釣り人口は減少だがその環境は現代では重要

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釣り人口が下り坂です。
コロナウィルス流行で、3密を避けられるアクティビティの1つとして釣りが人気と言うニュースを見聞きしていましたが、これは断片を切り取った情報でした。
その中でも釣りをする人は活動回数が増え、費用も少し増加しており、釣り具市場について2021年は微増。
釣りは、その独特の環境に強制的に身を置くので、ぼんやり考える時間として最適です。

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釣り人口は右肩下がり

コロナ過で、アウトドア人気のニュースをよく見聞きします。
釣りは外で密集しない状況から人気が高まっているような印象を受けていましたが、実際はそうではなく。

釣り 参加人口の推移率の推移
出典:レジャー白書 2022(公益財団法人 日本生産性本部)

上記、参加人口だけで見てみると、全体傾向は右肩下がりになっています。
グラフ内最高値の2010年の940万人、2021年は560万人で、-380万人増減率は59.6%です。
2021年は2020年に比べ10万人増加していますが、グラフを見て分かる通り下り坂は変わりなく、釣り人気が高まっているとは言えません。

Google Trendsによる「釣り」キーワード
出典:Google Trends(Google)

同時期のGoogleキーワード検索結果が上記です。
Googleで検索された数なので、実際の釣り人口とは違うものですが、こちらはやや右肩上がり。
ピークが2020年の8月になっているのは、1つ上のグラフの釣り人口とは違う流れです。
グラフがでこぼこしているのは釣りシーズンの関係で、夏場が釣り人口が多いためです。

釣り市場はここのところ横ばい

釣り具の市場推移が以下です。

釣り具 市場推移
出典:レジャー白書 2022(公益財団法人 日本生産性本部)

グラフ内では1999年が最高値で、そこから緩やかに下がって、2021年は前年比で少し伸びています。
1999年と2021年を比べると-930億円、66.3%になっています。
2020年は1,650億円、2021年が1,830億円と110.9%、前年比10%増加は業界にとって良いニュースです。

株式会社ティムコ 釣り具 市場推移
出典:2021年11月期 決算説明補足資料(株式会社ティムコ)

釣り具市場について別情報として、釣り具を取り扱っている上場企業ティムコ社のIR情報が以下です。
こちらも2021年予測値は2020年見込値に比べ5.2%伸びています。

釣種別では、ルアーフィッシングが61.1%と最大ボリューム。
渓流釣りのみ、2020年は2019年に比べ、-3.2%下がっていますがそれ以外はすべてプラス結果になっています。
釣り参加人口が減少して、市場が伸びているのであれば、一人当たりの消費金額が上昇していることになります。

釣り 年間平均活動回数・平均費用
出典:レジャー白書 2022(公益財団法人 日本生産性本部)

青色棒グラフが平均費用ですが、全体傾向は右肩上がりです。
折れ線グラフが活動回数で、こちらも上昇しているので、釣り人口増加ではなく、釣りをする人が釣りに行く回数が増え、その人たちが釣り具を購入していると言えます。

男性の釣り人口が大きく減っている

釣り人口の男女比情報が以下です。

釣り 性別参加率の推移
出典:レジャー白書 2022(公益財団法人 日本生産性本部)

釣りをする人は、ザックリ男性は10%前後、女性は3%前後で、男性優位です。
男女とも参加率は減少しており、2012年と2021年を比べると男性は-4.0%、女性は-0.5%。
2012年と2021年比較の増減率では、男性は68.8%、女性は84.4%。
男性の参加人口が約2/3に減っています。

釣り 2021年 性別・年代別参加率
出典:レジャー白書 2022(公益財団法人 日本生産性本部)

最後に2021年に釣りをしたか、性別・年代別参加率です。
今回の情報の中で、理由が一番分からなかったものがこのグラフの「男性10代」の14.8%が釣りをしている。
他の年代、性別を見ても、この層が突出して高い数値です。

