ベルマークはここ20年で半数以下

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育児・子供観察

一般認知度が高く、子どもの頃たいていの人が集めたベルマーク。
近年の集票点数を見ると、下り坂です。
ベルマーク集計作業をやりたくない拒否意見はよく聞く話で、そこに非効率な集計作業があることは否めません。
子どもにとってベルマークは寄付経験としての意味がありますが、人が集まっての集計作業は時代的にハードルが高くなっています。

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ベルマークは半世紀以上の歴史がある

最初にベルマークの成り立ちや仕組みなどを、箇条書きします。

ベルマークは公益財団法人ベルマーク教育助成財団が運営
由来は「国内外のお友達に“愛の鐘”を鳴り響かせよう!」からきている
ベルマーク運動が始まったきっかけはへき地支援
朝日新聞社創立80周年記念事業として1960年から始まった
すべての子どもに等しく豊かな環境のなかで教育を受けさせたい
PTA単位で参加、PTAが学校長の承認を得て申請
全国約27,000の団体(幼稚園・保育所(園)・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校、大学等)が参加
基本的にベルマーク1点が1円に換算
集めたベルマークは預金方式で貯蓄されていく
貯蓄したベルマークポイントで学校備品が購入できる
代金の10%がへき地学校や被災学校への支援となる
協賛会社の商品にベルマークがついている
ベルマークの代金は協賛会社が出している
ベルマークで購入できる備品は協力会社の商品
協力会社は100社弱
年2回発行されるお買い物ガイドの中から商品を選ぶ
ベルマーク自体は主に学校で取集、子ども達が持ち寄り学校設置の回収箱などに入れる
集まったベルマークをPTA(親)が協賛会社・点数ごとに分類・集計する
切り取ったマークを台紙(裏紙など)に貼り付け「会社ごとの専用の袋」に入れ財団に郵送

1960年創立なので、2023年現在、ベルマークは63年の歴史があります。
日本全国、大人も子どももたいていの人が知っており、かつ経験しているベルマークの知名度は高いと言えます。

ベルマーク集票点数はここ20年で半数以下

公益財団法人ベルマーク教育助成財団に、ポイント数推移情報がありました。
ベルマークを集めることを集票と言い、集まった点数なので集票点数と呼びます。

ベルマーク 集票点数 推移
出典:月間記録BOX(ベルマーク教育助成財団)

途中が抜けているのは、情報元になかったためです。
とは言え、知りたかったのはベルマークの隆盛なのでこれで十分です。

ここ約20年の推移ですが、大きく減少しています。
2001年と2022年を比べると44%で、減少率56%と半数以下になっています。

2001年から2022年期間は、日本では少子化が進んでいる時期です。
この期間の子どもの増減率は89%、ベルマーク集票率の増減率が44%だったので、少子化割合よりベルマーク集票率の方が減少しています。

子ども1人当たりのベルマーク集票点数
出典:月間記録BOX(ベルマーク教育助成財団)
出典:日本の将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)

子ども1人当たりのベルマーク集票点数が上記です。
2001年から2022年期間の、一人当たり集票点数の増減率は50.0%。
子どもが減る速度よりベルマーク合計点数の方が減っているので、1人当たりの集票点数は下がりのは当たり前です。

小学校参加率は72%だが参加学校数は減少ステージ

ベルマーク教育助成財団にある、参加学校数と参加率の2021年の情報が以下です。

ベルマーク 参加学校数 参加率
出典:2021年度報告(ベルマーク教育助成財団)

棒グラフの参加学校数を見ると、1960年代に一気に伸長、2007年あたりが最盛期、それ以降微減です。
円グラフの参加率を見ると、小学校72%、中学校61%、高校24%。
小学校の2/3以上が参加しています。

2000年以降、参加学校数は大きくは増えても減ってもいません。
にもかかわらず、1つ上の段落で見た通り、ベルマーク集票点数は半数以下になっています。
集票点数の下火傾向から予想するに、ベルマーク集めに積極的ではなくなる、あるいはすでにベルマーク集めを止めてしまった学校もありそうです。

