教員志望者は減少しているが教員総数は変わっていない

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育児・子供観察

教員数推移は小学校から高校は減少していますが、大学は増加しています。
平均年齢で見てみると、たいていは高齢化で一部若返っている分類もある。
その理由としては、2022年は公立の小学校から高校で大量の定年退職者が出ているためです。
これが、世の中の教員不足ニュースの裏付けにもなっています。

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教員数は大学を除いて減少

最初に「幼稚園」から「高校」、「特別支援学校」の教員数推移が以下です。

教員数推移 幼稚園・小学校・中学校・高校
出典:学校教員統計調査(文部科学省)

「高校までの」教員数は減っていっています。

「幼稚園」の教員数を1977年と2022年を比べると、-7,720人で91.7%。
「小学校」の教員数を1977年と2022年を比べると、-41,379人で90.3%。
「中学校」の教員数を1977年と2022年を比べると、-13,452人で94.4%。
「高校」の教員数を1977年と2022年を比べると、-11,417人で95.0%。
「幼稚園」から「高校」まで、1977年と2022年を比べた増減率平均は92.8%。

上記グラフ内の薄い水色が「特別支援学校」で、データは2007年からです。
「特別支援学校」の教員数を2007年と2022年を比べると、+15,373人で126.2%。
「幼稚園」から「高校」までは減少していましたが、「特別支援学校」のみ増加です。

教員数推移 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校
出典:学校教員統計調査(文部科学省)

上記は「大学」「短大」「高専」「専修学校」の教員数推移が上記です。

「大学」の教員数を1977年と2022年を比べると、+91,960人で195.3%。
「短大」の教員数を1977年と2022年を比べると、-8,980人で43.2%。
「高専」の教員数を1977年と2022年を比べると、+395人で110.7%。
「専修学校」の教員数を1977年と2022年を比べると、+24,911人で265.1%。

「短大」のみ減少、「大学」と「専修学校」は大幅増加しています。

教員平均年齢 幼稚園・小学校・中学校・高校
出典:学校教員統計調査(文部科学省)

「幼稚園」から「高校」、「特別支援学校」の教員平均年齢推移が上記です。

「幼稚園」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+7.8歳。
「小学校」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+2.2歳。
「中学校」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+3.1歳。
「高校」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+5.4歳。
「特別支援学校」の教員平均年齢を2007年と2022年を比べると、-0.1歳。

「幼稚園」「高校」は右肩上がり。
「小学校」「中学校」は一度上がって、その後下がっていまに至っています。

教員平均年齢 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校
出典:学校教員統計調査(文部科学省)

上記は「大学」「短大」「高専」「専修学校」の教員平均年齢推移が上記です。
全区分とも右肩上がりです

「大学」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+6.7歳。
「短大」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+5.1歳。
「高専」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+5.7歳。
「専修学校」の教員平均年齢を1977年と2022年を比べると、+8.1歳。

教員不足数は2,558人、不足率は0.31%

ここ数年、教員不足のニュースを見聞きします。
以下、小学校から高校までの不足情報です。

学校種 学校に配置されている教師の数(A) 学校に配当されている定数(B) 不足(C) 不足率(C/B)
小学校 378481人 379345人 1218人 0.32%
中学校 217856人 218641人 868人 0.40%
高等学校 159368人 159576人 217人 0.14%
特別支援学校 78309人 78517人 255人 0.32%
合計 834014人 836079人 2558人 0.31%

出典:「教師不足」に関する実態調査(文部科学省)

教員が不足している人数は2,558人、不足率は0.31%。
教員が一番足りていないのは小学校で1,218人。
割合(不足率)で見た時、一番教員が足りていないのは中学校の0.40%。

2022年 都道府県別 教員不足数 小学校
出典:「教師不足」に関する実態調査(文部科学省)

都道府県別の小学校の不足人数情報が以下です。
全国平均は18.97人。
不足人数0人の都道府県は、山形、群馬、東京、新潟、和歌山、山口の6県。
最も小学校教員不足の県は千葉の91人です。

