窓の外の世界

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ライフハック・節約

「効率化」の旗印のもとに、仕事量は減らず(むしろ増えて)、残業規制が時代の流れです。
業務環境もIT化が進み、パソコン1台でやれる業務範囲が増えています。
それは余裕や時間の「空き」が少なくなるものでもあります。
そしてスマホ普及とも関連して、雑談が減少していると感じます。

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会議全出席者がノートPC持参

僕が所属する会社は最先端ではないですが、オンラインでの業務推進が進んでます。

僕はいま、仕事で会社支給のノートパソコンを使っています。
同じ場所に出勤、自分の座席が決まっているのは、オールドエコノミー的ともいえる環境。
それでも、社内でのインターネット/LAN接続は、Wifiの無線通信で、社内であればどこででも仕事ができます。

会議では、全出席者が自分のノートPCを持参します。
その中のだれかのノートPCを会議室の大きな画面を写しつつ、同じ画面をだれもが自分のノートPCでも見られる。
この会議環境で思いつくメリットを上げてみます。

まずはペーパーレス。
基本、すべて画面でやり取りするので、印刷物はありません。
場合によって、映し出された資料を会議中に簡単な資料修正したり、議事録作成も並行して行われます。
印刷物禁止ではなく、必要に応じて配布されることもあります。

これとは別に、個人的に最もメリットを感じているのが、「不要会議出席を許容できる」点です。
自分に関係が薄い会議に出席せざるを得ない場合、自分ノートPCで内職ができます。
遊んでいるのではなく、片耳で会議の話を聞きつつ、自分のノートPCで自分の仕事を進める。
意味の薄い会議に出席している時点で、時代逆行でもあり、自分の能力不足も感じます。

また、面接をするときもノートPCで画面を見ながらできます。
被面接者に質問して、ふむふむとうなずきながらノートPCに何かを打ち込む。
実際はたいしたことはメモしていませんが、話を聴いていてくれると思ってもらう点が狙いです。

ノートPC普及のメリットではなくデメリットを上げると、考える幅が限定される点が一番気になります。
たとえば、ブレスト会議で大きな紙やホワイトボードにマインドマップを書くような、発想を広げる機会が減りました。
これはノートPCが原因のすべてではないですが、何となく物理的に書く機会が減りました。

メリット・デメリットで分類とすると微妙になりますが、「雑談」が減少しているとあるとき感じました。

会議開始前の雑談が減った

「アイスブレイク」というビジネスワードがあります。

研修用語として用いられる言葉。研修のスタート時などにおいて、受講者の緊張を解き、リラックスしてもらうことをいう。互いに自己紹介を行ったり、簡単なゲームを行ったりするのもアイスブレイクの1つ。

出典:アイスブレイク(コトバンク)

広義で捉えると「本論に入る前に、場の雰囲気を柔らかくするもの」。
上記は研修場面で書かれていますが、取引先の人と打合せする場面の冒頭での雑談なども、含まれると僕は認識しています。

ノートPC利用前後で、このアイスブレイクが減ったことに、ある時気づきました。

会議が開始される数分前から、参加者は徐々に会議室に集まってきます。
後から入室した人は、先に到着している人に軽く挨拶「お疲れ様です」するのは、以前との差はありません。
この先の行動が、ノートPC普及によって変わりました。

ノートPCやスマホがなかった時代。
会議が始まる前の時間、紙の資料が未配布の状態だと特に、手持無沙汰なので待っている人同士が何となく会話をする。

近しい関係性に人がいたり、会議の話に関連する話がある人がいると、会話は盛り上がります。
まったく話したことがない相手と会話をする人は少ないでしょうが、過去に少しでもかかわりがあったり、同じ会議に出席している、同じプロジェクト内のメンバーであれば、共通の話題はあります。
そういう人とも、「やっと少し落ち着いてきましたね」とか「この先、〇〇がうまく進まないと、ちょっと怖いですね」などの、軽い話題ができます。

中途入社でほとんど面識がない人と、共通の話題をみつけるようなケースもあります。
「以前はどんなお仕事をされていたのですか?」など、ぎこちなくも会話をする。
まるで若いころ、初デートで沈黙が怖く、薄い内容でも良いのでとにかく何か話すような。

内容の濃さは別に、この何となく雑談機会が、ノートPC持参でグッと減りました。
いまは「お疲れ様です」挨拶したあと、自分の画面に没頭できる。
全員とは言いませんが、そういう人が増えています。

「効率視点」では正しいです。
数分の時間でメール1通、返信したり、見ておかなくてはいけない資料確認したり。
僕も業務に追われる状態の時、1つでもタスクを減らしたいため、ノートPCに没入します。

