子どもも木も応えてくれる

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育児・子供観察

園芸中は、沈思黙考の時間。
園芸に限った話ではありませんが、ぼんやりあるいはしっかり考える状況は、現代では貴重です。
子育ても同様、子どもの時間に寄り添って、考える時間が発生する。
土いじりと子育ての共通点は、どちらも手を掛ける必要があり、応えてくれる点です。

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園芸用品市場は横ばい

最初に、園芸業界がいま、どんな状況なのか。
ここ20年の園芸用品市場推移が以下です。


出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)

2008年付近に谷がありますが、グラフ全体で見ると横ばい。
比較として、この期間の余暇市場「全体」は、1997年と2019年を比べると63%と減少。
園芸用品は生き残っている市場です。

とは言え、参加人口が横ばいなのかというと、そうでもない。


出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)

こちらは10年間推移ですが、先ほどの市場推移とは異なり、減少トレンド。
2010年と2019年を比べると、67.2%と約2/3となっています。

参加人口が減って、市場規模がそのままであれば、単価が高くなったと言えます。
本格的な趣味として園芸をする人が増えた、というのは言い過ぎかもしれませんが、最近はハマる人はハマる、凝り性な人が参加した市場かもしれません。


出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)

最後にもう1つ補足として、農園(市民農園など)の参加人口情報が上記です。
この10年間で125%と伸びています。
このグラフは、先ほどの2つ目のグラフと単位が1桁違います(小さい)。

ここ数年、土地を借りて野菜を作る人のニュースを耳にするようになりました。
僕の知人も、畑を借りて野菜を作っており、嬉々として週末、土いじりに没頭しています。
そういう人が、ここ10年は増えたようです。

都心部でお金を払って畑を借りる人は、たいてい用具も新調する。
趣味で野菜を作る層は、ある程度はお金に余裕がないとできません。
こうした層が新規流入し、単価が上がったというのは、ありえそうです。

そして、2020年のコロナ過で、ホームセンター売り上げが増加したニュースがありました。
外出自粛となり自宅でできる楽しみの1つとして、園芸や庭いじりが増加したのは、想像に難くありません。

ただ、木や畑に食指が動くかは、年齢によるところも大きいような気もします。

見ていなかったものを見る

僕は、わが家に子どもが生まれたとき、誕生樹として木(幼木)を買いました。
それまで、自分で木を育てるような経験はなく、木に興味がほぼありませんでしたが、子どもを迎えて、興味本位でのスタートです。

未経験のため、本を買って、必要な用具をそろえ、手探り状態でやってみる。
完成度は低いですが、腰の高さもなかった幼木が、いまはそれなりの高さまで無事成長し、愛着があります。
自分が木に愛着をもつようになるのが、何より新鮮。

愛着を持つと、いままで視野に入っていても、脳で処理されていなかったところも動き出します。
僕が育てている木と同じ木が僕の実家にあり、あるとき実家に帰った時それに気づきました。

実家の木は、樹齢30年は過ぎているもので、とても美しい。
美しい理由は、プロの剪定師に毎年剪定をお願いしたためです。

長い年月かけて、整えられたそれは、見事な枝ぶりになっています。
この木と比較して自分の木を見ると、自分の木は素人と痛感。
いまでも実家に帰ると、その木を眺め自分の木との違いを探して、楽しんでいます。

他にも公園や道で、同じ木に出会うと、やはり枝ぶりや木肌を観察している自分がいる。
万人が木をしげしげと眺めているとは思えないので。あくまで趣味の世界です。

子どもも土も応えてくれる

イチゴを食べたいと思った時。
スーパーに並んでいるイチゴを購入するのが、手軽かつ間違いなくおいしいイチゴが食べられます。

そもそも、いまのスーパーに並んでいる食べ物は、どれをとっても一定以上のクオリティになっています。
「あまおう」などのブランドイチゴであれば、失敗しようがない。

対し、自宅でイチゴを育てると、枯らしてしまう可能性もありますし、何より時間と手間がかかります。
効率優先の現代思考から考えると、園芸は趣味になる。

しかし、土は手間をかけると必ず応えてくれます。
美味しい野菜や果樹を実らせたり、美しい花を咲かせたり。

子どもも必ず応えてくれます。
と言っても、親の思い通りになるわけではなく、親の手を煩わすのという意味が大半。
子どもが幼少期の手のかかる時期は特に大変ですが、それも後で振り返ると、かけがえのない時間にもなる。

そして、子どもを持つと嫌というほど体験する、非効率経験。
とは言え、子ども側に効率を求めた時点で戦略ミス、そもそも子育ては効率と対極に位置します。

ただ、どちらも共通するのは、やりがいがある地道な事で必ず応えてくれる点。
そしてどちらも、親にとっては能動的な行為です。

受動的な時代に能動的になる方法の1つの園芸

現代は、意識しても、受動的になりやすい環境があふれています。
デジタルデトックスという言葉もその典型で、常に何かに囲まれている。
インプットばかりで、自分の中で熟成させてアウトプットしないと、カオナシになる危険性もある時代。

庭木を剪定したり、畑を耕すとき、それを始める時に「まずやろう」と、動き出しがあります。
動き出しても、放置しておくとすぐにダメになるので、面倒くさくさくても手をかけ続けなくてはいけない。
強制的に、単純作業に没頭する環境は、現代では意識しないとなかなか作れません。

そこにやる意味があるのか、と言うのは、その質問自体がナンセンス。
子育てに意味がありますか?と問うているのと同じです。

受け身になって明るい未来になれば良いですが、そんなことはなく。
自分事として、悩み考え動き続けて、すこしでも状況を良くしていく。
木を育てる時、どんな肥料が良いのか、土があっているか、適量の水やりと同じ。
長い年月をかけて、地道に良くなっていく。

やっている側の大人は、楽しみながらだと思いますが、その実、受益者でもある。
子どもや木を育てているようで、実は自分が育てられているというのは、必ず出てくる子育てあるあるの1つ。

都会人の畑作業など、専業農家の方から見れば、お遊びなのはそうだと思います。
日ごろ、デスクワークしている人であれば、数時間身体を使うと、翌日筋肉痛になることもしばしば。
もしかすると、この筋肉痛すら趣味の1つとしてやっている節もあります。

だれかに強制されるのではなく、自分がやりたくてやる園芸・畑作業。
自然に触れるのにお金がかかる時代、おとなの趣味です。

大人の趣味とはいえ、子育て中のご家庭であれば、子どもに土に触れてほしいという想いは、みなさん抱いている気もします。

子どもは親の心知らず。
子どもも最初は楽しんで参加しますが、どこかで飽きます。
それは、昔の自分の姿です。

さいごに

年齢を重ねると、自分の趣向が変わる。
僕は自分の変化を、意識して埋め止めよう、積極的に流されようと思っています

僕は子育て開始前後から、本格的に木に目が行くようになりました。
そこに子育て経験も影響していると、考えています。
さまざまなものが、自分を変えていく。

木や土が好きになった先には、石が好きになるという話を読んだことがあります。
自分がそのうち、石に興味がでてくるのか、楽しみにしています。