日本では1人当たりの穀物(穀類)消費金額が減少し続けています。
いろいろなところで見聞きする「お米離れ」はその1つで、穀類全体が落ち込む中で一番食べられなくなっています。
ご飯好きやパン好きがいるように、穀類が好きな人はいて、その味もおいしくなっている。
それでも健康やダイエット面からは、現代では調節される食材でもあります。
穀類消費支出額は微減を続けている
穀類(穀物)とはお米やパンの原料の小麦などイネ科の植物で、その種子を食材とするものです。
穀類の主成分は炭水化物で、その含有量は50%~70%。
昨今の健康志向からやや敬遠されつつある食材ですが、その消費金額推移が以下です。
出典:家計調査(総務省統計局)
総世帯でみると穀類合計の消費支出額は下がっています。
2000年は\75,435、2022年は\61,858と、82.0%に減少しています。
単身世帯では、2000年は\32,829 、2022年は\33,003で、増減率は100.5%と変わらず。
2022年の物価上昇も加味すると、消費量は金額以上に下がっていると考えられます。
出典:家計調査(総務省統計局)
穀類の4分類「米」「パン」「麺類」「その他穀類」についての金額推移が上記です。
4分類中、唯一減少しているのは「米」で2000年は\32,769、2022年は\15,236と増減率54.5%。
他の3分類「パン」「麺類」「その他穀類」は、22年間で増加。
増加率は「パン」は113.8%、「麺類」は102.7%、「その他穀類」は127.9%です。
出典:家計調査(総務省統計局)
2000年を100とした増減率にしてみると、特徴が見て取れます。
「米」は基本右肩下がり。
「パン」はゆっくり右肩上がり。
「麺類」100%付近だったのが2021年に増加。
「その他穀類」は右肩上がりで、2021年に増加。
2021年に小さな山がありますが、この年はコロナウィルス蔓延で内食が増えた年です。
カップ麺と即席麺は増加、もちが減少
「パン」「麺類」「その他穀類」の消費者支出について、さらに小分類した情報が以下です。
「米」は小分類がありません。
出典:家計調査(総務省統計局)
「パン」の小分類、「食パン」と「他のパン」はどちらも上昇。
2002年と2021年を比べると、「食パン」は114.9%、「他のパン」は112.0%。
出典:家計調査(総務省統計局)
「麺類の」小分類は、一番種類が多い。
一部データがない「カップ麺」と「即席麺」のデータは2005から年です。
小分類別に2002年(2005年)と2021年を比べると、「生うどん・そば」は87.4%、「乾うどん・そば」は67.0%、「パスタ」は111.8%、「中華麺」は95.4%、「カップ麺」は170.9%、「即席麺」は130.9%、「他の麺類」は101.6%。
「カップ麺」と「即席めん」が伸張、「生うどん・そば」や「乾うどん・そば」が下落しています。
出典:家計調査(総務省統計局)
「他の穀類」の小分類、「小麦粉」「もち」「他の穀類のその他」は、「もち」のみ減少。
2002年と2021年を比べると、「小麦粉」は106.4%、「もち」は73.7%、「他の穀類のその他」は254.3%。
日本の食料食料自給率は減少の一途
穀物に限った話ではなく、日本全体で食べ物全体の食料自給率推移が以下です。
分類は2つ、「生産額ベース」と「供給熱量(カロリー)ベース」。
「生産額ベース」の食料自給率は、食料をお金に換算したときの自給率。
小麦1kgとマグロ1kgでは値段が違い、この金額差を加味した自給率です。
もう1つの「供給熱量ベース」は、食べ物をカロリー換算したもの。
出典:令和4年度 食料・農業・農村白書(農林水産省)
「生産額ベース」も「供給熱量ベース」も、全体傾向は右肩下がりです。
日本の食べ物は外国に依存、その依存度は徐々に上がっています。
リスクを考えると国内自給率を上げる方針となりますが、何でも自国で作ることが理想的はなく。
自分の得意な分野でお金を稼ぎ、苦手な分野を外部委託・調達するのが基本戦略です。
日本は国土が狭く大規模農園が難しく、小麦を大規模生産しているアメリカから輸入してコストを抑える視点です。
出典:令和4年度 食料・農業・農村白書(農林水産省)
上記は1965年度と2021年度の食料消費構造の比較です。
1965年は「米」が、日本人のカロリーの半分弱を占めており、「米」の自給率は100%。
