氷コーヒー的発想の卒業式

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育児・子供観察

もうすぐ、日本では卒業式シーズン。
2021年はコロナ過で縮小や中止もありましたが、今年2022年も外部環境は悪化のまま変わらず。
コロナ以前から卒業式が不要と考える人はおりましたが、その理由には納得できる内容も多い。
昔から続いている、の説明では納得度が低く、主役をもてなす発想は必要です。

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卒業式の中止は4.1%

2019年初頭に始まったコロナ過で、2022年1月のいまに至ってもさまざまな学校行事が縮小や中止になりました。
卒業式や入学式も影響をうけており、2020年卒業式の中止は少なかったものの、保護者不参加やオンラインにしたケースも発生。
以下、スタジオアリスのアンケート結果ですが、卒業式は4.1%が中止しています。


出典:学校生活と行事に関する調査(スタジオアリス)

コロナ渦中で卒業式を開催するなら、学校側は対策が求められます。
文部科学省に以下の指針がありました。


入学式、卒業式、始業式、終業式、修了式、開校記念に関する儀式、新任式、離任式等の実施に当たっては、具体的にどのような感染拡大防止の対策が考えられるか。

回答
入学式、卒業式、始業式、修了式、開校記念に関する儀式、新任式、離任式等を実施する際には、こまめな換気を実施する等の感染拡大防止のための措置をとったり、参加人数を抑えたり、式典全体の時間を短縮したりする等の開催方式の工夫を講じるなどの工夫を講じていただきたいと思います。

<感染拡大防止の措置>
・風邪のような症状のある方には参加をしないよう徹底
・参加者への手洗いや咳エチケットの推奨、可能な範囲でアルコール消毒薬の設置
・こまめな換気の実施
<開催方式の工夫の例>
・参加人数を抑えること(在校生の参加の取りやめ、保護者の参加人数を最小限とする、保護者を別会場とする等)
・会場の椅子の間隔を空けて、参加者間のスペースを確保すること
・式典の内容を精選し、式典全体の時間を短縮すること(祝辞の割愛、式辞等の文書での配付など)

出典:Q&A(学校設置者・学校関係者の皆様へ)(文部科学省)

「開催するなら、綿密な計画を立ててね」と無言の圧力を感じます。

卒業生全員に、卒業証書を手渡すと時間がかかる。
代表1名に渡す学校、全員に手渡しするために卒業生が歩く通路にテープをはり最短で迷わず行けるようにして回転率を上げるなど練習する学校、いろいろ出てきています。

その中で開催しない決断をしたとして、それはだれが責められることでもなく。
各学校が異なる状況の中、苦渋の決断をした校長の判断は尊重されるものだと僕は考えています。

アメリカのお話ですが、ドライブスルー方式の卒業式も出てきている。
保護者が運転する車から、卒業生が卒業証書を受け取るために降車、証書を受け取った後すぐに乗車して移動する。

何にせよ、コロナ過以前ではなかった状況となりました。

懇親会や卒業旅行も中止やオフライン化

以下は大学卒業生が対象の、2021年3月に行われたアンケート結果です。


出典:2021年大学の卒業/卒業旅行に関する調査(株式会社KIRINZ)

左のグラフ内では、卒業式の開催可否質問ですが、中止の解答がありません。
2020年3月は中止したが、その時の経験も活かし2021年3月は開催に傾いた学校はあります。
「その他」が中止なのかそれ以外なのか分かりませんが、おおむね2021年3月は開催方向に動いています。

その中でもオフラインで開催が最多の61.3%。
オフラインとオンラインの両方を足すと79.3%と、現実での卒業式が約8割。

オフラインのメリットとしては、参加者が場所に縛られない点はあります。
地方在住の親や祖父母が移動せずに自宅から中継を見られるのは、コロナ終息後も継続すると喜ばれるサービス。
リアルで参加できる人はリアル、都合がつかない人はオンラインで良い。

右のグラフは懇親会の開催状況で、64.9%と約2/3が中止と一番多い。
いまの若者はお酒を飲まない人が増えていることから考えると、喜んでいる人もいそうです。


出典:2021年大学の卒業/卒業旅行に関する調査(株式会社KIRINZ)

76.6%が卒業旅行に行っていません。
原因を上げてみます。

・集団で旅行する時期ではないと判断
・コロナ過で海外に行くのはハードルが高い
・コロナ過でアルバイトが減ってお金がない

卒業式遂行日は個人では移動できませんが、卒業旅行は延期をできなくもない。
しかし、仮に2年後に集まってリベンジ卒業旅行となっても、微妙な空気が流れるとも想像できます。
社会人になって、長期間の休みを複数人が同時に取得する難しさも難易度を高めます。

状況に適応していくしかないので、各所選択していくだけですが、コロナ以前の卒業式およびその周辺イベントの参加率が大きく変わっています。

服飾業界も低調

ここからは卒業式で着る服について、提供する側についてです。


出典:紳士服業界(業界動向サーチ)
出典:着物業界(業界動向サーチ)

