奥様は宇宙人

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育児・子供観察

車のハンドルの遊びは、運転するとき、人間側が運転しやすいように設定されたマージンです。
人生も遊びが必要ですが、何かに追われ続ける現代では余裕を持つのもなかなかに難しい。
とはいえ、長い目で見ると遊び要素は不可欠で、四角四面で生きていける人はほぼいません。
この遊びをうまく使えば、夫婦の良好な関係が維持できるのかもしれません。

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企業では情報オープンが主流

いつのころからか、日本でもプライベートを大切にする風潮が根付きました。
象徴的な言葉としてワークライフバランスがあり、いまの時代は「残業をなるべくしない」が、優位になってきています。

日本のワークライフバランスは、能動的ではなく外圧的な面が強いと僕は考えており、特に高齢世代は否定的に見る人もまだいます。
「世界の流れはプライベート重視のようで、老害といわれるのもいやだから、しぶしぶ同意しておくか」。
思い当たる政治家発言も、日本のお家芸として健在です。

上場企業は、会社側から残業制限がかなり厳しめに入る時代なので、「24時間働けますか」を地で行く人は少なくなってきている。
そこには、諸外国からの日本の生産性低評価を、何とかしたい意図もあります。

生産性の高さで、いつも話題になるヨーロッパ。
北欧の国々では、夫婦育児が当たり前で、協力的ではない夫はすぐに離婚されるため、安易に残業して家庭での役割をおろそかにできないと聞きます。
日本でもいまの若い育児世代は、家庭を大切にする人が多い、と思いたいのですが、実際の男性育児取得率を見ると、さにあらず。
とはいえ、僕の身近には男性でも育休を取る人が、ちらほら出てきています。

残業時間は減っても、簡単に増員されない時代です。
時間効率を高め、人と違う結果を出すのも、なかなかにハードゲーム。

生産性を高める一助として、いまはできるだけ情報開示する流れになっています。
情報共有プラットホームが整ったことは前提にありますが、経営状況以外にも、チーム内外の情報共有や、意見箱のようなものもすぐに設置できる。

オープン化にかじを切った会社は、アピールの意味も含め、社員納得度が高く離職率にも好影響と言っている。
情報オープンの会社は、入社時にたくさんの情報が開示されていて、納得して入社しているので、離職可能性が低いのは分かります。
実際は入社後の環境は離職に大きく影響、特に同僚や上司との関係性が最有力でしょうが、僕はオープン化のメリットは、デメリットを上回ると思っています。

会社組織ではオープンが良かったとしても、家庭内では当てはまらないこともあると、僕はある時気づきました。

あえて触れないようにする

いまから振り返ると、僕は結婚当初、僕の奥様との関係構築時期に、悪手をやっていました。

僕の奥様と僕が一緒に生活し始め、お互いのやり方が違っている部分で、何度か衝突しました。
自分のやり方はこうで、君のやり方と違う。
お互いのやり方の意図を話して、どちらから妥協できればそれで良いですが、折り合いがつかないとそれなりに揉める(平たく言うとケンカです)。
その時は収まっても、また同じ状況になったら、ひと悶着する。

掃除の仕方、洗濯物の干し方、洗った食器の置き方など。
出自の違う大人2人が、新居で生活を共にして、違いが出るのは当たり前です。
問題を先送りせず、常に話し合って妥協点を見つけるのが、教科書的な正解かもしれませんが、われわれはそれが理想ではなかった。

どちらかに合わせるというのは、どちらかが折れている。
折れる側が納得できていれば良いですが、そうでないと尊厳を削るような状態にもなる。
アンバランスな状態になり、結果さらに衝突が増える不毛。
お互いが敬意を持てなくなったら、相当マズイ関係です。

僕は、失敗を繰り返した結果、たいしたことがない内容は、口にしないようになりました。

すべて口にしないわけではなく、言った方が良いことは、自分の中で「必須ではないタグ」をつけてストックしておく。
その後、お互いの機嫌が良い時に、感情論にならないよう、ストックを平易な表現で伝える。

