近年は自動車販売台数が減少、保有台数も横ばいになっています。
都道府県別にみると、当たり前ですが都市部は車保有率が低い結果。
高齢化や少子化が進行しているので、日本ではこの先も販売台数が伸びる要素はありません。
車を取り巻く環境は年々厳しくなり、それが車の価格に反映されているのですが、所得が上がりにくい不安定な時代であれば、車の使用年数が伸びるのは既定路線です。自動車保有台数は横ばい時期に入った
まずは日本の自動車保有台数の推移が以下です。
出典:自動車保有台数(一般財団法人 自動車検査登録情報協会)
1697年が300万台、2023年が6,195万台、約20倍に増えています。
近年はほぼ横ばいで、わずかに前年割れしている年もあります。
この先の人口減少期を考えると、いまがピークと言えます。
出典:販売四輪(JAMA 一般社団法人日本自動車工業会)
上記、乗用車に限定した「軽自動車」「小型自動車」「普通乗用車」の年間販売台数の推移です。
まずは「軽自動車」「小型自動車」「普通乗用車」の分類の意味からです。
・軽自動車
ナンバーが黄色の乗用車・貨物車
全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下、排気量660㏄以下
・小型自動車
ナンバーが「5」「7」の乗用車、「4」「6」の貨物車
自動車の大きさが、全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以下、排気量2,000㏄以下
・普通自動車
ナンバーが「3」の乗用車、「1」の貨物車、「2」のバス
上記の小型乗用車のサイズを上回った物
「総数」は1993年は414万台、2022年は365万台で、増減率88.3%。
販売台数はここ20年で、山あり谷ありの経過を経て、減少期に入っています。
「軽自動車」は1993年は79万台、2022年は129万台で、増減率162.3%。
「小型自動車」は1993年は269万台、2022年は89万台で、増減率32.9%。
「普通自動車」は1993年は66万台、2022年は150万台で、増減率225.9%。
分類の中で「普通自動車」が一番サイズの大きい車ですが、「普通自動車」は増えています。
減っているのは「小型自動車」。
「軽自動車」が良く売れていると聞きますが、意外に「普通自動車」が最新年の2022年~2023年で一番売れています。
出典:乗用車ブランド通称名別順位(一般社団法人日本自動車販売協会連合会)
出典:2022年4月~2023年3月 軽四輪車通 称名別新車販売確報(全国軽自動車協会連合会)
2022年の軽自動車・軽自動車以外(登録車)の車種別Top20が上記です。
軽自動車は緑色、軽自動車以外は青色線です。
1位のN-BOXはここ数年ずっと1位。
2位のヤリスは「小型自動車」、3位のカローラは「普通自動車」に分類されます。
軽自動車は一昔前からサイズの最大長で作っており、これ以上の拡張ができませんが、近年普通車は拡大(巨大化)が止まりません。
3位のカローラがいまは「普通自動車」に分類されるので、普通自動車が増えていてもおかしくありません。
都道府県別では都市部の車保有が少ない
東京では自動車保有がコストの言葉通りですが、2022年の都道府県別情報がこのブロックです。
出典:自動車保有台数(一般財団法人 自動車検査登録情報協会)
出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(総務省)
都道府県別人口当たりの乗用車保有台数が上位です。
・全国平均は0.58台/人。
・東京周辺と大阪周辺が、平均値より圧倒的に低い。
・愛知県は0.56台/人と、ほぼ平均値。
・最低値は東京の0.23/人、最高値は群馬の0.72/人。
群馬の隣の栃木が0.70と2位と、この近辺は車保有率が高い。
出典:自動車保有台数(一般財団法人 自動車検査登録情報協会)
都道府県別・世帯数
出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(総務省)
上記は個人ではなく世帯当たりの都道府県別、車の保有台数です。
・全国平均は1.26台/世帯
・東京周辺と大阪周辺が低いのは個人別情報と同じ
・保有率1位は福井の1.70台/世帯、2位は富山の1.64台/世帯
東京で車が不要な人は不要、地方で車が必要なご家庭は1人1台必要のお話はよく聞きます。
乗用車価格を種別でみると上昇と下降の種別がある
出典:小売物価統計調査(動向編)(総務省統計局)
車種別と輸入車の、2000年の乗用車価格推移が総務省の小売物価統計調査(動向編)にありました。
「軽乗用車」と「小型乗用車」は右肩上がり。
「軽乗用車」の2000年は\879,025、2022年は\1,523,81」、増加率は173.4%。
「小型乗用車」の2000年は\1,603,700、2022年は\2,162,934、増加率は134.9%。
「普通乗用車」と「輸入 普通乗用車」の価格、2010年に理由は分かりませんが大きく下がっています。
その後は上昇しており、直近「輸入 普通乗用車」は大きく金額を上げています。
ちなみに「普通乗用車」と「輸入 普通乗用車」は、2022年より2000年の方が高い。
出典:小売物価統計調査(動向編)(総務省統計局)
上記は東京都区部のガソリン小売価格推移です。
グラフ一番初めの1967年が\53で最安値。