2022年 都道府県別 教員不足数 中学校
出典:「教師不足」に関する実態調査(文部科学省)

都道府県別の中学校の不足人数情報が以下です。
全国平均は13.87人。
不足人数0人の都道府県は、岩手、秋田、山形、東京、新潟、山梨、和歌山、高知の8県。
最も小学校教員不足の県は福岡の59人です。

公立の小学校から高校で定年退職が増えた

「幼稚園」から「大学」までの教員採用数が上記です。

採用教員数 幼稚園・小学校・中学校・高校・大学
出典:学校教員統計調査(文部科学省)

「幼稚園」の採用数を1977年と2022年を比べると、-6,593人で53.1%。
「小学校」の採用数を1977年と2022年を比べると、-250人で98.7%。
「中学校」の採用数を1977年と2022年を比べると、-451人で103.9%。
「高校」の採用数を1977年と2022年を比べると、-361人で96.0%。
「特別支援学校」の採用数を2009年と2022年を比べると、+564人で119.0%。
「大学」の採用数を1977年と2022年を比べると、+4,545人で168.1%。
「短大」の採用数を1977年と2022年を比べると、-690人で35.9%。

「幼稚園」と「短大」が、採用数は大幅減少しています。
小学校の採用数は「M字型」と特徴的です。

離職教員数 幼稚園・小学校・中学校・高校・大学
出典:学校教員統計調査(文部科学省)

「幼稚園」から「大学」までの教員離職数が上記です。

「幼稚園」の離職数を1977年と2022年を比べると、-2,831人で74.5%。
「小学校」の離職数を1977年と2022年を比べると、-2,115人で115.9%。
「中学校」の離職数を1977年と2022年を比べると、+3,623人で163.1%。
「高校」の離職数を1977年と2022年を比べると、+3,739人で158.2%。
「特別支援学校」の離職数を2009年と2022年を比べると、+695人で138.0%。
「大学」の離職数を1977年と2022年を比べると、+8,796人で286.8%。
「短大」の離職数を1977年と2022年を比べると、-236人で70.9%。

採用数同様、「幼稚園」と「短大」が減少しています。
小学校の離職数も採用数と同じく「M字型」です。

2022年 教員 離職の理由
出典:学校教員統計調査(文部科学省)

上記、2022年の教員離職理由割合です。

グラフ内青色が離職理由の「定年」です。
2022年、「小学校・公立」「中学校・公立」「高校・公立」が半数以上が定年退職です。
「私立」で多い理由は「転職(グラフ内オレンジ色)」で、どの区分も約3割程度です。

グラフ内の「病気」に含まれていますが、「精神疾患」による離職割合情報は以下です。
私立に比べ、公立が割合が高いです。
幼稚園・公立=4.7%
幼稚園・私立=3.3%
小学校・公立=3.7%
小学校・私立=2.6%
中学校・公立=3.2%
中学校・私立=1.2%
高校・公立=1.8%
高校・私立=1.6%

ここまでをまとめます。
・幼稚園から高校までは教員数減少、大学や専修学校は増加
・教員平均年齢はすべての学校分類で上昇
・教員不足数は2,558人、不足率は0.31%
・都道府県別に給与を比較すすると東京が高い
・教員採用数は大学と特別支援学校が増加
・教員離職数は幼稚園と短大を除いて増加
・2022年は公立の小学校~高校で定年退職が離職理由の最多
・精神疾患による離職は公立より私立が高い

AIが教員数不足を補う近未来

上記を調べてみて2023年現在、教員が人手不足かどうか微妙な位置だと感じます。
2022年の教員採用試験倍率は、全体平均で3.7、一番低い小学校でも2.5と、なりたい人が求人数を下回ってはいません。
有効求人倍率でみても、土木建築や介護サービスなどは、明らかに求職者が少ない状況です。

それでも、いくつかの都道府県ではまだ不足数ゼロですが、教員が足りないといっている都道府県の現場は多分深刻と予想。
いま厳しいと感じている都道府県の10年後や20年後、成り行き任せでは学校の統廃合などを強力に求められそうです。
簡単に学校の統廃合が許されればよいですが、少なくとも一般ニュースを見る限り、住民の反発熱量は大きい。

