早送り視聴する動画を選別する時代

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育児・子供観察

動画を早送りで観る。
テレビとは別に、スマホ普及と通信環境が整った結果、いまは日常的に動画視聴機会が増えました。
サブスクリプションサービス普及もその要因の1つで、どこかのサービスに加入するだけでとてつもないコンテンツボリュームが見られます。
見続けるには微妙だが、途中まで見たのでクライマックスは知りたいけれど、普通速度で見るほどでもなく1.5倍速などでストーリーを追いかける。
クリエイター側に失礼と感じつつも、コンテンツを噛みしめるのではなく、消費する人は増えています。

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サブスクサービス市場規模は5年で1.4倍

動画視聴環境について現代は、YouTubeやSNS、サブスクリプション(定額)サービスが普及しています。
YouTubeは娯楽のみならず企業や官公庁も使うプラットフォームにもなり、SNSに自分で動画アップする人も多く、SNSでもニュースサイトでも広告動画は日常風景になりました。
若者のテレビ離れの一因、サブスクリプションサービスの伸長も、しばらく続く予測になっています。

サブスクリプションサービス国内市場規模(6市場計)推移・予測
出典:サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2022年)(矢野経済研究所)

上記、矢野経済研究所の予測データですが、2024年予測でもまだ右肩上がりで続いています。
2024年度予測では1兆2,422億円で、2020年度比較で3,730億円増、142.9%です。

2022年現在の動画配信サービスのトップ「Netflix」が、2022年第1四半期、同社は20万人の会員純減ニュースがありました。
興味がある人はすでにどこかのサービスに加入済み、頭打ち感もでてきていますが、上記矢野経済研究所予測は動画だけではなく、食品宅配や家事サービスなどのサブスクリプションサービス全体という点は留意点です。

利用しているサブスクリプションサービス・動画定額配信サービス
出典:サブスクリプション・サービスの動向整理(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

上記は「動画」に限定したサービス利用率です。
全体平均78.8%と、8割弱。
ここまでくると、大半の家庭に動画定額サービスが普及していると言える状況です。
年代別では、若い世代ほど、利用率は高い結果です。

たまの倍速も含めるなら倍速視聴者は1/3

動画を視聴する際、早送りする人がいます。

動画配信サービスで動画を視聴する際に倍速再生(早送り)することはありますか?
出典:する?しない?動画の倍速再生2,400人に聞いてみた!(マクロミル)

「いつも倍速再生」から「たまに倍速再生」まで、倍速視聴する人の全体平均は33.1%。
約1/3の人が、倍速再生しています。
年代別にみると、若い人の方が倍速利用率が高い。

動画配信サービスで動画を視聴する際にどのような動画を倍速再生していますか?
出典:する?しない?動画の倍速再生2,400人に聞いてみた!(マクロミル)

どのようなジャンルの動画を倍速再生しているかの結果が上記です。
1位のドラマは、何話か続くものとして総視聴時間が長い。
2位の映画は、1本あたり2時間前後として、1本の時間が長い。
長時間のものを、短縮して観たい意向の結果です。

倍速再生すると、映像も音声も早くなります。
音声については、音を早く聞くトレーニングをする「速聴」ありますが、これは脳の情報処理速度、集中力、理解力、記憶力の向上を目指す脳力開発技法です。
「速聴」については、専門家から以下の懸念もあります。

人間の認知機能では、処理できる能力というのがある程度決められています。倍速で視聴すると、見られる範囲が画面のなかの一部など限定的になってしまいます。そうすると、役者が演じている細かいやりとりや表情の違いは、やはり、つかみにくくなってくると思います。

出典:動画を倍速で見る人が増えている!? これって本当に理解できている?弊害はない?(株式会社 静岡新聞社)

車の速度が上がると、視覚で処理できる量が小さくなり、視野狭窄のような状態になるのと同じ。
30km/hの速度では周囲の景色がはっきり認識できるが、120km/hの速度では横に何があるかは脳が処理できない。
映画製作者側の観点からみるなら、「間(ま)」が短縮されて意図が伝わりにくいという点も聞きます。
告白やプロポーズするシーンで、勇気を出して言葉にするとき、言葉がつまって数秒の沈黙になる。
それは無意味な余白ではなく演出ですが、その温度が伝わらなくなるのは頷けます。

仕事に関する動画は早送りに適した動画

僕は仕事でもプライベートでも動画を観ますが、最近仕事の動画はほぼ早送りで見ています。

使っているツールとして、ブラウザChromeの拡張機能の1つ「video speed controller」。
1.1倍、1.2倍と、自分の好みの速度に早送りできるもので、サブスク動画であってもYouTubeであっても、同じく使えます。