僕の奥様も、ある時から同様の方法を取るようになり、相手の「いま言いたいことを飲み込んだな」が分かるようになりました。

模範解答ではなくとも、連れ合いとして、1歩深いところに進んだ気もします。

言い過ぎについての絵本として、上記が思い当たります。
子どもに読み聞かせをしていると、こういう凝縮した内容の絵本に出会い、大人が考えされられます。

育児方針も紛争ポイントになりやすい

子どもができると、育児方針は紛争ポイントになります。
どんな子に育てたいか、どんな習い事をさせるか、どんな学校を目指すか。

自分の人生ではないのに、ある意味自分の人生よりも本気で考えている子どもの育児関連のもろもろ。
自分が育ってきた環境や人生経験からの想い、世の中一般のニュースやママ友からの情報もある。
たくさんの選択の中から、何かを選ぶか、何かを捨てるか。

上記で夫婦間では「言いたいことをあえて言わない」と書きましたが、育児ではタイムリミットが存在する点が違います。

たとえば、幼稚園にするか保育園にするかは、どちらを選択しても大きな差はありません。
しかし小学校受験するかの場合、タイムリミットが立ちはだかります。
お受験は、早ければ年中、遅くとも年長の最初の段階から準備が必要になる。

お受験するご家庭は少ないですが、どこのご家庭でもありそうなネタとしては、どんな習い事をするか。
奥様がピアノを習わせたいと言い、旦那様が水泳こそ子どもに必要だと主張する。

この場合、お互いの意見がぶつかって折れられなかった場合、保留で良いのか。
長い目で見れば、1年くらいは挽回可能ですが、いまのこのタイミングを逃して良いのか親として焦る。

こういう時でも、少し時間を置くのは上策です。

すくい取るかは姿勢の問題

最初にぶつかった時はお互い感情的になっている可能性が高く、そうであれば相手の意見も冷静に判断できていない。
いったん、保留にしてお互いが持ち帰り、後日、冷静に話す場をつくり、お互いの意見を調整する。

言わずもがなですが、いつもどちらか一方が勝つような状況は、それを両者が望まない限りやめた方が良い。
仮に、片側意見の大半が正しかったとしても、相手を立てる部分をつくる(配慮する)。
「なるほど、その意見は子どもにとって良さそうだよね。」

ののしりあってもチーム全体が明るくなるはずもなく、できるだけ良い気分でいられるように言葉に気を付ける。
何でも言うのではなく、余裕(遊び)を持って、発言する癖をつけておく。
そんな夫婦の会話を、子どもはしっかり聞いて育つと、いまは感じています。

家族であっても、パートナーや子どもと理解しあえるわけではない。
歩み寄れない部分はあって良い、それが尊重の姿勢です。

僕はある時から、処世術的に僕の奥様を宇宙人と思うようにしています。
調和点が見つけられないときに、直球の否定ボールを投げつけない、僕のやり方です。

日本国内で道を歩いていて、たどたどしい日本語で道を訪ねてくる外国の旅行者がいたとします。
いまはGoogle mapがあるので、道を聞かれなくなりましたが、僕は何度かそうした場面に遭遇しました。

この場合、たいていの人は、外国人の日本語が分かりにくくても、ある程度までは受け入れる。
片言の日本語だったとして、相手の言いたいことを推測して、じっくり話を聞く。

パートナーや子どもを、片言の日本語を話す外国人ではなく、宇宙人と考えたら。
自分が理解できない内容でも、いったん距離を置いて考えられ、自分の受け取り方が間違っていないか、しっかり話を聞く姿勢になります。

さいごに

冒頭記載した通り、車のハンドルの遊びは、人間が運転しやすいように組み込まれています。
市販車の中でも遊びの大きさに差はあり、レーシングカーは遊びがほとんどないものもあります。
レーシングカーは、タイムを競うため、極限まで遊びはそぎ落とされる。
短期勝負ではこれで良いすが、夫婦生活や育児は長距離走。

ガチガチに固めた状態では、リタイヤしてしまいます。