自己主張と自己抑制のあいだ

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育児・子供観察

言いたいことをがあっても、言わない。
欧米人に比べ日本人は自己主張が苦手として、時代は自己主張も大事の風潮になりつつあります。
討論や議論の機会が少ないのがその一因として挙げられますが、会社などの打ち合わせでも空気を読むのは日常風景。
それでも仕事に限らず、言わないと伝わらないと考えるスタンスは、家族内でも必要です。

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自分の意見を言う

学研教育総合研究所「小学生白書」に、自己主張についてのアンケート結果がありました。
2021年8月の調査結果です。


出典:小学生白書(学研)

このグラフの質問肢は「友達から嫌われないために、自分の意見を言わないことがありますか?」です。
大人であれば「あります」回答が100%になりますが、子どもへの問いとしてその真意を汲み取れるか微妙感があります。

質問だけ考えると、自分の意見を言わないことが悪いと言っているわけではない。
例を考えてみると、A君は鬼ごっこがしたいと思っていたが、B君はドッジボールをやろうと提案してきたので、A君は自分の言葉を抑える。
このケース、一般的には配慮ができている良いアクションとされます。

発言の善悪は置いておいて、上記グラフでは約2/3の子どもが「言わないことがある」と答えています。
男女比でいうとやや女子の数値が高く、これも良く言われる女性の方が男性よりも社会性が高いとも取れます。


出典:小学生白書(学研)

学年別では、年齢が上がるほど自分を抑えています。
これも、年齢が上がる毎に社会性が身に付いた結果と言えます。


出典:小学生白書(学研)

補足として、男女別・学年別で自分を抑える割合を折れ線グラフにしたものが上記です。
男女比では女子が、年齢比では高学年が、自分を抑える傾向にあります。

他人の役に立つ人と考える人が増えている

以下は自分ではなく他人が、他の役に立つか自分優位かのアンケート結果です。


出典:日本人の国民性調査(統計数理研究所)

総論、近年に近づくにつれ、他人の役に立つと思う人が増えています。
1978年と2018年を比べると、「他人の役に立つ」と考える人が2.3倍、「自分のことだけを考える」割合がマイナス45%。
2008年までは自分優位の人が他人優位より多かったものが、2013年に逆転しています。
2013年に逆転と聞くと、2011年の東日本大震災の影響を感じます。

このグラフの最初の年、1987年は自分優位が74%、他人優位が19%とその差約4倍。
昭和時代は自分のことを考える人が多く、平成・令和になり利他意識が強まっている。

僕の身の回り観測ですが、最近の若者の振る舞いと老害は、この結果とマッチします。
若い人は粛々と現実に適合(迎合?)しているが、高齢者の増加が主因としても自己中行為が目につく。

重複しますがこのアンケート、自分のことではなく他人の評価結果です。
自分には甘めバイアスがかかりますが、他人であればある程度客観的にみられるとしての結果です。

主張と抑制のバランス

少し古い本ですが、子どもの発達に関する各国の考え方についての以下の本があります。
その中で、日米英の自己主張と抑制に関する分類があります。

自己主張 自己抑制
日本 抑制 抑制
アメリカ 主張 主張
イギリス 抑制 主張

単純化による誤謬があったとしても、おおむね上記の分類は当たっているのではないか。
本文中には他に、日本人は身内には抑制するが身内以外には主張するなどありますが、それも含め納得感があります。

コロナ過で外国との物理的な行き来は減りましたが、テクノロジーの進化でボーダーレス化は進んでいます。
欧米が世界のルールを作っているとするなら、一定の主張は必要になる論法。

言わなくても分かると思っていたとか、阿吽の呼吸が世界で通じないのは、文化の違いから考えれば分かりますし、日本が察する文化であるなら「異文化間では伝わらないことを察していない」点がパラドックスです。
自分の視点は自分オリジナルなので、だれかに伝わる言葉で話すのは世界を見るまでもなく家族間でも同じ。

会社でも自分の要望を適当な言葉で、良いタイミングで表す人はうまいと感じます。
組織内の人事考課は最たる例ですし、プライベートでも同様。

日本人の特徴としてもう1点、世界とずれていると思うのが、意見と感情を分けて考えるのが苦手な人がいる。
自分と違う意見を聞くと、条件反射的に人格否定と捉えて感情的に反発するのは、ディスコミュニケーション。

Aの意見とBの意見があったとして、相手を言い負かすのを目的とするなら本末転倒です。
相手が子どもであっても、それぞれの意見のメリットやデメリットを一緒に考え、より良いゴールを目指す。

子ども時分には、自分の意見が通らないと泣く子がいます。
幼少期はそれも普通で、そこから社会での一般ルールや調和を学んでいく。

小学校でも出てくる「本当の友達は耳の痛いことでも言う」は、大人になると難しくなりますが正論です。

「なぜ、そう思ったの?」のマジックワード

子どもが話し出したら、最後まで聴くのは、いまの子育てのスタンダードになりました。
忙しいとつい「早くしなさい」と言ってしまい後で落ち込むのをだれもが経験し、そんなときと同じく深呼吸3回するくらいの余裕を持ってみる。

話を聞いてみて、親視点で間違っていると判断したなら、一緒に考えるか子どもに考えさせる。
「なぜ、そう思ったの?」は、マジックワードです。

子どもに当事者として、解決策を考え実行し、成功/失敗経験を積んでもらう。
そうして、たくさん経験して、自己主張と抑制のバランス感覚を養います。

多くを求めすぎてつぶれたり、求める量が少なすぎてボンヤリした結果にならないよう。
子どもが、等身大の主張ができる技術と精神を掴みとれるように。

ある東証プライム所属する企業Topが「経営者に必要な素養」について質問されたときの回答が以下です。
「組織全体を見渡し、運営や世情などをみて会社の方向を決める能力は必要です。
それ以外に、否定されたときに対するメンタルの強さも大事だと思っています。
誤解を恐れずに言うと、きちがいのような強さです。」

炎上マーケティングが平気な心臓を持っているなら良いですが、不適な主張は身を亡ぼします。
自分が超えたらマズイ境界線をみつつ、ギリギリのところで挑戦し続けられるなら、成長としては理想。

その境界線が分からないのが若いときです。
また、境界線を越えた先にしか、見えないモノがあるのも悩ましいことです。

さいごに

「あなたは泳げますか」と聞かれ、どのくらい泳げるか人それぞれですが「まあまあ泳げます」と答える。
「あなたは英語で会話できますか」と聞かれると「ほとんど使えません。」と答える。
英語にコンプレックスを感じる人のあるあるです。

僕の友人で、英語コンプレックス解消を目的として、アメリカで働いた人がいました。
渡米時はTOEIC500点未満だったのが、2年後の帰国時には800点を超えており、目標達成と言える結果でした。

渡米前、日常会話も自信がない状態で不安ではなかったのか、と僕は聞いてみました。
その人曰く「日本で何年も英語教育を受けているのでなんとなかると思ったし、実際なんとかなった。」

生存者バイアスですが、つかみ取ってきた一例です。