「video speed controller」を使って、セミナー動画、ツール動画、社内動画など、たいていのものは早送りで見ている。
プライベートで観る映画やドラマとは違い、仕事で見るものはその内容が理解できれば良く、映画やドラマの「間(ま)」は不要です。

社会全体でリモートワークが普及し、企業セミナーも軒並みオンライン化しました。
オンラインセミナーでは、参加者が後から動画視聴できるような配信サービスも増えました。
結果、リアルタイムでは2時間かかるセミナーが、2倍速なら1時間で見終えられる。

私企業だけでなく、公的機関もYouTubeを活用する時代です。
新たな制度を説明する動画をアップしていたり、その制度について過去に開催したセミナーも見られる。
2022年現在の例で言うと、インボイス制度が2023年から開始されるにあたり、国税庁がYouTubeに多数の動画をアップしています。

ビジネス動画をネット経由で早送り視聴することで、短時間で内容取得できる以外にもメリットがあります。
自分の好きなタイミングで見られ、一時停止や中断/再開が可能。
分からなかった点は、少し戻って再生でき、不明点が少なくなる
多忙な人ほどまとまった時間がとりにくく、隙間時間で細切れで見られるのは優位点です。

デメリットは、質問がリアルタイムでできない点が思いつきます。
解決策は、主催者にアンケートやメールで問い合わせるになりますが、ここにはタイムラグが発生します。

思い返してみると、物理的にどこかの場所に集まってのセミナーでは、行き返りの時間、何分前に会場入りするかなど、非効率と感じるものが多い。
セミナー中の途中退席もしにくく、隣の人への配慮も必要。
オンラインセミナーは、これらの不便さから参加者を解放してくれます。

こうした点から、ビジネス現場こそネット動画視聴が適しており、かつ早送り視聴はマッチします。

標準と早送りを意識して選択

子どもが言葉を選んで、たどたどしく自分の言いたいことを話している姿。
親はどっしり待ちモードで、口をはさんではいけないシーンです。
子どもの頭の中で、持っている語彙の中から適当なワードを選択しているのが、絵に浮かぶような微笑ましい。

小さな子どもは、主語や状況説明が抜けていて、何を言っているのかそのままでは分からないことも多い。
そこに、質問形式でいくつかの投げかけをすると、その状況を補足してくれる。
これは話し手として気を付ける点、相手と情報共有できていない事を前提に話す経験になり、自分の言葉を相手に受け取ってもらう良いトレーニングです。

ここで、倍速視聴のように子どもの話を急かすのは、いまの子育て世代は悪手なのは標準になりました。
「聞く」ではなく「聴く」ときの速度主導権は、話し手側にあります。

それとともに、効率主義や切り捨て明確化は、現代人の必須要件になりました。
時間を何につかうか、必要なモノにより時間を割きたいと考えた時、動画視聴の早送りは1つの手段です。

1つ上の段落では、ビジネスシーンでは倍速視聴がマッチしていると書きました。
ビジネス動画に求める点として、「短時間」で「分かりやすい」内容になっているか、これは効率化の追求です。

この「分かりやすい」は、時流から見ると、気を付けないといけない点でもある。
大枠を掴んだりとっかかりとしてであれば分かりやすさも良いですが、反面、表層的な部分だけおって分かった気になってしまう。
時間が足りない現代が生んでいる「5分でわかる」とか「日本一簡単」などのフレーズはもろ刃です。
こういったものは、何かを生み出すときには片手落ち、大量消費用かつ安価の普及品は作り出せるのかもしれませんが、人の心を揺さぶるものを作るのであれば自分の中で深く潜る必要がある。

「効率的」も「深く考える」も、適宜使い分けるのが現代流です。

子どもや部下と話すとき、効率を追い求めるものでもなく。
一緒に深く潜ることで、自分の側の気づきもある。
いつも早送り視聴するのではなく、良いものは通常速度で視聴する。
その良いものを選べる選球眼を磨く。

コスパ発想ばかりで、早送り視聴的な生き方は、現実世界では危うい状況になります。

さいごに

現代の子どもは動画を受け身ではなく、選択して観ています。
サブスク動画でもYouTubeでも、少しでもつまらないとスキップしますし、メイン動画を横に流しながら、次、何を見るかを選んでいる。

若い世代が、こうしたスタイルで動画視聴している。
彼らがいずれ、大人になって社会のメインプレーヤーになったころ。

受け身視聴で、内容の薄い地上波テレビ番組は、いまより冬の時代は確実です。