ベルマーク収集時のメリットデメリット

ベルマーク収集についてメリットデメリットを上げてみます。

▼メリット
・子どもたちにとって身近な(初めての)寄付的行為
・母親にとって集計作業のために集まることによる関係性構築、雑談の場
・地域にベルマーク収集依頼することで地域と学校(PTA)との親密度が高まる
・国内外問わず学校への寄付行為(寄付先が明確)

ベルマーク教育助成財団のサイトにある動画には、集計作業を楽しみにしているご婦人が出ていました。
この動画のご婦人が本当にそう思っているかは分かりませんが、集まりや会話が好きな人にとっては、ベルマーク収集作業時のおしゃべりは、良い時間だろうと想像します。

▼デメリット
・時間制約
・物理的に集まって作業する
・アナログ作業
・強制感
・PTA活動に関わりたくない人にとっては苦痛
・費用対効果が悪い

以下、ベルマーク集票点数と共働き割合のグラフです。
折れ線グラフは、同じ年の共働き割合で2022年は70.1%です。

ベルマーク集計点数と共働き割合
出典:月間記録BOX(ベルマーク教育助成財団)
出典:専業主婦世帯と共働き世帯(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

ベルマークの集計作業がすべて女性(ママさん)だけとは言いませんが、多分女性が99.9%だとして。
働いているママさんにとって、平日ならベルマーク集計日は少なくとも半休をとる必要があります。
集まって手作業で分類するが、集まったポイント数を冷静に考えると費用対効果が低い。

ベルマーク集計作業は、子ども達が持ち寄ったベルマークを「メーカー」と「点数」別に分類する必要があります。
申請時、メーカー別封筒に入れるためで、その封筒に「1点〇枚で合計〇点」、「2点〇枚で合計〇点」と点数別に記載していきます。

仕訳にどの程度、時間がかかるのか分かりませんが、架空計算してみます。
ベルマークをきれいな形に整えるために、全部ではないにしてもハサミを使うこともあるとします。
一部のベルマークにハサミを入れる時間+分別時間+封筒記入時間など。
これらをザックリ1枚10秒とします。

ベルマークが10,000枚あったとして、10,000枚x10秒=100,000秒。
100,000秒は27.7時間なので28時間。
時給1,000円のパートに出たとして28,000円。
平均ベルマーク点数が3点なら、30,000点(30,000円)なので少し勝ち。
平均ベルマーク点数が2点なら、働いた方が時間帯効果が高くなります。

ちなみに、ここには事前準備や後片付け、集計に参加する人たちの移動時間は含まれていません。
実際のところどうなのかは分かりませんが、金額だけの単純比較ならたぶん働いた方が良い判定になります。

また、ベルマークを受け取った財団側でも手作業確認があると予想できます。
封筒に記載されている数字の枚数が、中に含まれているのかの確認、これもコストです。

時代は超個人主義に傾いており、不用意なコミュニケーションを避ける人たちが増えている。
踏み込んで言うと、リスク回避思想も含め積極的に人と関わらない。
そういう人はベルマーク集計に強制出席させられるくらいなら、現金500円出して終わりにしたいという意見はおかしくありません。

全家庭が現金500円を寄付したなら、ベルマーク集計がこれにかなうはずもなく。
実際には、毎月500円強制徴収するのはハードルが高く、よほどの理由がないとできませんが。

近年はWeb Bellmarkもある

手間削減が目的なのか分かりませんが、いまはwebベルマークがあります。

Web Bellmark

上記URL経由でYahooショッピングやアスクルなどでEC利用すると、一定の割合が自動的にベルマークに寄付される。
これであれば、集計コストがほぼゼロなので、圧倒的に手間は削減されます。
そしてこのWeb Bellmark、ポイントが大好きな現代人にもマッチしている。
ちなみにこの場合、PTA経由ではないので、個人寄付になります。

また、集計工数削減策の1つの見本として、アメリカの「Box Tops」も参考になります。

Box Tops

やっていることは日本の物理的なベルマークと同じですが、違うのは種類が1つのみ。
10セントのマークしかなく、これであれば集計は圧倒的に楽になります。
日本のベルマーク協力企業が100社弱いて、点数も形もばらばらな現実を考えると、フォーマットが1つなのは集計時間が雲泥の差になります。

