2020年に続き2021年現在、コロナ過はレジャー業界全体にマイナス影響を与えました。
スキー・スノーボード業界もその中に含まれ、もともと業界全体が縮小していたところに、容赦なく爪痕を残しました。
2021年のスキー・スノーボード人口は最盛期の1/5以下。
用具市場やスキー場収入も、人口ほどではありませんマイナス影響を受けています。
2020スキー・スノボ人口は最盛期の84%減少
この文章は、毎年発行されるレジャー白書をベースに書いています。
2022年版が発行されたので、2021年分データを更新した情報が以下です。
出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)
1990年代から2000年代前半に山ができていて、それ以降右肩下がり。
最高値が1998年で、スキー人口が1,400万人、スノーボード人口が400万人、合計1,800万人でした。
それが2021年は、スキー人口が200万人、スノーボード人口が80万人、合計280万人。
最盛期に比べ2021年はスキー人口が-1,200万人、スノーボード人口が-320万人、合計-1,520万人。
増減率は-84%、最盛期に比べ16%しか残っていません。
昨年、この文章のタイトルは「最盛期にくらべ76%減少」と書きましたが、これに倣うなら今年は「最盛期に比べ84%減少」です。
上記グラフ内の下段の「年」のところに2つの吹き出しを付けています。
1つ目は1987年に公開された映画「私をスキーに連れてって」。
これが日本のスキーブームに火つけ役で、1990年代は若者がこぞってスキーに行きました。
2つ目が長野オリンピックが開催された1998年。
この1998年が、日本のスキー・スノーボード人口の合計値の最盛期。
個別にみると、スキーの最盛期は1993年の1,770万人、スノーボードの最盛期は2002年の540万人です。
その後、2000年からは減少期に入り、2002年が1,090万人だったのが、2003年には760万人と大きく下がりました。
以降も前年比で増加した年もありますが、右肩下がりを続けています。
用具市場は7割減、スキー場収入は6割減
この段落はお金に関する情報です。
出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)
上記は、1998年からのスキー・スノーボード用具市場で、傾向は右肩下がり。
1998年が2,870億円だったものが2021年は940億円で、-1,930億円、67.2%に減少しています。
2021年は、小さなトピックスとして、前年比で増加しています。
2020年は890億円が、2021年940億円と50億円増加。
全体の流れから考えると、反転攻勢する勢いは感じられませんが、増加率は5.6%でした。
1990年代、東京神田の靖国通りの両脇には、びっしりとスキー・スノーボード用品店が並んでいました。
表通りだけではなく、1本入った道にも、小規模店舗がひしめいていた時代です。
いまでも一定のニーズはあるので、ゼロにはなっていませんが、いま、この界隈のお店の大半はスキー用品以外になっています。
出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)
上記は、スキー場の収入推移ですが、1つ上の用品市場推移とほぼ同じ傾向です。
1998年が1,160億円だったものが、2021年は448億円で、前後比-680億円、58.6%の減少率です。
こちらも市場推移と同じく、2021年はわずかに(40億円)2020年を上回っています。
参加率の推移、年代別参加率
出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)
男女別で見た時の、スキー・スノーボードをやる人の推移が上記です。
全体参加人口が減っているので、こちらも全体が右肩下がり。
このグラフ、最大値が10%なので、100人中、10人以下がスキー・スノーボードの参加人口となります。
出典:レジャー白書(公益財団法人 日本生産本部)
最後に、2021年の年代別・男女別の参加率です。
このグラフも最大値が10%にしており、低空飛行ばかりの数値ですが、青色線で2つ高い数値部分があります。
「スキー・男性・10代」と「スキー・男性・70代」。
バブル世代より少し早い70歳代の人の部分は、ご高齢でもスキーを楽しんでいる。
もう1つが10代の男性で、同年代人口比では最高値。
何が理由か分かりませんが、この先、スキー人口を育てていくのであればこの世代がキーポイントです。
世界的に見ると
コロナ過が始まる前の2018年は、スキー場やその周辺はインバウンド需要に沸いていました。
周知のとおりニセコがその発端で、ニセコ界隈の飲食店に英語表記メニューが並んでいる光景は、この先のターゲットは海外勢と感じるものがありました。
それが2020年に世界的に流行したコロナウィルスで、訪日外国人はほぼゼロ。
スキー場にとっての頼みの綱が、いったん途切れた状況になりました。
出典:International Report on Snow & Mountain Tourism 2022(Laurent Vanat)
世界の中でリフト数の多い順に並んだ情報が上記です。
1位がフランス、2位がアメリカ、3位がオーストリア。
日本は5番目にリフト数が多い国です。
出典:International Report on Snow & Mountain Tourism 2022(Laurent Vanat)
各国のスキー場訪問客数情報が上記です。
1位がアメリカ、2位がオーストリア、3位がフランス、4位に日本が入っています。
出典:International Report on Snow & Mountain Tourism 2022(Laurent Vanat)
各国情報の最後は、スキー実施率。
1位がリヒテンシュタイン、2位がスイス、3位がオーストリア、4位がフィンランド、5位がノルウェイ。
ここには21か国が並んでいますが、日本は入っていません。
21位のモンテネグロの参加率が約10%なのでで、日本が入らないのはこの文章上記にあったレジャー白書に掲載されている情報と合致します。
(2021年の日本のスキースノーボード平均参加率は1.4%)
これらのグラフから言えるのは、日本はリフト数が多いが日本人スキー人口は少ない。
日本のスキー場に行くのは、日本人ばかりではなく訪日外国人も多くいる(いた)、となります。
さいごに
世界的に有名なスキーリゾートの1つ、カナダの「ウィスラーブラッコム」の1日(平日)リフト券は、2022年12月現在で186カナダドル。この1日リフト券、2022年12月のレートで日本円に換算すると18,697円です。
「ウィスラーブラッコム」のチケットは、曜日変動制(ダイナミック・プライシング)になっているのも、現代っぽいところです。
日本の大型スキー場として「苗場」のリフト券は、苗場エリア1日券で6,000円(2022年12月現在)。
僕が外国人だったのなら、日本のスキー場の格安さに惹かれます。
他に、世界的なエネルギー価格高騰で、日本のスキー場は以下の通り値上げをするニュースがあります。
スキー場、苦悩の値上げ相次ぐ 電気料金上昇で「避けられない」
数百円の値上げであれば、外国人にとっては円安も含め誤差範囲。
翻って、日本では数十年ぶりの物価高騰で、お財布が硬くなっています。
スキーに行ける人と行けない人の選別(格差)、行けても行かない選択する人がいたとしても納得の社会情勢です。
2022年2月に安比高原に「ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート」が開業しました。
斜陽産業であっても、高価格帯のラグジュアリーリゾートとして参画になり、これも世の中の流れの1つです。
僕は安比高原には10回以上滑りに行っており、コースの数や雪質など、行った回数から分かる通り、すばらしいスキー場です。
2022年は、大きな社会変化があった年でした。
変化の波をどう乗り越えていくか。
スキー場のコースのこぶを、膝をうまく使って乗り越えていくのと同じ、うまくいなして楽しむものです。