この文章のトピックスは以下です。
・高校1年生回答で中学でお金のことを学んだと回答したのは50.0%
・金融リテラシーが高い子どもは中学で学んだと回答した割合が高い
・学校授業でお金について教えてほしいと思う割合は約8割
・おこづかい帳をつけている子どもはつけていない子どもよりお買い物時に考えている
・2023年ではお金はコツコツ働いて貯めるものであると考える子どもは8割強
・金融リテラシーが高い子どもは保護者とのコミュニケーション機会が多い
・保護者世帯の年収が高い子どもの金融リテラシーは高い
中学の授業でお金のことを学んだと50%が回答
以下の各データは、金融広報中央委員会「知るぽると」が実施した、義務教育を終了した高校1年生3,000人へのアンケート結果です。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は中学校の授業でお金(家計・くらし)のことを学んだかの生徒の回答結果です。
「学んだ」はちょうど半分の50.0%、「学んだと思うが、よく覚えていない」は41.0%と二極化しています。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は、中学校の授業でお金(家計・くらし)のことを学んだか・金融リテラシー別の情報です。
全体では「学んだ」は50.0%で、「高リテラシー」層の「学んだ」回答者は63.9%とやはり知識がある人にとって、金融系の話を聞いて「お金の話をしているのだ」と認識しています。
「低リテラシー」層のうち「学んだ」と回答した人は34.5%と約1/3はお金の話と理解していますが、それ以外はNo回答です。
ここからは基礎がないと、認識できない・理解できない可能性を感じます。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は学校の授業で教えてほしいお金のことについての回答です。
1位「お金のトラブルの回避方法・対処方法」59.6%。
2位「ローンの仕組みや活用方法」55.8%。
3位「収入と支出の管理」55.5%。
4位「人生設計と人生に必要な資金の計画」53.0%。
5位「キャッシュレス決済の仕組みと利用方法」51.0%。
中学生に教えるとして、2位「ローンの仕組みや活用方法」や3位「収入と支出の管理」は妥当だと感じます。
ローンがどんなものかとともに借金が悪いと思いこませないような教育は、日本人には特に必要です。
特に3位「収入と支出の管理」も、子ども時分から良い習慣が身に着けられれば、将来の安全度が違います。
決して安全を推奨するのではなく、たとえば企業などは株式としてお金を集めそれを利益に結び付ける。
こうした資本主義社会の基本の「き」の部分は、自分の人生設計でも役立ちます。
おこづかい帳をつけている人は計画性が高い
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は15歳の子どもがお小遣いをもらっているかです。
「もらっていない」は10.5%なので、大半の子どもはお小遣いをもらっています。
そのうち61.2%は「もらっている(定期的、定額)」います。
少ない小遣いをどうやりくりするのか、それはお金の実地勉強になります。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記はものを買う前に、必要なものか・欲しいものかについて吟味するか、おこづかい帳をつけているかいないか別の情報です。
総論、おこづかい帳をつけている・いないに関わらず、大半の子どもは購入前吟味しています。
そしておこづかい帳をつけている子どもの方が、つけていない子どもよりその割合は少し高い。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は買い物をする時、情報を集めて、複数のお店や商品と比較するか、おこづかい帳をつけているかいないか別の情報です。
比較検討するのは、1つ上のグラフの吟味するかより実施割合は低い。
そしておこづかい帳をつけている子どもの方が、比較検討している割合は多い。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記はお金を巡る態度の推移です。
「お金はコツコツ働いて貯めるものである」が2023年の1位。
ほぼ同値で「お金より大切なものがある」が2位ですが、2005年と比べると2023年は-6.4%下がっています。
「法律違反でなければ、どんなことをしてお金をかせいでも良い」は、2005年と比べると2023年は+2.1%上がっています。
一番変動が大きいのは「ギャンブルでお金をかせぐのは良くないことである」で、2005年と比べると2023年は+8.8%上がっています。
受動姿勢が高いと金融リテラシーが低い
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は金融リテラシー別、1日当たりのインターネット平均利用時間です。
総論、金融リテラシーが高い子どもは、インターネット接触時間が短いとなります。
低リテラシーの子どものうち28.1%は、1日のうち5時間以上インターネットを利用しています。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は金融リテラシー別・保護者との会話頻度です。
高リテラシーの子どもの方が低リテラシーの子どもに比べ、保護者との会話頻度が高い。
高リテラシーの子どもは52.0%が週に1回以上親と話していますが、低リテラシーの子どもは34.0%です。
低リテラシーの子どものうち66.0%は月に1回以下程度しか、保護者と会話していません。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は金融リテラシー別、困っている人々のためになるのであれば、自分のお金を寄付したいか。
高テラシーの子どもがこの中では一番困っている人がいれば寄付したいと回答していますが、それでも割合は38.7%。