ここまでをまとめます。
・ベルマークは60年以上前からいまでも続いている
・ベルマークはここ20年で44%まで減少
・1人当たりのベルマーク集票点数はここ20年で50%
・小学校の参加率72%、中学校の参加率61%
・参加学校数は近年頭打ち
・単純な費用(時間)対効果で考えると働いた方が良い

できるななら子どもに寄付経験させたい

僕は小学校の頃、ベルマークを集めていました。
集めていたことはクリアに思い出せますが、どういう気持ちで集めていたかはボンヤリしています。
想像するに、自分の学校やへき地の学校にいるだれかに役に立つ、誇らしい「寄付」行為と考えていたような気がします。
自分の懐は痛まない点も重要だったように思いますし、友達よりたくさんベルマークを集める競争心もありました。

自分の経験も踏まえ、僕はベルマークは、子ども達にとって最も身近な寄付行為だと思っています。
それでも、僕は今時点でベルマークを「続ける」か「止める」の、どちらかしか投票できないとしたら「辞める」に1票入れます。
昭和時代のレガシー遺産であり、時代に沿って変化しきれなかったレッドリスト。

ベルマークを止めてしまった場合、子どもの寄付機会が減ることが最大のマイナスポイントとも考えています。
他の寄付機会と考えると、赤い羽根共同募金やユニセフあたりですが、頻度や能動的な行為と言う面から言ってもベルマークが最右翼。
これ以外の寄付と言えば、昨今の災害が増えた結果の、災害義援金の出番は多くなっています。
子どもが災害義援金を贈るのはハードルが高いので、家のお手伝いを何回したら親が1000円親が募金するとか。

あとは、クラウドファンディングが身近になりました。
クラウドファンディングは使う目的が明示されているので、寄付側には何に寄付したか分かりやすい。

ここまで、子ども時代に寄付経験を積む機会を模索してきましたが、小中高学校時代に寄付経験がなかったからといって、何か影響があるかと考えても何とも言えず。
ベルマークであっても全員積極参加者とは思えず、不参加の人や少しだけ参加であるケースは容易に想像できます。

そのうえで、寄付経験が子ども時代に「あった方が良い」か「なくてもかまわないか」に投票するなら、僕は「あった方が良い」に入れます。
ただ、寄付経験だけを考えるなら、ベルマークではなく身近なボランティア(時間の寄付)が、リアルに感じられて良いと考えています。
時代は、先ほどのクラウドファンディングや推し活の投げ銭(ライブ配信で有料アイテムなどを購入)などの選択肢が増え、寄付は以前より身近になっています。

自分ができる範囲でだれかの役に立つ経験は、生きていくうえでずっと自分の横に存在します。
それは、お金を寄付する以外に、時間の寄付や、気持ちとして寄り添う姿勢も同義と考えて良いもの。

寄付行為が子どもにとって他者貢献経験を積む機会とするなら、たいていの親は賛成するのではないか。
子どもが寄付を身近に感じるような環境を作るのは、親側の役目です。

さいごに

以前、大英博物館の入場料金は基本無料で寄付制のお話を以下の記事で書きました。

寄付は円環
日本人は寄付する人が少なない、というのは思い込み。 3割~4割強の人が寄付しているデータからは、それなりの人が寄付意識があるようです。 年々、寄付率が増加いており、それは少しずつ社会浸透しているようでもあり。 親が実際に寄付し、それを子ども...

大英博物館はじめ、イギリスの文化施設が基本無料の理由は「すべての人が等しく文化に触れられるようにする」思想。
階級社会で、下層階級が身近にあるイギリスらしい発想です。

文化施設側の収入源は、国からの補助金や有料特別展、海外への展示物の貸出し、おみやけ屋やレストランなど。
補助金だけではなく、自己努力も求められているのも現代らしい。

以前、僕は大英博物館に行ったとき、このシステムを知ったうえで少額寄付して入場しました。
そもそも、基本寄付制なので妥当な金額はありませんが、自分の出せる範囲でゼロユーロ~数十ユーロを出す。

性善説にも置き換えられそうなシチュエーションですが、子どもの頃から寄付が身近であれば、ソワソワする気持ちにはなりません。