親子の会話について、日本、アメリカ、中国、韓国を比べてみると、日本はよく話している国に属しています。子ども視点でも大人側からも満足度は高い結果ですが、子どもとのコミュニケーションが減っていると感じる親の割合も半数弱はいる。2020年前半のいま、コロナウィルス禍で他者接触のハードルが高くなったがゆえ、親子関係はより密になっている気がします。
親子関係について日本は高い満足度
最初に4か国で2017年に実施された、日本、アメリカ、中国、韓国のデータです。アンケート対象者は各国の小中学生、ほぼ1,000人以上合計2,000人以上なので、大規模調査です。
出典:インターネット社会の親子関係に関する意識調査報告書(国立青少年教育振興機構)
質問が「良く話しているか」なので、どのレベルが良く話しているのかフワッとしており微妙ではありますが、4か国では日本とアメリカが高く、中国が低い結果です。韓国の小学生は親と良く話をする人が約半数、中学生になると2/3強に増えています。
出典:インターネット社会の親子関係に関する意識調査報告書(国立青少年教育振興機構)
4か国とも、「とても好き」と「まあ好き」が大半を占めています。1つ目のグラフを含めて考えると、好きだが会話できているかは相関が薄く、好きでも会話できていない何らかの事情があるようです。小学生と中学生を比べてみると、中学生の方が減っています。中学生が年齢的に思春期と考えると、納得の結果です。
出典:インターネット社会の親子関係に関する意識調査報告書(国立青少年教育振興機構)
このアンケート回答者は、大人側ではなく子どもです。小中学生とも、親は自分の話を真剣に聞いてくれていると感じています。特に韓国が「(親が真剣に話を聞いてくれている機会が)よくある」と感じており、子どもの主観であっても親は子どもと向き合っています。
子どもと会話するのは家の中が大半
この段落は、日本国内のアンケート結果です。調査対象は子どもと同居している母親760名、2018年の情報です。
出典:親子のコミュニケーションに関する調査報告(株式会社mitoriz)
総じて、ポジティブな結果です。母親のアンケート結果で、子ども側の反応は別として、子どもとの関係性は良い数字です。
出典:親子のコミュニケーションに関する調査報告(株式会社mitoriz)
https://www.mitoriz.co.jp/pressrelease/20180328-1957/
子どもと会話するのは、おもに夕方から夜。夕ご飯や朝食が上位に入っているので、ご飯を子どもと一緒に食べながらよもやま話をしています。
出典:親子のコミュニケーションに関する調査報告(株式会社mitoriz)
会話する話題は、子どもの身の回り世界についてが大半です。友人関係が1位なのは大人も近く、人との付き合い方の難しさは生涯続きます。3位がテレビ番組で、令和に入ってもテレビが子ども達の間で話題になるメディアのようです。
出典:親子のコミュニケーションに関する調査報告(株式会社mitoriz)
すべての解答が、会社組織などで昇進したときに受ける階層研修の内容と同じです。相手を尊重する姿勢、自分がボールを持つのではなく子どもに話をさせるのは、部下との会話でも同じです。
コロナ過は親子コミュニケーションを密にした
ここからは、スタジオアリス社の子どもとのコミュニケーションに関するアンケート結果です。2021年に実施した、子どもを持つ親、男女500名の回答結果です。
出典:小学生の親子関係に関する調査(株式会社スタジオアリス)
減っていると感じる割合が43.8%、減っていると感じない割合が56.2%、拮抗しています。コミュニケーションをどう捉えるのか、あるいは子どもの成長段階を考えると、その数字の意味は変わってきます。
出典:小学生の親子関係に関する調査(株式会社スタジオアリス)
子どもが小学生のうち、いつごろからコミュニケーションが減ってきていると親が感じたのか。1位が4年生と、最上級生の6年生ではありません。また、1年生が4位に入っているのは園児を卒業して就学や、私立小学校入学者は通学も遠くなるなど、この時期が1つの変革期のようです。
出典:小学生の親子関係に関する調査(株式会社スタジオアリス)
