身近なヒーロー「火消し職人」

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育児・子供観察

企業において、期変わりタイミングで発生する異動。
出ていく方も残される方も、変化が発生します。
中でも、変化が激しい炎上プロジェクトへ、投入され続ける人がいます。
そこでプラス実績を残し続けるためには、それなりのポテンシャルが必要です。

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火消し職人の活躍

一定以上の規模の組織、100名以上を超えるくらいから、たいてい数人は、厳しい状況を整えるのが上手い人が出てきます。
1つの部署・プロジェクトにとどまらず、厳しい状況の中を渡り歩く。
ここでは、その調整役の人を「火消職人」と呼びます。

「火消し職人」はトラブルシューターであり、企業内での企業再生機構のような存在。
炎上前の小さな火の段階で芽を摘んだり、炎上中の鎮火に当たり、安定すると別の場所に異動していく。
同じ部署に長くて3年、短いと半年でいなくなる、住所不定の人です。
導入期→成長期→安定期→衰退期でいうなら、導入期と安定期が不安定期になっている部分が主な活躍の場所。

盛大に燃え盛っているものを火消しして、ほぼ鎮火した状態になったあと、そこに腰を据えることはない。
また次の現場で、盛大に燃えている中、火中の栗を拾うがごとく、投入される。
僕の知り合いの、生粋の火消し職人に、いくつか質問してみました。

僕「つらいとか大変とか思うことはありませんか?」
職人「厳しいジャッジも発生し、精神的にも肉体的にもハードですが、仕事だと思って割り切っています。」

僕「ご自身が、鎮火作業に向いていると思いますか?」
職人「向いているかと言えば向いているとは思いませんが、何度も呼ばれるので素養はあると思います」

僕「だれでもできるとは思えませんが、どんな特質を持っている人が、できる業務ですか?」
職人「いろいろ必要だとは思います。客観的な視点、本質を見抜く力、選択と捨象、ジャッジメントの慣れ、メンタルの強さ、調整力、周囲への配慮。たくさん上げましたが、最も重要なのは体力ですね。」

横道に逸れますが、最後の体力の話を聞いて、僕が思い浮かべたのは育児。
乳幼児相手の育児で一番、重要なのは体力です。

火消し職人は、外見は普通。
切れ者でもなく派手でもなく、周囲に溶け込んでいますが、話すと会話の節々に思慮深さが溢れている。
すこし落ち着いたトーンで話すのは、それが説得に有効と分かっているのか、ただ疲れているのか。
どちらとも言えそうですが、「飄々」としたオーラをまとっています。

火消しの素養は汎用性が高い

かなり炎上しているプロジェクトがありますが、参加したいですか?
行くか行かないか自由選択できるなら、たいていの人はしり込みする問い。

求められるものは高く、生半可な覚悟では、迷惑になるだけ。
多分、たいていの人は、現実的には避ける判断をすると予想しますが、それが間違いではない。
その結果、現実には「火消し職人」が、本人意思とは無関係に、現場に投入され続ける。

僕は、トラブルシューティング経験は、できるだけたくさんあったほうが良いと考えています。

実際にトラブル収束経験は、業務理解力を上げるたり、関係者との関係値向上につながります。
回答を知らなければ、調査したり聞いたり、時に回答しないグレーで結論付ける。
各所への調整や報告が適切であれば、信頼度が向上。
トラブル収束経験が貯まれば、その引き出しから、企画立案時などに考える工具になる。
うまく着地させた経験は、プライベートでも使える汎用的なものになる。

家庭内不和にならないために、火消し職人の素養が有用なのは、自明です。
大事なポイントを捉え、的確にアクションし続ける。
炎上を避けるために、先回りしてアクションする。

本来は、たくさんの人が、トラブル収束経験があれば理想ですが、それは絵に描いた餅。
その素養がある人に、経験は蓄積されていく。
理想と現実の、よくある光景です。

「器用貧乏」が懸念点だが

自分の子どもが、火消し職人の素養がありそうと見たとき、それを薦めるか。
職種としては「産業再生機構」などを除き、特殊な技術なので一般募集要項などに記載されることは少ないものです。
よって、現実的な質問としては、トラブルに積極的にかかわらせたいか、が近い気がします。

自分の子どもに、トラブルに積極的にかかわらせたいか。
僕の解答はYesです。

数十年、社会人経験をして、見渡してみると「火消し職人」ができる人はわずか。
希少性もさることながら、自立しており、たいていのことは何でもそつなくこなす。

「何でも屋」は「何もできない屋」に、僕は同意します。
しかし、火消し職人は「何でも屋」ではなく「何でも高次元でやってしまう屋」です。
レポート1つとっても、その速度や出来、提供タイミングも、よく考えている。

別の見方、懸念点として「器用貧乏」の言葉がありますが、中途半端はたしかに微妙です。
入試偏差値でいうと、50あたりの人が何でもできます、のようなイメージ。

火消し職人は、総じて偏差値60後半から70以上。
自分の適性も客観的に見ているので、苦手なところを捨てる覚悟がある。

また、入試偏差値と企業での火消し職人との違いは、机上の論理ではない点。
企業内で独りよがりが通用するのは異例で、人間的配慮も心得ている。
自分のチームに、そうした人がいたら、どれだけ頼りになるか。

こうしたものは、一朝一夕で身につくものではなく、それなりの成功と失敗の経験が必要です。
心折れずに、継続できているのであれば、メンタル面の強さ、自分の限界点も意識している。

親として、自分の子どもにハード環境を求めるのか。
以下に読み替えれば、昔からのことわざがあります。

かわいい子には旅をさせよ。

安定志向が強まっている現代、自分や自分の子どもでなくても良い、という考え方もあります。
考えてみると、災害時のボランティアも近いものがある。

この上で、火消しできる能力があって、実際に行動している人は、カッコ良い。
孤高に近い存在の「火消し職人」は、身近なヒーローです。

さいごに

「好きなことを仕事にするか」は、世間にあふれる結論のないお題です。
僕は「好きな事」と「できること」は、区別するものと考えています。

両者が一致することはあるのかもしれませんが、それは稀有。
「できること」からはじめ、実績を積むのが一般的です。

火消し職人になりたいと思っても、その素養がなければ、本人も周囲もマズイ状況になる。
「できること」のを拡大して、「好きなこと」に近づくのは、おかしなルートではありません。