博物館で教科書に載っているような文化財を見る

スポンサーリンク
育児・子供観察

博物館への補助金が減っているニュースを見聞きします。
数は減少していないのに補助金総額が減っていれば、1館当たりの補助金は減ります。
博物館利用者数は伸びておらず、文化財保存のために収入源確保は博物館側にとって悩ましい状況。
教科書に載っているような文化財を見るには博物館以外は基本はなく、その収蔵品は人類の財産です。

スポンサーリンク

博物館は1990年代前後に増加

博物館・博物館類似施設 施設数の推移
出典:社会教育調査(e-stat)

1980年代から2000年にかけて、博物館と博物館類似施設数は大きく増加しています。
細かく見ると「博物館」は緩やかに増加、「博物館類似施設」は一気に増加した後、横ばい。
「博物館」は1955年239施設から2021年1,305施設となり、1,066施設増え増減率は546.0%。
「博物館類似施設」は1987年1,574施設から2021年4,466施設となり、2,892施設増え増減率は283.7%。

博物館・博物館類似施設 職員数の推移
出典:社会教育調査(e-stat)

職員数ですが、「博物館」「博物館類似施設」ともに右肩上がりで増えています。
このグラフの期間、施設数増加率は2414.6%、職員数増加率は2041.4%で、やや職員数の増加率が低い結果です。

博物館・博物館類似施設 利用者数の推移
出典:社会教育調査(e-stat)

博物館利用者数は1980年代から1990年代に増加し、以降横ばいからやや増加。
最高値は2017年の3億0307万人、2021年はコロナウィルス蔓延時期で1億3970万人と大きく減少しています。

博物館1館あたりの入館者数は減っている

博物館・博物館類似施設 入館者数の推移 割合
出典:社会教育調査(e-stat)

博物館全体ではなく、分類分けした入館者数の情報が上記です。
1986年を100%として、その後どうなったのか。
2021年はコロナ過なので特殊事情として除きます。

一番伸びているのが、グラフ内青色線「総合博物館」206.8%、その次がグラフ内黄色線「美術博物館」195.0%。
2017年時点で減少しているのは「動物園」と「動植物園」で、ともに100%割れしています。

全体では、1986年と2017年を比べると143.8%。
この期間の日本総人口増減率は104.3%で、この増加率より入館者増加率の方が高いので、博物館に行く人(回数)は増えています。

博物館・博物館類似施設 1館当たりの入館者数の推移
出典:社会教育調査(e-stat)

上記は博物館1館当たりの入館者数推移です。
この文章の1つ目の段落のグラフでは博物館施設増加割合>入場者増加割合だったため、博物館施設1館当たりの入館者数で見ると減少します。

分類別 博物館・博物館類似施設 1館当たりの入館者数の推移 割合
出典:社会教育調査(e-stat)

博物館分類別に見た時、2021年は除外して1986年と2017年を比較すると、増加しているのは「水族館」のみです。
最下位の「野外博物館」は、1986年と2017年を比べると-71.1%。
全体では、1986年と2017年を比べると-38.7%となっています。

博物館への補助金は減っている

博物館には運営のために補助金が支給されます。
その支給額の推移が、地方教育費調査の中の分類にありました。

地方教育費調査 年次推移 博物館
出典:地方教育費調査(文部科学省)

1990年代~2000年あたりが補助金額総額が最大の時期、その後2000年代以降、減少しています。
この文章の一番上のグラフにある通り、博物館数は2000年以降に減っていないので、1館あたりの補助金額は単純計算で減額です。

博物館 年間総収入に対する補助金以外の割合
出典:令和元年度 日本の博物館総合調査報告書(文部科学省)

博物館への補助金が減額されてるのであれば、博物館自身が収益獲得を目指す。
上記令和元年(2019年)の文部科学省「日本の博物館総合調査報告書」にある、年間総収入に対する補助金以外の割合です。

補助金以外の割合が高いのが「水族館」74.6%、次点が「動水植(物園)」59.1%。
一番低いのが「植物園」25.4%。
魚や動物施設に人が集まりやすいのは、子育て世代であれば特に納得です。

令和元年の博物館の入館者のうち外国人割合
出典:令和元年 公立博物館における来館者数の状況について(文部科学省)

補助金や内需が見込めないのであれば、訪日外国人も1つのターゲットになります。
コロナ過以前までは日本への観光客は増加していたので、博物館入館者の外国人割合を見てみました。
上記は文部科学省の令和元年(2019年)1月~10月情報で、世界的なコロナ過が蔓延する前の年です。