これが目先の利益優先となっていないか、長期視点で考えると正しいのか。
同じシチュエーションとして「スマホ普及前のエレベーター待ち」もあります。

エレベーター待ちのATフィールド

スマホが無かった時代、エレベーターが来るまでの待ち時間や、エレベーター内では一定の会話がありました。
少しでも一緒に仕事をしたことがある人であれば「最近、どうですか?」のような、まさに日常会話の典型例。
よく考えると内容が伴っていない、「今度、飲みに行きましょう」レベルの社交辞令です。

いま、エレベーター待ちの時、スマホを見ていない人を見つける方が難しい。
スマホを見ている人に、まったく声をかけられないわけではないですが、近しい関係性がないと難しい。
少なくとも、以前より話しかけるハードルが上がっていると僕は考えています。

極端な例として、少し怖そうな上司がスマホを見ていて、声をかける人がいるか。
または、20歳代前半の若い人がスマホを見ているところに、あえて話しかけるか。

スマホはバリア。
エヴァンゲリオンで例えるとATフィールドが張られた状態。

上司と関係性を築きたいと思う人が減っている時代です。
スマホやノートPC普及は、それを後押ししているツールだと思えてしまいます。

エレベーター内プレゼンする人を見たことがない

わずかな時間で、自分自身や自社のビジネスについて説明すること。偶然エレベーターーで乗り合わせた投資家に対し、印象深く、かつ簡潔に自らを売り込む行為を意味し、米国のシリコンバレーが発祥とされる。エレベーターースピーチ。エレベーターートーク。エレベーターーステートメント。

出典:エレベーターーピッチ(コトバンク)

ここまでガツガツする人は、日本には少ないと思っています。
絶対にこの会社に食い込みたい、そんなモチベーションの高い営業マンであればイメージできますが、そういう人が日本にどのくらいいるか。

それでも、たとえば年に1回の全社パーティーでたまたま横にいて、少しお話したことがある他部署の上司が、エレベーターー待ちしていたところに遭遇したら。
お互いスマホを見ておらず、ふと目が合ったら軽い雑談が始まる、少なくとも僕は話をします。

それに意味があるのか。
組織で昇進したくない人が多い時代です。
その本意である「責任に見合う見返りがない」も、一部納得しています。

ただ、昇進とは別に、自分の世界を広げる機会と考えるとどうなのか。
自分にはない視点、知らない経験を持った人から得られることは、自分側が受け取るアンテナが立っていれば多いです。

実際、一定のポジションにつくのは、リーダー素養がある人にとってはプラスになります。
それは「自分の言葉が話せるようになるための練習の場」でもあります。

雑談の必要性

僕は自分を「雑談能力が低い」と、感じています。
僕の奥様からも、同様の評価をされているので、多分その通りです。
それでも雑談の効用は、経験的にも認識しています。

だれかと少しお話すると、その人の全体の状況を五感で認識できます。
正しいかどうかではなく、今日は元気がないな、随分忙しそうだなのようなものも含めです。
そんなものを知ってどうなるというわけではありませんが、そういう時「最近、忙しいんですか?」と問われたら。

自分が業務てんこ盛りで、爆弾がいくつか炸裂している余裕がない時に、ふとそんな言葉をかけられたら。
相手を、観察力があると認識するとともに、好印象を持つ。
平たく言うと「分かってくれている」、違う言葉なら「興味を持ってくれている」。

他人は分からないが僕の基本姿勢です。
分かったようなことを言う事はできても、ど真ん中の「当たり」は偶然。
そして「当たり」でも、それに意味があるのか?とも思っています。

それでも、相手が自分に興味を持ってくれていると感じられたら。
「好意返報性の法則」を持ち出すまでもなく、その後の関係性はプラスに向かうと思っています。

さいごに

オッサンは「若者が何を考えているのか分からん」と言い、若者は中年を「老害」と評する。
いつの世代にもある、世代間闘争です

いまは、オッサンも若者もほぼ全員スマホを所持し、それは自分の世界に閉じこもりやすい環境でもあります。
もちろんネット環境をも活用して、読書イベントを開催したり、活動の幅を広げるツールとして利用されている人もいます。
ポイントは、リアルやバーチャルの区切りではなく、相手を一人の人として尊重する姿勢。

組織を引っ張るクラスの人たちは、疎外感や孤独感を持つ環境にいます。
そういう人の懐に、ふわりと入り込む雑談力を持てたら。

それは現代では「希少性」の高い素養だと思っています。