学校を統廃合できないのであれば、残った有効な手段を上げてみます。
①就業時間を延ばす
②やることを減らす
③教師やサポート役の人を増やす

①は案として出しましたが、教員の就業時間延長はただでさえ労働時間が長いと言われている現在では無理筋。
教員は給特法(給料の月額の4%を「教職調整額」として支給される)で、残業代固定でお金でも報いていない。

②のやることを減らすも、教科として英語やIT、マネーリテラシー、雑務も含め、増えてはいても減っているとは思えず。
1つの要因として、生徒数は昔に比べ減っています。

③の教員人員増加は、徐々に進んでいる面もありますが、マイナス要素として定年退職ピーク時期ではある。
他に部活の外注、外部専門家講師の授業などはありますが、それほど多いとは思えず。
一番は、若者の教員志望を上げ、そのために職業としての魅力を高めることになります。

日本若者会議にある、教師にならない理由の1位が「長時間労働など過酷な労働環境」です。
文科省や教育委員会から、意味の薄いアンケートを何度も書かされているのであれば、前時代感が否めません。
雑務はどんな業種にもありますが、いかに効率化を目指す点において、教育界の速度は遅いと感じます。

あとは教師の過酷な環境要因で良く出てくる、部活動監督のボランティア。
やりがい搾取と言われてもおかしくない、ブラック環境です。

さまざまな要因があるからなのか、教員採用率試験の競争率を見てみると下がっており、教師人気は下がっています。
それでも、教師は民間企業とは求めるものが違う業種であり、そこに魅力を感じる人は求人数より多い結果です。

この先、日本の少子化は既定路線です。
これは必要教員数も、漸減していきます。

僕は遠くない未来、IT(AI)による授業が普及すると思っています。
少なくとも模範解答を導き出すような授業であれば、生徒に教えるのは総合的に見て人間よりAIに軍配が上がります。

そうなると、現在の教師の立ち位置が変わり、授業全体をプロデュースしたり、勉強が遅れ勝ちや生活面で問題を抱えている子を重点的に見るなどになる。
実際、人間の教師が授業内容をメインで教える時間が不要になれば、別のタスクに充てられ労働環境改善につながる。
あるいはAIの出来によって、困った時だけ人間が介入するような状況になれば、一人当たりの教師が担当する生徒数を多くでき、人手不足解消になり得ます。

どこまでAIに授業を任せるかは、AIの進化というより、人間の許容度合いがハードルにはなりそう。
AIはこの先もとてつもない速度で能力を上げていくのは確定であり、親や教師などがそれが当たり前と思えるかというと、客観的判断をしない人も出てくるのは日本のお家芸です。
有名なマイケル・サンデル教授の「正義」についての討論形式の授業では、人間のファシリテートがより生徒を巻き込めるような気もしますが、そこは分かりません。

いま教員の仕事が大変で、それが人員不足によるものなら、現場が燃え尽きる前に対策は必要です。
どんな職種でも、未来が暗いイメージの未来しかイメージできないのであれば、就業希望者は減ります。

さいごに

AIが教師として生徒に教える時代になると、「どこまでAIの範囲」となるのか、するのか。
技術や家庭科の授業では、手順までは動画で表示できても、細かなサポートができなさそう。
美術もテクニック的なものは人間より幅広く教えられるが、判定をAIできるか、その判定に納得感があるか。

家庭化で作った料理を機械が判定するなら、味を分析する機械を導入すれば可能ですが機材が高価すぎる。
それに対し、味や絵のうまさなどの判定部分だけ人間が行うのは、1つの解決策です。

AIの強みは、安定的な質と客観性、不合理ではない点などがあげられます。
苦手な点は物理面やイレギュラー系で、物理面は無限にコストをかけられればたいていのことはできますがそれは非現実的。
結果、人間の教師とAI教師が協調して授業を進めるのは、容易にイメージできます。

その時、生徒たちは、AIとの向き合い方も学べそうです。