人にものをお願いするときに、うまく伝えられるか。
日本語が母国語で、相手が日本人でも、自分が思うほど伝わっていない。
事務処理的な内容であれば、一定の型を身に着けておくのは、有効な対策です。
また組織運営経験も、生きやすくなる知恵になっていきます。
個人情報にナーバスな時代
小中学校などのクラスの連絡網は、いまと昔は大きく変わりました。
昭和時代はスマホのような個人所有連絡先が存在せず、紙に印刷した全員分の電話番号があり、何かあればご家庭に電話する。
緊急時は電話順序が決まっていて、先生から数人の人に電話し、その先に数人が、次の人に回していく方式。
現代ではおよそ考えられない、個人情報管理のルーズさでもあり、おおらかさも感じます。
何せ、学校全員の住所や名前、電話番号が記載された『住所録』が配布されていました。
個人情報優勢の現代、現在のわが家の子どもの所属組織の場合、組織側から他人情報が出てくることはありません。
それでも毎年、クラスの父兄の中から役員が選出され、そこで連絡網的なモノが作られます。
と言っても、電話番号ではなく基本はLINEやメール。
電話する行為自体、ナーバスに感じられ、使われなくなりました。
ちなみに、上記で「父兄(フケイ)」という漢字を何気なく使っていますが、「父」と「兄」の漢字なのに、実際はママさんが大多数という矛盾。
男性の育児参加率は上がっていますが、女性側からみたらとても及第点には至っていないのにこの漢字というのが時代錯誤感を感じます。
話を元に戻して、子どもが所属したクラスで、数人選出された役員からの連絡網が今回の文章のメインの「どういう文面が適当なのか」です。
コミュニケーションコストを強いる文章
わが家の子どもが所属するクラスで、父兄から選出された役員は、どこまで正しい情報か分かりませんが、「仲良しママさん」数名。
この情報を僕の奥様から聞いたとき、最初に思ったのが、仲良しかどうかはどうでもよく、スムーズに運営が回ればよいのでは、ということ。
仲良しのメリットは忌憚なく意見が言えそうでもありますが、デメリットは相手に配慮しすぎるでしょうか。
そんな感想を僕が口にすると、僕の奥様から追加情報が出てきました。
どうも、昨年の役員に比べると、依頼された内容がフワッとしていて、受け手が迷う。
必要最低限もいまは重要で、膨大な情報が名が出こんでくる対策でもあります。
組織運営を経験すれば、だれでも嫌というほど「物事を依頼するむつかしさ」を体感できます。
小学校の学級委員から、部活の組織運営側、社会に出て会社組織や所属団体での役職での経験など。
他に近い経験と思ったのが、カスタマーサポート経験。
理不尽なクレームに頻繁に遭遇しているので、どういう投げ方をしたらよいかの経験値がたまる職種です。
僕も興味本位で、僕の奥様あてに届いた役員からの「クラス名簿依頼文」を、見せてもらいました。
依頼内容は「クラス名簿をつくるので、名前などのいくつかの情報と写真を送ってほしい」でした。
これだけの内容ですが、依頼文を読んでみて僕の奥様発言通りボンヤリした文章で、読み手にコミュニケーションコストを強いていました。
だれが何をいつまでにどうする、例外事項を付記して、これを必要最低限にまとめ、読みやすくする。
箇条書きを使ったり、冒頭に概要説明して、最後にリマインドなど。
業務連絡に等しい、単にこなすだけのタスクについては、ビジネスライクが時代的にも沿っていると感じます。
■時代はビジネスライク
わが家の子どもが所属している組織は、比較的働くママさんが多い状況です。
組織側運営もそれを意識しており、情報をウェブサイトやメールで提供してくれます。
僕が、決めるべきことは淡々と進めたい方針であり、これに沿ってこの組織を選んだ経緯はあります。
もちろん、子どもの特性・性格が最優先ですが、それ以外の要素として遅々と進まない状況が得意ではない。
この組織を選ぶときに、他の組織と比較するため、担当者の方々とのお話や、配布物、雰囲気などを見て確認しました。
入ってみてその感覚が正しかったとも思っており、僕の奥様から他の組織のお話を聞くと、いまだにウェブサイトすらないところもある。