最近はクラウドファンディングが身近になりましたが、日本は寄付がそれほど一般化していないと言えます。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は金融リテラシー別、高校卒業後の進路希望です。
高リテラシーの子どものうち、86.3%が大学などに進学したいと答えています。
低リテラシーの子どもは大学ではなく就職を選ぶ割合が高いのは現実に沿っています。
ただ、低リテラシーであればこそ、お金の管理を身につける意味は高い。
保護者の年収が高いと子どもの金融リテラシーが高い
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記はこのアンケートを回答した高校1年の子どもの保護者の学歴情報です。
6割以上が大卒となっており社会全体の大卒割合より高いため、この回答をした子どもたちの保護者は高学歴です。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は保護者の世帯年収別、子どもの金融スコアです。
年収が高くなるほど、子どもの金融スコアが高くなっています。
身も蓋もありませんが、お金を稼ぐ能力が高い保護者の子どもは、金融リテラシーが高い。
出典:15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査(2023年)(金融広報中央委員会「知るぽると」)
上記は保護者の家庭状況別、子どもの金融スコアです。
母子・父子家庭のみほかの回答に比べ少し低く55.5%。
共働きは60.6%、片働きは61.9%と、片働き(専業主婦・主夫)の方がわずかに高い。
(物語)お金は未来を作るための道具
東京に自宅を構える良介は、大手企業に勤める中年サラリーマン。
生まれ育った地元は地方で、大学進学のタイミングで上京し、そのまま東京で大手企業に就職しました。
良介は典型的な今の時代の地方出身者といえる一人で、地元に戻っても職探しが大変という現実と向き合っています。
会社員になって数年して結婚し、その後子どもを授かったタイミングでマイホームを購入。
良介は独身時代からコツコツ株式投資しており、マイホーム購入時にそれなりの金融資産を持っていました。
マイホーム購入時に資産の大半を使うのではなく、住宅ローン審査で有利となりそうな金額分のみ頭金として自分の資産から拠出。
できるだけ元手は残して、これまで通り資産形成していく方針にしました。
良介にとって、株式投資は生活の一部というほどではありませんが、趣味の1つとして社会人になったころから続けています。
企業分析や業界調査など、あれこれ想像しながら投資先を悩んでいる時間は楽しい時間。
安値のタイミングで株式購入ができて、それが育つと自分の分析が当たっていた結果であり素直にうれしい。
株取引を始めた当初は損きりが遅れ、大きな痛手も経験しましたが、そこから自分の意志の弱さを認識してルール化する。
それを繰り返すうちに、マイルールが洗練され順調に資産が増えていきました。
企業分析するようになると、自社のIR情報にも目が行くようになります。
他にも自部門の数字や、自分の人件費も株価に影響することを認識、社会の仕組みの1つが理解できるようになりました。
サラリーマンのウィークポイントと言われがちな、稼ぐ意識が薄い指摘があります。
経営者は日々数字と向き合うので無頓着ではいられませんが、サラリーマンは言われたことをやっていれば定期的に収入がある。
経営視点を持てた意味でも資本主義社会の仕組みを理解した点でも、株式投資をやっていて良かったと思っています。
1つの銘柄に全投資するのはリスクなのは、投資未経験者でも分かります。
リスクヘッジを考えると、株式だけではなく債券や金、不動産投資もあります。
実際、良介はREITにも分散投資しています。
自分のお金で投資して生き残れた経験で得た内容は、自分の中に物事を考えるときの土壌のようなものとしてしっかり根付いている。
これは仕事やプライベートでのリスク分析や、解決策を広く考える視点としても役立っています。
長年投資してプラスを続けてこれた結果、良介の金融資産はそれなりにまとまった金額となりました。
一定額以上の資産を持った時、重い荷物を背負った先の見えない行軍だったころは終わり、自分の人生のハンドルを自分で取り返した気分で、心が楽になりました。
一定額以上の資産ができると、人生の重要度の中でお金の意味は低くなるのにも気づけました。
増やし続ける意味が薄くなったを気づいたとき、考えるようになったのはどうお金を使って人生を楽しむか。
この先の時代を考えると、より競争は激しくなり子どもたちは大変になる未来が予測できます。
お金が万能でなくともその強大なパワーで人生が楽になることを知った今、自分の子どもに金融リテラシーが高くあってほしい。
知識やテクニックで資産増加するのも良いですが、どうやって獲得したかは人生を豊かにする知恵にもなります。
株取引にはたくさんの格言があり、いろいろ経験してそうだなぁと思うものもたくさんある。
良介が指針とするのは「勝とうとするのではなく、負けない」。
人生においても結果を出し続ける人たちに共通する資質です。
良介の子どもが小学生になったある時、子どもと手をつないで公園を散歩しながら子どもに向かって話しました。
「お金って何だと思う?」良介は子ども問いかけます。
「うーん、お買い物するときに必要なもの?」と子どもは首をかしげながら答えました。
「そうだね。でも、お金はそれだけじゃないんだ。お金は未来を作るための道具なんだよ。」
さいごに
たいていのことに当てはまりますが、何かを得るなら元手が入ります。
金融資産を増やすとして、毎月の給料から種銭を蓄財したり借金でショートカットする方法もある。
その元手をうまく増やして、一定の状況になると人生におけるお金の重要度は下がります。
学生時代はアルバイトして時間をお金に換えたが、お金があればお金で時間を買う。
今の時代、ある程度お金がないと不安になるのは普通です。
ただお金を貯めるだけは微妙で、お金を循環させる視点も生きたお金の使い方です。