最高値は1983年の\176、第二次石油危機の時期です。
2023年はさまざまな要因からガソリン価格が高騰しており、史上最高値を更新するかもしれません。
出典:わが国の自動車保有動向(一般財団法人 自動車検査登録情報協会)
出典:軽自動車の平均車齢・平均使用年数向(軽自動車検査協会会)
上記は自動車使用年数で、手放すまでの期間情報です。
「軽乗用車」は2005年から、「小型車」「普通車」は1981年からの情報です。
「軽乗用車」の2005年は11.49年、2022年は15.83年、増加率は137.8%。
「小型車」の1981年は8.69年、2022年は14.01年、増加率は161.2%。
「普通車」の1981年は9.39年、2022年は13.61年、増加率は144.9%。
全区分を平均すると約1.5倍、長く車を乗るようになっています。
ここまでをまとめます。
・自動車保有台数は6,200万台弱で横ばいになってきている
・販売台数は減少期に入っている
・軽自動車ばかり売れているわけではなく、2022年車種別Top20の5割が軽自動車
・都道府県別にみると東京近郊と大阪近郊が車保有する人が少ない
・乗用車価格は、軽自動車と小型自動車が金額上昇している
・ガソリン価格は1983年が最高値で2023年は近い数字になっている
・自動車使用年数は長くなっている
車を取り巻く環境は厳しいが彼らは闘っている
2022年度、自動車販売台数1位「ホンダ N-BOX」の新車価格は1,468,500円~2,288,000円。
これに、さまざまな費用がかかるため、本体値引きを考えても200万円前後が購入価格になります。
この金額になると、軽自動車が高額化していると言われて納得です。
軽自動車が100万円前後だった頃に今の200万円は値上げと感じますが、値上げ金額がそのまま企業利益にはなっていません。
あげつらう意図はありませんが、ホンダ社の2022年四輪の利益率は0.03%、2023年に至ってはマイナスです。
そこには材料や人件費の高騰、ハイブリッドシステムやデジタル化の波があります。
環境規制や安全対策、車のライトも点灯忘れ防止のため2020年4月から「オートライト機能」義務化。
求められるものが多く、対応コストで値段が上がる。
車の値段が上がり可処分所得が減ると、車の買い替えをせず長く乗る人も増えます。
自動車使用年数が約1.5倍になっているのは、旧車人気もわずかにありますが、現実的なお話がメインです。
高齢化で免許返納者が増え、少子化でドライバーが減っています。
免許保有者は警察庁発表情報では、2018年がピークの8,231万人でそれ以降は漸減中。
自動車販売台数が減れば、1台あたりにかけられる開発や製造コストが限られます。
それゆえ、いまの車づくりは設計段階から共用思想で、コストダウンを図っています。
コストダウンを図っても、いたちごっこ要素は増え、ギリギリの値上げが現実の流れです。
ここまで、車販売に関しての最近の傾向を並べてみましたが、端的に言うと厳しい。
ただ、自動車産業はいまの電気自動車補助金はありますが、補助金が比較的少ない業界です。
それは、自力で工夫して生き残っていると言えるお話でもある。
振りかえって見ると、政府による不用意なばらまきが、いろいろ思い当たります。
それが本質的にその業界を救うのではなく、短期的な延命措置で、現場はその対応に疲弊する。
自動車業界は補助金などに頼らずとも、自分たちがプライドを持って社会貢献していく覚悟を豊田章男さんの「クルマを走らせる550万人」のメッセージから感じます。
自動車会社が100年後、いまのようにマイカーや業務車製造主体の会社ではなくなっている。
その頃には、マイカー保有者は一部の好事家、いまのバイクのように好きな人は保有しているような状況と予想します。
大半はタクシーのような位置づけの公共カーを、オートで目的地まで連れて行ってくれるような社会になっている。
その車を管理するのが、政府から委託された自動車会社です。
僕は車が好きで、マイカー保有しています。
100年後の未来人から見たら、そんな時代だったのだと見られるのだろう。
ただ、それは100年前の歴史を今の我々が見ているのと変わらず、単なる時代の変遷の1ページです。
車はコストという意見に僕は賛成です。
ただ、僕にとってそのコストは、支払っても見返りの方が上です。
数十年後、家族で集まって思い出話する時、旅先の記憶とともにその時に乗っていた車も思い出すと思っています。
さいごに
若者の車離れのお話があります。
仮に20歳代後半で年収300万円、ザックリ可処分所得を250万円とします。
この金額から300万円の車を購入する場合、どれくらい頭金を貯めるか。
実家暮らしで給与の大半を自由に使えるのであれば、数年貯蓄重視で全額現金決済も可能かもしれない。
一人暮らしだと頭金を貯めるのにも時間がかかり、わずかな頭金と大半のローンもあり得る。
ローンで車購入できますが、車の維持費を考慮していないと厳しい現実が待っています。
可処分所得が減少し続けている中、購入費もそうですが維持費を計算に入れた時、車にどれだけのコストをかけるか。
若者は車を「持たない」ではなく「持てない」があてはまる人が増えている気がします。
一昔前、毎年、給与が上がる年功序列時代がありました。
そのころ手取りの半分を車のローン支払いにあてる人がいましたが、いまこんな人がいるなら希少種です。