Google Trendsによる「釣りスピリッツ・釣りガール」キーワード
出典:Google Trends(Google)

2019年にゲーム「釣りスピリッツ」の流行があったため、Googleキーワード検索結果を調べた結果が上記です。
青色折れ線が「釣りスピリッツ」で2019年に人気が出ており、これが実際の釣りにつながったかは分かりませんが、一因の可能性として考えられます。
参考までに赤色折れ線は「釣りガール」ですが、こちらは低空飛行を続けています。

無人島にいるような感覚

僕は子どもの頃、父親に連れられて釣りをしていました。
主に海釣りで、夜釣りも含め、年に数回は竿を振っていました。

父親が1匹も釣れないのはおもしろくないだろうと配慮してくれたのか、比較的小型の魚を数多く釣れる魚種を釣っていました。
ハゼやセイゴ(フッコ、スズキ、ハラク)を、ぼうず(1匹も釣れない)にならないよう、時期や潮見表を選んでいました。

僕が小学校低学年の頃から、父親と夜に釣りに出ていたのですが、いま僕が東京に住んでいる環境から考えると、牧歌的な時代を感じます。
当時、僕は地方在住でしたが、いま東京で日が落ちてから子どもの姿はあまり見かけません。
塾帰りと思われる子はいますが、遊びで外にいる子は皆無です。

僕が子ども時代、どのくらい釣りが好きだったか想像するに、それなりに楽しかったが夢中になるほどではなかったような。
夜の外出、夜ご飯を外で食べられるなど、非日常が嬉しくて親に付いていったのかもしれません。

その後、社会人になり親元を離れた後も、たまに父親と都合を合わせて釣りに行っていました。
堤防の上で半日、釣り糸を垂らしている状況は、現代社会の中でぽっかり空いた空間で、時間が止まっているような感覚になります。
釣果(魚が釣れる)も嬉しいですが、この感覚になりたいがため釣りに行きたいと思っています。

いまは、スマホがあればどこでも仕事やSNSができますが、僕は釣り中はスマホ画面を見ません。
現実、ウキ(魚が針にかかると知らせてくれる水面に浮かぶ道具)を見ていないと、釣れないのでスマホは見られません。
竿を持っている、あるいは竿の側にいる必要があるので遠くに行けず、座ってぼんやり水面を眺めている。
飽きると少し散歩したり、東京では見られなくなった外で立ちションをしたりする。

それはインターネット環境がない、無人島にいるような。

僕が釣りをしたのは、親が釣り好きだったからが前提にあります。
子どもにとっては、親の趣味や親が提供できるものから何かを選ぶ。
自分が親になってみて、その役割を感じます。

親のエゴですが、わが家の子どもに釣りのように強制的に非日常に浸れる感覚の何かは持っていてほしい。
定期的に自転車に乗るとか、スキューバダイビング、座禅などもそれに当たります。

非日常の状況で、自分の中で考えを整理したり、新たなアイデアを思いつく。
リラックスした時間がそれに適しているのは、脳科学でも証明されています。

海風に吹かれ、そこそこ釣果があれば、良い1日になれるのが釣りです。

さいごに

釣り市場の流れは横ばいから微増でしたが、余暇市場全体は縮小しています。

コロナ過でインバウンドが見込めないのであれば、国内で初心者と若者を取り込めるかは、その業界の未来につながります。
今回、調べた中で10代男性の釣り参加率が14.8%をいかに実需に結び付けられるか。
初心者の門戸を開くべく、ハードルを下げる努力も必要で、若者に対し頭ごなしや老害的な行為はマイナスの結果になります。

釣りは、魚を触る、エサを触る、直射日光、トイレ問題など、女性に苦手な要素があります。
この点からターゲティングする相手は、女性ではなく若い男性。

一定以上の需要を保っていないと、その業界はある時を境に一気に崩れます。
と言っても、若者をスマホから引き離し自分達で釣りに行くようにさせるのは、なかなかにハードルの高いミッションです。