スーツにしても着物にしても卒業式需要が占める割合はわずかですが、コロナ直撃業界としても斜陽産業としても良く上がる業界らしく、2020年の数字は減少しています。

大学生の男性がスーツを初めて着る機会は、一般的には成人式。
その後、就職活動で着るようになるため、卒業式で新調するかは人によります。

ドレスコードが緩い時代でもあるため、就活スーツと卒業式スーツも兼ねてもおかしくない。
学費が上昇して仕送りやアルバイト機会が減れば、収入は減る。
着まわせるスーツを1着買って使い倒すのは、コスパ思想が浸透している若者世代とマッチします。


出典:和服に関する支出(総務省統計局)

棒グラフが着物を着るための費用で、右肩下がりなのは耳タコなので割愛します。
グラフ内、右軸の折れ線がレンタル割合で、2002年が11.2%だったものが2018年は42.5%。
上のグラフは2018年までの情報ですが、いまはさらにそれが加速していると予想します。

2022年1月現在、着付けサービスのサイトをいくつか見たのですが、卒業式が開催されなかったら全額返金という記載がそれなりにある。
サービス提供側も悩ましい状況が続いています。

心理的な区切り

学校教育法では、学校に卒業式の開催義務はなく、卒業証書を授与する義務が課せられています。

第五十八条 校長は、小学校の全課程を修了したと認めた者には、卒業証書を授与しなければならない。
第七十九条 第四十一条から第四十九条まで、第五十条第二項、第五十四条から第六十八条までの規定は、中学校に準用する。
第百四条 第四十三条から第四十九条まで(第四十六条を除く。)、第五十四条、第五十六条の五から第七十一条まで(第六十九条を除く。)及び第七十八条の二の規定は、高等学校に準用する。
第百七十三条 第五十八条の規定は、大学に準用する。

出典:学校教育法施行規則(e-Gov法令検索)

卒業証書を渡すための儀式として、卒業式が日本ではある。
ネットを眺めていると、卒業式不要論があり理由として「軍隊っぽい」「練習にそれなりに時間を使う意味が薄い」が多い。

この2点について、僕もおおむね同意です。
生徒全員の整った動作を、大人側の満足のために、生徒に強要していないか。

手綱を緩めるとグダグダになるという物言いがありますが、いまの若者は必要以上に周囲を見て、合わせる人が多い。
ルールがあればそつなくこなす人たちには、ルールを半歩はずれるくらいを、学生時代に経験しなくていつやるのか。

葬式もそうですが、過度の厳粛さ他人に求めるものも同じく、場を壊さない程度の自由は個人にゆだねてよいと思っています。
お葬式の時、お坊さんがお経をあげている時に雑談はNGですが、涙を流す必要もなく故人はオモシロいヤツだったなとみんなで笑っているならば、故人と良い友達関係の人だったと感じます。

スティーブ・ジョブズ 伝説の卒業式スピーチ」のスピーチ自体は良い意味で特異な例ですが、この動画の中でも参加者が自由に拍手したり、口笛を吹いたりしている。

卒業式の主役は卒業生で、開催側は裏方です。
卒業式は、子どもが先生や親にお世話になった感謝するイベントという物言いがありますが、筋が悪い。

子どもが関係者に感謝するかは子ども側が決めることで、強要する大人がいるなら子どもを信用しておらず、そこまで心を育て上げられなかったことになります。
学校が心を育てる場所とするなら、主役側が何を求めていて、ホスト側はそれを汲み取って模範を示しているか。

アイスコーヒーを飲む時、水を凍らせた氷を入れると、だんだん味が薄くなって美味しくなくなります。
薄くならないために、水で作った氷ではなく、アイスコーヒーを凍らせた氷を入れる。
冷たい飲み物には水の氷と固定観念で発想するのではなく、おいしく飲んでいただくためにどう配慮するか。

卒業式自体は、開催した方が良いと僕は考えています。
それは、心の区切りとしての役目を持っていると思っているため。
通過儀礼と言っても良いですが、いまいる場所から次の場所へ散会していくマイルストーン。

感情を抑えるのがいまの主流だとするなら、卒業時に仲の良かった友達と離れていく自分の心の動きを知る、人生の中でも数少ない機会の1つが卒業式です。
社会人になれば、友達(知人?)との別れで感傷的になることは少なく、社会人前の各学校卒業時の期間限定のイベントです。

さいごに

卒業式の文字の「卒」と「業」について。

「卒」を大辞林では、「おわる」「おえる」の他に「死ぬ」「下級の兵士」などがあります。
「学業を終える」が、卒業式に当たります。

「業(ごう)」はコトバンクでは以下。

サンスクリット語のカルマンkarmanの訳語。もともと為(な)すという動詞からつくられた名詞であり、したがって行為を示す。しかし一つの行為は、原因がなければおこらないし、また、いったんおこった行為は、かならずなにかの結果を残し、さらにその結果は次の行為に大きく影響する。その原因・行為・結果・影響(この系列はどこまでも続く)を総称して、業という。

出典:業(読み)ごう(コトバンク)

勉強、友達、社会性、いろいろな行為が学校では発生します。
それらの行為の結果、所属している学校を終える。
親の勝手な希望ですが、子どもには各学校で良い失敗を含む良い行為を積み上げた結果、良い未来につなげてほしい。

卒業式に臨む子どもの背中を見て、いつの間にこんなに大きくなった、と思えるか。
それは、自分が子どもに良いサポート(行為)ができたかの結果です。