久しぶりの知り合いに会った時に、その彼から「介護離職」の話を聞きました。
たしかに数年前から、一般的に「介護離職」というニュースを見聞きするようになりました。
その話を聞きながら、子育て世代と重なることもあるネタだと感じたお話です。
いまIT業界にも訪れている介護問題
以前一緒に働いていた同僚と数人で集まって食事をした時のこと。
その中の一人が、雑談の中で口にした言葉が以下。
「ウチの会社、いま介護離職対応で大変なんです」
彼は30代前半。
しかし彼の会社は40歳以上が比較的多くいる、IT業界でも老舗の部類です。
その40歳以上が親の介護で離職が相次ぎ、会社として対応に追われているというのです。
製造業やサービス業の大手企業はすでに介護問題は現実問題。
それなりの制度も考えられていると思います。
しかしIT業界は平均年齢が比較的若い。
介護問題に直面しているところはまだそれほど多くはないと思います。
いよいよIT業界もそういう時代になったのだなぁと、感慨深く聞いていました。
横道に逸れますが「社歴の長い社員を引き留めるのか」という問題があります。
メリットはすでに会社のことを知っていて、社風も受け入れているので手がかからない。
デメリットは若手が成長しない、形だけ役職、窓際族当たりでしょうか。
それでもいまは「人手不足」という時代です。
契約社員で一時期の過渡期を乗り切る、というのもどんどん難しくなっている時代。
契約社員の監督役である派遣会社のエージェントの口からも「人の確保が厳しい」という話を聞いています。
何はともあれ、組織維持のためにも少なくとも、仕組みづくりは必要な時代です。
介護離職に関するデータ
少し古いですが、総務省が発表している公式データがありました。
すべての情報の出典元は以下です。
出典:平成24年就業構造基本調査結果(総務省統計局)
2012年介護離職者男女合計数=101,100人
2012年男女比率は8:2で女性が多い
一番多い階層=55~59歳で全体比21.4%
40歳~59歳で全体の58.7%
40歳未満=11%
介護離職制度を使っている人の割合の合計=16%
[その他]という会社個別制度が一番多く=8.2%
[介護休業][短時間勤務][介護休暇]=2~3%
育児と介護をダブルケアという難題
上のグラフにあるとおり、介護離職の年齢は一般的に40歳台~50歳台が多いです。
この年代、現代の晩婚化・高齢出産も考えると、育児と重なることもあります。
仮に40歳代で介護と育児の2つ同時に遭遇したら。
インターネットで検索するとやはりこのケースは現実化しているようです。
親の介護(ケア)+子どもの育児(ケア)=ダブルケアという言葉がありました。
なるほど、そういう単語があるのですね。
実際、僕は育児はしていますが介護はしていません。
しかし、親が存命なので、ダブルケアになる可能性がある状況です。
ということで「架空のご家庭」を想定してみました。
それなりに現実感のある構成なのではないでしょうか。
▼状況
①主人がフルタイムで働いている、兄弟はいない
②奥様が育児のため時短勤務で働いている、ゆくゆくはフルタイム希望、兄弟はいない
③ご夫婦には子どもが2人、1人は6歳(小学生)、1人は3歳(保育園)
④室内犬(小型)を1匹飼っている
⑤4人と犬の健康状態は良好
⑥一家は東京に住んでいる
⑦収入は主人+奥様なのでいまは少しだけ余裕がある(月の家計収支は基本プラス)
⑧主人側祖父母が2人とも存命で地方在住、寝たきりでもなくボケていない
⑨奥様側祖父母が2人とも存命で関東近県在住、寝たきりでもなくボケていない
この「架空のご家庭」夫婦共働きで子どもが2人、プラス犬だと時間の余裕はないですね。
時間をお金で買うことができるだけの収入があれば話は別です。
多分、この「架空のご家庭」は毎日があっという間に過ぎ去っていると想像できます。
それでもまだ、余裕があるはずです。
理由は家計収支が基本プラスということ。
お金があれば、ある程度のことは解決できます。
では、両親のうち誰か1人に介護が発生したとしたら。
介護の重度にもよりますが、手がかかる重い介護だったと想定。
どのように解決するのか。
・当事者の貯蓄で民間ケア会社にサポートをお願いする
・主人と奥様の収入で民間ケア会社にサポートをお願いする
