぎゅうにゅうを買えました。
帰り道坂の下には・・・。
▼感想
はじめてのおつかい、もう大人は自分の記憶には残っていないかもしれません。
が、想像してみるとそれはそれは大冒険。
主人公みいちゃんの心のドキドキが感じられます。
少しデフォルメされていますが、かなり写実的で暖かな絵。
お鍋の煮物のにおいまで匂ってきそうなホッコリ感。
お母さんの心配・暖かさも伝わってくる1冊。
ノンタンおよぐのだいすき
▼あらすじ
海でおよいでいたノンタン。
ウサギさん達と泳いでいると、迷子のちびっこかめさんが。
かにさん、たこさん、かもめさんにお母さんを知らないか聞きますが知らない。
やがて大きな魚に追いかけられるノンタン達。
何とか逃れて一安心。
カメのお母さんは見つけられるのか。
▼感想
めずらしくちょっと意地悪なキャラクターもでてきます。
それでもノンタンシリーズらしく、楽しさが全編からあふれています。
小さなかめさんを助ける、社会で生きていくうえでの大切なこと。
「とってんとってんぱしゃぱしゃ」という擬音。
子どもの大好きな、上手な表現です。
ノンタンおねしょでしょん
▼あらすじ
ノンタンはある日、おねしょをしていました。
そのおねしょの形は「さかな」でした。
うさぎさん、くまさん、ぶたさん、たぬきさんみんなおねしょをします。
みんなそれぞれ違う形。
みんなで布団を干すと、雲が出てきて雨が降ってきました。
お布団は無事乾くのか。
▼感想
おねしょがイロイロな形になる。
現実ではありえないですが、それが物語のよさでもあります。
このシリーズの特徴のひとつ、特殊な言葉表現。
この本では「おねしょでしょん」というフレーズ。
気に入る子どもは何度も口ずさみます。
この本でおねしょが治った子がいるとか。
個人的に思うこと
8位の『はじめてのおつかい』は、お母さんの気持ちが感じられる1冊。
子どもは何をするにも新しい経験で、ドキドキの連続。
それを見ているお母さんも実は子ども以上にドキドキ。
子どもは「安心」の土台があって、冒険を繰り返して成長していきます。
イギリスの児童精神医学者ジョン・ボウルビーが発達心理学の分野で「アタッチメント理論(愛着理論)」を1960年代に提唱しました。
この絵本シリーズ【2歳編】の末尾に載せた『安全基地』に繋がるベース理論です。
愛着理論
心理学、進化学、生態学における概念であり、人と人との親密さを表現しようとする愛着行動についての理論である。
子供は社会的、精神的発達を正常に行うために、少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無ければ、子供は社会的、心理学的な問題を抱えるようになる。出典:愛着理論(wiki)
子どもは親に無条件に受け入れられる経験をして、不安と共生、他者への信頼を構築していきます。
自分が安心できる環境があることは、挑戦するための「必要条件」です。
親の後をくっついて歩く「あとおい期」というのはその典型。
親にくっついて歩いて、ちょっと挑戦してまた親のところに戻ってくる。
自分の視界に親がいないと不安で泣く。
子どもは親との信頼関係・安心感の上で、新しい挑戦をして自信を獲得していきます。
大人の社会での話しですが「心理的安全性」が最近話題となりました。
世界最先端であり優秀な人材の宝庫である「Google社」の研究結果です。
実際、僕も「Google社」の方とそれほどたくさんではないですが仕事をしたことがあります。
個人的実感として「自頭が良く、結果に貪欲、優秀な方ばかり」という思いがあります。
そのGoogle社が「成果を出すための要因」は何かという問いに対し、結論として「心理的安全性は重要」という内容です。
心理的安全性とは
心理的安全性は、他者に気兼ねなく発言できる、自然体の自分を安心してさらけ出せる環境や雰囲気のこと。
グーグル社が約4年間かけて実施した大規模労働改革プロジェクト「プロジェクトアリストテレス研究」を実施。
その成果報告として『心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである』と発表した。
子どもが「抱っこーーー」とせがんで来る時期があります。
思う存分、抱いてあげることは「アタッチメント理論(愛着理論)」でも重要視されています。
・・・子どもがある程度の体重になると、ホントに重いですけどね。
ではでは
◆今回のまとめ◆
【3歳編】で100万部を超えている数は、30冊と年齢別では2番目
【3歳編】の1位『ぐりとぐら』は全ベストセラー中、2位
【3歳編】は『ノンタンシリーズ』が5冊を占める