この文章のトピックスは以下です。
・14年で夫婦の育児時間は413分伸びており増減率130.0%
・妻の年齢が高いほど育児時間は短い
・子どもの年齢が若いほど育児時間は長い
・夫婦の育児分担割合はここ14年で妻が-2.5%
・育児種類別でみると妻はほとんどの育児について毎日・毎回、夫は遊び相手が一番多い
・妻の夫の育児期待値は58.6%
・妻の夫の育児満足度は63.3%
1日の平均育児時間は3割伸びている
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は2008年~2022年の、夫婦の育児時間推移です。
まず、夫婦の合計育児時間について2008年と2022年を比べると、413分伸びており130.0%の増減率です
夫婦別では、上2つの折れ線グラフが妻の平日と休日、下2つが夫の平日と休日です。
上下に分かれている時点で、分担割合が50対50ではありません。
夫側の肩を持つととらえられても仕方がありませんが、夫側は平日・休日とも増加率は高くなっています。
2008年と2022年を比べると、夫・平日156.0%、夫・休日154.9%と約1.5倍になっています。
夫の休日の実時間は150分増加しており、週末、夫が子どもの相手をしている傾向が見て取れます。
妻側も減っているのではなく増えており、最新年になるにつれ夫婦での育児時間総数が増えています。
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は、2022年の妻の年齢別育児時間です。
平日・休日とも若年層ほど育児時間が長く、年齢が高くなるに従い育児時間が減っています。
年齢が高いと第2子以降になる可能性もあり、育児の手の抜き方やそもそも要領がよくなっているなど想像できます。
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は一緒に住んでいる子どもの、夫婦の平日・休日の育児時間です。
総論、年齢が小さい子どもほど育児時間が長くなっていますが、妻・平日のみ「0~2歳」は最多育児時間ですが、3歳以上の3分類はほどんと変化がありません。
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は妻の職業上地位別、育児時間です。
妻が仕事なしの属性が、妻の平日の育児時間が頭1つ長くなっている。
それ以外のトピックスとして、夫の育児時間は大きな差はみられません。
夫婦の育児分担割合は妻が3/4以上
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は夫婦の育児分担割合の推移です。
2008年と2022年を比べると、妻の育児分担割合は-2.5%でわずかに減少しています。
2022年の実数では妻78.0%、夫22.0%で、3/4以上の割合で妻が育児を行っています。
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は育児の種類別にみた育児頻度、2022年の情報です。
妻側のグラフは大半が水色の「毎日・毎回」で、唯一「(妻)風呂に入れる」のみ「毎日・毎回」は64.2%です。
夫側で最も育児頻度が高いのが「遊び相手をする」で、「毎日・毎回」は41.7%。
次いで、「風呂に入れる」「泣いた子をあやす」「おむつを替える」が第2グループです。
夫側で一番頻度が低いのは「保育園など迎え」です。
妻は夫の育児に半数強が期待しており2/3弱が満足
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は妻が夫の育児に対し期待するかしないか、2022年の情報です。
全体では「期待する」が58.6%でわずかに「期待しない」を上回っています。
言い換えるなら、半数弱の夫は妻から育児戦力外通告を受けています。
妻の年齢別では若年層ほど、期待する割合が高い。
最年少同居の子どもの年齢では、子どもの年齢が小さいほど期待する割合が高い。
妻の就業形態別では大きなさはありません。
出典:全国家庭動向調査(国立社会保障・人口問題研究所)
上記は夫の育児に対して満足か不満かの妻の解答、2022年の情報です。
全体では「満足」63.3%、「不満」36.7%で、期待するしないに比べれば、妻の夫評価は数%高くなっています。
年齢別では若年層ほど、満足する割合が高い。
最年少同居の子どもの年齢では、子どもの年齢が小さいほど満足割合が高い。
妻の就業形態別では、「妻が自営」が少し高く、「妻・非正規」が一番満足度が低い結果です。
育児に限らず協力体制を構築
育児に限った話ではありませんが、夫婦で難局を乗り越えた歴史上の物語があります。
前田利家とまつは、仲睦まじかった夫婦で筆頭で名前が上がる二人です。
二人は戦国時代によくあった若いときに結婚し、以降、大きなポイントでまつが重要な役割を果たしました。
織田信長死後、賤ヶ岳の戦いで利家が豊臣家側につきたいと考えた時、秀吉の妻ねねに頼んで間を取り持ってもらう。
佐々成政が前田領の末森城を急襲したとき、出陣を渋っていた夫のしりをたたく意味で、自分が末森上に出向いて加勢すると夫を慌てさせる。
利家の死後、豊臣秀吉が没したとき自ら徳川家康の人質として江戸に赴き、前田家に翻意なしの意図を身をもって示すなど。
明智光秀は、生涯、側室を持たなかった武将として名前が残っています。
妻となった煕子は、結婚前に天然痘で顔にあざが残ってしまったため代わりとして煕子の妹との結婚を薦められても光秀はそれを断り、煕子と夫婦となる。
その煕子は結婚直後、光秀が戦に敗れ浪人となり日々の生活もままならないとき、自分の長い髪を切って売り生活の足しにした。
生涯側室を持たなかった武将として、他に直江兼続がいます。
兼続の妻となったお船は、生涯、兼続とともに歩み上杉家に発展に尽力しました。
お船もまつ同様、豊臣政権下の時代に人質生活を送りましたが、ここでまつや秀吉の妻の北政所と交流を図り、上杉家に利する情報収集を行っていました。
戦国時代にはその時代の苦労、令和時代にも夫婦の難局はいたるところにあります。
令和の現代は、子育て世代は夫婦共働きが大半で、祖父母のサポートも得られにくい核家族が増えています。
社会的な育児サポート制度が徐々に普及しつつありますが、それらを使ったとしてもいまの育児は圧倒的に時間が少ない中で、戦場の毎日を送ることになります。
この状況の中で、お互いが気づいたタスクを自分事として「これ、やっとくね」で片付けていく。
育児や家事に終わりはなく、やらなければ状況は悪化していくだけです。
各自の得意を生かせる分野はもちろん、得意でなくともとにかくやってみる。
今回のデータでは、まだ育児の大半は女性側に偏っていました。
一般的には、いまの男女平均給与を比較すると男性側の給与が高いので、その現実から夫婦で話し合い、意図的に夫は仕事メインで妻の育児は少し多めにする戦略なども、相互合意ができていれば1つの戦術です。
もちろん、妻が外で稼ぐのをメインにして、夫が仕事をセーブして家庭のあれこれを片付けるのもあり。
いつ状況が変わるか分からない現代です。
家族に危急存亡の時が来たとき、それまでの平時に夫婦協力体制を築けていれば、なんとかなりそうです。
さいごに
この文章の最初のグラフ情報では、近年になるにつれて夫婦両方とも育児時間が増えています。
再掲ですが、時代として核家族化の進行で育児時間が長期化する世情はあります。
他に思いつくのは、子どもにかけるエネルギー量が増えているのも間違いなく。
身の回りの育児世帯を見ていても、小学生までは親が子どもと動いている姿がいまは一般的です。
ただ、子どもの自立を考えるなら、子どもだけで動いて経験を積むのも大切です。
とは言え、世間で求められる人様に迷惑をかけない思想や安全意識の向上も、対極側にある。
いまは昭和時代のように子どもは放置、多少のイタズラが許される時代ではありません。
子どものあれこれも夫婦のタスクも、極端に偏ることのないようバランス感覚が求められます。