突出しているのは「東京都江戸東京博物館」の30.0%、908,868人の入館者のうち272,660人が外国人です。
東京が外国人にとってメジャーな観光スポットで、立地的にも観光名所の浅草に近い点もあるのか。
2位が「佐賀県立九州陶磁文化館」の10.8%、九州なので、中国や韓国の訪日客が予想できます。
博物館入館者割合のうち、外国人割合の全体平均は2.4%ですが、これが高いのか低いのか分かりません。

ここまでをまとめます。
・博物館は1990年代前後に博物館類似施設が大きく増加
・職員数も博物館数増加につられて増えている
・博物館利用者数は2000年以降、大きく伸びていない
・1館当たりの入館者数は減少
・補助金は2000年以降減少している
・外国人の博物館入館者は全体平均で2.4%

教科書に掲載されている作品が見られる場所

東京国立博物館の本館2階に、国宝室という展示室があります。
児保部屋ではこの館が所蔵している国宝を、1か月前後の期間で順次展示されます。
子どもの頃、教科書で見た文化財を目にすることができる。

僕は大人になってから国宝室を知り、ある時「松林図屏風」が展示される情報を知り、観に行きました。
なるべく人が少ない状況を狙って、平日に会社の休みを取って訪問。
結果、国宝室には数人しかいない、ほぼ貸し切り状態で目的の屏風が見られました。

松林図屏風(e国宝)

僕は専門的な美術の勉強をした経験はなく、ある意味先入観はゼロの素人です。
松林図屏風に対しては、余白の多い日本らしい絵で何となく好きだが、どの程度好きかは答えられず。
知っている有名な絵の中では最有力だが、作者は知っていても来歴すら答えられない、そんなミーハーな訪問でした。

実物を見ても、大半の人がそうだと思っていますが、この屏風がなぜ国宝なのか説明できません。
自分の中に美術を見る基礎教養がなく、表層しか見られていないとも言えます。

それでも、せっかく目的の絵画を見られたかつ周囲に人も少ないので、近づいたり離れたり角度を変えて時間かけて屏風を眺める。
屏風は折れ曲がっているので、見る位置によって表情が変わります。
水墨画なので色はなく、頭の中で季節や状況を想像。
松の木の濃淡から、日本の梅雨時期を僕は思い描いていました。
数分の滞在後、国宝室を退室、目的の屏風を間近にじっくり見られました。

東京国立博物館には、国宝室以外にも常設展示品がたくさんあります。
立ち止まらず見ても1時間、興味がある文化財に足を止めるなら、半日から1日の時間を要する展示ボリュームです。

2023年6月現在、国宝室を含む常設展の一般個人入場料金は\1,000です。
僕が松林図屏風を見に行った時期は620円で、さらに安い。

値段が重要ではありませんが、国宝や重要文化財を含む貴重な品を、行列などもなく普通にみられる。
思いのほか満足度が高く、以降、たまに国宝室の展示内容や特別展で興味がある時に、僕は東京国立博物館に足を運ぶようになりました。
東京国立博物館に気軽に行ける、それは身近に文化財を見る機会があるのを知ったというお話です。

それでも、僕が見たことがある展示物は、東京国立博物館が所有している中のほんの一部でしかなく。
裏に保管している文化財が数十倍存在するのを想像すると、維持管理に途方もない費用と労力が必要だ予想できます。

博物館には貴重な文化財を保存、後世に残していく役割がある。
僕は大人になって、やっと博物館の凄さや楽しさが少し分かるようになりました。
お金は大事ですが、人はパンのみに生きるにあらず。

精神年齢が子どものうちは、嗜好が合わないと博物館や美術館はおもしろくありません。
本物と呼ばれるものを見る経験は、自分の仕事だけではなく一生の財産になり得る。

子どもを持つと、未来を考えるようになるのは子育てあるあるです。
子ども達以降の世代にも文化財を残せるよう、補助金投入は必要です。

さいごに

直近で子どもたちに人気の展示で思い当たるのは、巡回展「ポケモン化石博物館」。
東京では国立科学博物館で2022年3月に開催され、春休み期間だったので子どもたちに人気のイベントでした。

博物館が好きな子どももいますが、博物館に縁遠い子の方がたぶん多数派。
それを人気キャラクターポケモンとコラボすることで、子どもが博物館に足を運びます。
行けば博物館がどんなところか知ることもでき、展示物はもちろんその建物自体の重厚感や雰囲気を体感できる。

親目線だと少し教育視点も入ってしまいますが、それほど堅苦しく考える必要もなく。
自分や子どもに興味がありそうな展示会を、どこか行くときの行先候補に入れるのはいろいろな面で良いです。