イベントごとや持参物などのプリント配布すら、ままならない噂を聞くと、そうしたニーズを求めているご家庭にはフィットするが、ビジネスライクになっていない点は、やきもきしそうと想像しました。
一般論でしかありませんが、会社などで働き、報連相(報告・連絡・相談)を仕込まれるような状況を経験すると、アウトプット情報の精度が上がることは間違いありません。
「何を言っているのか分かりません」は社会では通用せず、一定の伝達能力が求められます。
余談ですが、この能力が求められるレベルは、着実に上がっていると感じます。
報告情報(文章)を、イロイロな場面で使い分けて、人にものを伝える。
いまの時代、厳しく叱ってくれる上司は少なくなったのはあると思いますが、一度基本を習得しておくと、今回の子どもの所属組織で文書作成の時にも、役立ちます。
どういう経緯で今回の『依頼文』が作られたかは分かりませんが、過去に会社組織等で一定の経験を積んでいれば、なさそうなレベルと僕は感じました。
人にものを伝えるむつかしさ。
コレが核になる要素で、相手の状況を想像し、手短に。
必要最低限にすることもいまは重要で、現代人が膨大な情報を浴びている対策でもあります。
人には伝わらないが前提
僕の勝手な願望ですが、わが家の子どもに身に着けてほしいものの1つに、「自分の考えは簡単には伝わらない」があります。
いかに相手に受け取りやすいボールを投げられるか。
投げたとしても、受け取ってくれるかは受け手次第で、間違って受け取られる可能性もあることを認識する。
かといって、補足をたくさん書いても、僕なら言い訳がましい文章だな、とトーンが下がります。
自分の名刺の裏に、自分がどんなことであなたのお役に立てるかを1文で記載するという、自分のコア業務を明確化するお話があります。
これは、人にものを伝えるときに近いものでもあり、重要な部分のみを抜き出して最適な言葉で表現する。
違う視点でいうと、いらない情報を極限までそぎ落とす。
友達と雑談するような時間は、まったく別ですが、時間が足りない現代人の単なる業務連絡的な内容の場合は、この要素が求められます。
受け手側で、僕がいまでも悩むのが、提案や質問をするかどうか。
僕は、全体最適化になったり、参加メンバーが納得してくれそうな内容なら投げ込みますが、枝葉の部分かもと思ったら止めます。
また、質問は微妙な問題で、「こんなこと聞いても良いのだろうか?」の結構な割合の日本人が抱く感覚ですが、自分が思った質問は、たいてい他のだれかもそう思っている。
セミナーなどの終わりに「最後に質問はありますか?」と問われ、質問している人の発言内容を聞くと、「それ、僕も聞きたかったんだよ」と思うことはあります。
とは言え、担当者と直接やり取りするだけなら、相手は1人で済みますが、全員が入っているLINEグループなどで投稿すると、入っている人全員に通知が行き、読む時間を取られる。
この辺のバランス感覚も、生きるうえで重要で、うまい発言をする人はどこでもいます。
これも子どもに身に着けてもらいたい親側の勝手な願望ですが、コレを学ぶのは難しく、ことあるごとに一緒に振り返る(ティーチング、コーチング、フィードバック)のが最短距離かと思っています。
さいごに
そもそも挙手制の役員をやってくださるだけで、感謝だと僕は考えています。
当番制で全員必ず1回はやらなくてはいけない状況なら、早めに終わらせておくお話はよく聞きます。
そうではなく、全員1回必ずでなければ任意であり、それなりに時間を取られる組織運営を、勝って出てくださる人は頭が下がります。
どのくらいの組織でそうしているのか分かりませんが、1年度の最後に役員以外の人がわずかなお金を任意で徴収して、お疲れ様プレゼントを役員に渡している、と僕の奥様から聞いたとき、良いなと僕は感じました。
その取りまとめ役の人も、お時間を使ってくれています。
何にしても、取りまとめ役の経験は、自分たちにも子どもにも、有用です。
1つのパターンですべての事象に対応できるものでもなく、ある程度の引き出しが、より良い状況を作りだす。
相手に伝える方法に正解はなく、時にまったく逆の立ち回りが適当な場面もあります。
それゆえ「自分はそういうのは得意」という慢心は、痛い思いをします。
日ごろ影が薄くとも、サラリと取りまとめ役のサポートができる人は、カッコ良いです。