・主人が介護休暇を取得する
・主人が会社にかけあってたまに時短で介護をするのを認めてもらう
・奥様が介護休暇を取得する
・奥様が会社を辞めて介護に専念する
「当事者の貯蓄で民間ケア会社」案以外、どれも「架空のご家庭」の状況にそれなりにインパクトが出そうです。
人生の2大リソース「時間」と「お金」を、一定割合、介護に振り分ける必要ありそうです。
お金で解決するにしても、まったく放置する人はそれほど多くないと思います。
小さい方の子どもが3歳で保育園。
まだまだ手がかかる年代。
犬の散歩はどうなるのでしょうか。
1つ親の介護が発生しただけで、状況は一変しそうです。
あっという間に時間が過ぎていく毎日から、時間をひねり出す必要性。
1つだけでなく、2つ状況が悪化したら。
たとえば片方の親が重度の病、片方の親がボケたなど。
または片方の親が要介護、「架空のご家庭」のご夫婦のどちらかがうつ病。
大変と言う次元ではなくなりそうです。
トラブルが発生してから慌てて対策を立てるのは子どものやり方です。
インパクトが大きいことほど、先にシミュレーションしておくことで、避けられることもあります。
事が起こる前に、できるだけ全員の意思確認する事もできればやっておいたほうが良いです。
祖父母達自身が「自分達が要介護になったらどうしたいか」の意思を知っておくこと。
また、あなたのご家庭は夫婦間でこうした意思疎通が取れていますか?
僕は自分の両親と介護の話し含め、ストレートにイロイロ話しています。
さいごに
僕は実際に介護を体験していませんが、介護は楽しいものではなく苦痛と考えています。
楽しいこともわずかにあるかもしれませんが、総論はネガティブな感情が多いだろうと予想しています。
介護を綺麗事や自己犠牲論に置き換える人もいます。
自分が過去に育ててもらった親だから、自己犠牲して恩返しするのが当たり前。
そういう行動を取る方はそれで良いですし、否定しません。
ただ自分の奥様/旦那様含め他人に向けて強要するのはNGです。
最近、炎上した「あたしおかあさんだから」と同じことになります。
もちろん、ゼロか100のどちらかというお話ではないです。
たいていの事と同じように調和点を探すことが大人の振る舞い。
たとえば、できる範囲で自分たちも介護に参加するが、大半はデイケアサポートを受けるなど。
会社で働いている中で、「介護」と同じような状況になるのが「産休と育児休暇」。
メンバーが一時期離脱または時短など、フルタイムではなくなる状況が似ています。
こうした状況を会社がどのくらい受け入れるのか、制度を整えていくのか。
社会保障が整っている北欧などのように、国単位で対応すべきでしょう。
会社単位では、大手企業は対応できているが中小企業は形骸化というのはよくある話です。
僕も以前、チームメンバーが妊娠出産→復帰→時短勤務という状況を経験しました。
僕の場合はできるだけ、僕がそのメンバーの業務を自分の業務にプラスして肩代わりしました。
実際には朝早くから出社して、夜遅くまで仕事をする典型的な積み上げ型。
やってみた結論はたった1つ。
「単純に誰かに同じだけの業務量を割り当てるのは止めたほうが良い」
チーム全体の雰囲気も悪くなったり、ドミノ倒しで戦線離脱など非常に綱渡りです。
行きつく結論は当たり前ですが「業務量を減らす」か「人員を増やすか」のどちらか。
「何を甘いことを言っているんだ」という人は無視で良いと思っています。
根性論で物事に対峙する人は、もうそれほど多くはありません。
そもそも論という意味で、以下の本が1つの良い視点です。
この本のポイントは「多くの選択肢を検討して、重要な仕事のみに集中、それ以外をやらない」ということ。
単なる効率化というお話ではなく「何を捨てるか(やらないか)が重要」と書かれています。
実際、本当にやる意味がある業務というのはそれほど多くありません。
これは仕事に限らず、家事などもにも置き換えられます。
仕事も家庭もやることとやらないことを、家族全員で話し合う。
たまに立ち止まって、たな卸しをすると人生を豊かにするものが見つかる可能性があります。
その立ち止まる時間を作り出すのが、大変なんですけどね。
ではでは
◆今回のまとめ◆
介護問題は他人事ではなく身近
育児と介護が同時にやってくることもある
関係者で意思確認はできていますか?