コロナウィルス禍で在宅勤務になった人は典型的ですが、親が自宅にいる時間が増え、当たり前ですが会社に出勤している時に比べると、子どもといる時間は増えます。このグラフ、コミュニケーションが減っていると回答している層がいますが、それぞれのご家庭や子どもの状況によって、増えれば良いのではなく。子どもにとって良い環境を目指し少し距離を取るのは、少子化環境で過保護・過干渉になるのに比べれば、良策です。
横並びで散歩しながら話す
子どもと、いつどこで話をするのかについて、上のグラフ「子どもと会話するシーン」では、大半が家の中でした。僕は自分の子どもと話をするとき、家の中以外ではドライブ中と散歩があります。この2つの共通点は、顔の向きが正対(向き合う)ではなく、同じ方向を向いている点です。
カウンセリングや組織での上司部下面談で、座る位置を分類すると以下の3つになります。
正面・・・顔の表情などが分かりやすい、意見がぶつかりやすい、プレッシャーを与える
横90度・・・適度な距離感、話しやすい
横並び・・・共感や同調しやすい、プレッシャーがない
わが家の近くに、子どもが小さなころから足しげく通っている大きな公園があります。本格的な遊具や公共施設もあり、ジョギングコースとしてもしっかりしているので、運動や散歩もできる、子育て環境としてとてもありがたい場所です。ある時、わが家の子どもが友達に自分のオモチャを貸せなくて、反省した時がありました。状況は、仲の良い友達が自分の家に遊びに来てくれ、総じて一緒に楽しく遊んでいたが、自分のお気に入りのオモチャを見せたとき、友達に貸してと言われても貸せなかった。相手の子も、それについて不満顔だったのをわが家の子どもがキャッチしており、あれはダメだったと凹んでいました。
僕は子どもを公園に散歩に連れ出し、その時にどうしてそう思ったのかを聞きました。大切なおもちゃで壊されるのがイヤ、自分の家に来てくれて自分の方が偉いと勘違いしていたなど、そういう意図があったのだと大人脳では測りきれない点もありました。横並びで歩きながらの会話なので、子どももプレッシャーが低いのか、他には何か思うことはあった?と聞くと、あれやこれや話してくれる。僕はたまに自分の意見や、自分の幼少期の失敗を挟みますが、基本は聞く立場です。
「自分がそれをされたらどう思う」という言葉は、特に子どもにとっては考えるきっかけになる良いワードです。自分が失敗したことについては「自分がされたらイヤ」と言いますし、「じゃあ、次からはどうしたらよいと思う」につながります。
子どもの頭で問題のエッセンスを抽出し、自分の言葉で振り返りと再発防止策を立てる。1つのミスを未来につなげていく。
言葉がたどたどしかったり、的を射ていない内容もあって当たり前です。その場合、親が論点を少しだけ整理、子どもが受け取れそうな言葉で微調整していく。回り道っぽくももありますが、近道です。
僕は、自分のオモチャを人に無条件に貸す必要はないと考えています。壊されたくないモノはあらかじめ出さないのは1つの手段ですが、出すなら一緒に触るなどの条件を付けるのも良い。お互いの関係性、相手の特徴、状況から判断して、その時相手にできる最高の配慮を心掛ける。特に、自分がお友達を迎え入れる立場なら、おもてなしの心にあたります。
親が子どもの失敗に感情的に怒っても何も伝わらないのは、いまは一般常識になりました。実際、大人は自分の過去体験から、それが意味がないのは分かっている。正論を主張するならできるだけ控えめに、そして親子間の相互信頼は前提条件です。
子どもにとって、親の自分がどうありたいか。正面に立って指導する時期もありますが、子どもの自立のため受け身型は早く卒業した方が良い。横並びで子どものサポート、伴走をある程度する。やがて、子どもは伴走から外れ自走していく姿を、後ろから見送る。
親子で話をするとき、日常のリビングではなく公園で散歩しながら話すのは、わが家の親子にとっては1つの方法です。夕焼けがきれいだねぇ、と話したことは、僕にとって後々まで残りそうな記憶です。
さいごに
個人主義が加速する社会環境の中、現代では他人との距離の取り方が難しくなっているとします。友達であっても上司部下であっても相談がしにくい、こんなこと言って大丈夫かと考えやめてしまうケースが増えている。
逆に、親子の関係性は深くなっていると、僕の身の回り観測ですが感じています。他者へ相談がしにくく、核家族化で家族間コミュニケーションが増え、結果、家族で話す時間が増える。
コロナ過は、他の家族との関係を少し遠くしましたが、反面、家族で話す重要度が増しました。