対し、2021年の「米」の全体カロリーに占める割合は2割強と米離れが進んでおり、「米」の自給率は98%。
「小麦」の自給率は、1965年は28%、2021年は17%。
「大豆」の自給率は、1965年は41%、2021年は26%。
いずれも自給率は減っています。
図表内右上、摂取熱量全体は1965年の2,459kcalから、2021年は2,265kcalに下がっています
日本人の体格は大きくなっていますが、高齢化で食べる量がへっているのもある。
食料輸入が増加している日本ですが、以下世界全体の穀物需給が以下です。
出典:米国の穀物・大豆の需給動向(農林水産省)
上記は世界全体の穀物需給と期末在庫量です。
受容と供給はほぼ同じ、期末在庫量がわずかに増加しています。
ロシアによるウクライナ侵攻を加味しても、2023年時点では世界全体では穀物需給がひっ迫していません。
出典:世界の穀物生産量(GLOBAL NOTE)
最後に世界の国別穀物生産量のランキングです。
1位が中国、2位がアメリカ、日本は34位です。
1位の中国から4位のロシアまでを足すと50.8%で、世界の穀物生産の半分は上位4か国で生産されています。
ここまでをまとめます。
・穀類の支出は減少し続けている
・一番減少しているのは「米」
・「パン」「麺」「その他穀類」は増加している
・日本の食料自給率は下がり続けている
・世界全体の穀物需給バランスは取れている
お米がおいしい
お米消費が落ちている日本ですが、昭和時代は「どか弁」と呼ばれる弁当がありました。
どかべんは、日本において「どか弁」または「どか辨」の字を当て、土木作業等に従事する日雇労働者の俗称である土方(どかた)の「どか」と弁当または弁当箱の「べん」を略した呼び名で、土方が常用した金属製の大きな蓋付きの弁当箱または弁当を言う。ご飯大盛りの弁当のことも言う。
公共職業安定所(現、ハローワーク)による紹介・斡旋で働いた失業対策労働者の日給が240円(100円2枚と10円4枚)であったことからにこよんと呼ばれた日雇労働者が、激しい肉体労働によって空腹となりそれを補い満たす見合った食事の量を得るために長さ20cm、幅10cm、高さ5cm(cmはそれぞれ程度)のアルミ製の大型の弁当箱を用いた弁当を食したことに由来する。おかずとしては梅干一つを弁当の中央に入れたもの(いわゆる「日の丸弁当」)がよく見られた。
出典:どかべん(wiki)
ご飯大盛で、梅干しが真ん中に乗っているだけ。
令和時代の若者は、テレビですら見たことがないものかもしれません。
お米が食事の中心というか大半だった、日本の1つの歴史です。
対し、最近はお米の消費量が減っている。
僕の知り合いの女性は、夜ご飯を自宅で食べるときは「お米」は食べない話も聞きます。
糖質制限が普及し、健康面でもダイエット視点でも、炭水化物は肩身が狭い現代。
健康維持や太らないために、食べ物の種類や量を調節するのは、現代では一般的になりました。
ここには、食べ物を選べる前提があります。
第2次世界大戦終了後の復興期に生まれた高齢者の方から、僕は何度か「現代は(食べ物に)恵まれている」の言葉を聞いたことがあります。
食べたくても食べられないではなく、食べ物を選ぶ飽食の時代。
飽食の単語も、昭和世代からしか聞いたことがありません。
上のデータでは日本の食料需給率は下がり続けており、この点についてご高齢者の方々は一言モノ申したい可能性も感じます。反面、いまの若者が経済的理由は別として、食べ物がなくなる心配している話は聞いたことがなく、ここにも世代間格差を感じます。
何にせよ年齢に限らず、現代は食べ物をある程度コントロールして食べる時代。
老人世代は高血圧や糖尿病などの病気視点、若者はバランス感覚を持って体型維持とリスクを避ける発想です。
食事はドクターストップのような外圧がなければ、現代において自由裁量が広いもの。
特に一人暮らしの方であれば、何を食べるかは自分で決定できます。
食後に毎日、スナック菓子を食べても、だれかにとがめられることはありません。
以前、このブログで僕はクジラが食べられなくなったが残念とは思っていない、と書きました。
その時、自分の中で食べられなくなったら残念に思う物を考えた結果、その中に「お米」がありました。
お米が一切食べられなくなったら、僕にとっては食べる楽しみの何割かは減少すると感じそう。
そのお米は、品種改良のたまもので、以前よりおいしくなりました。
「お米をおかずにお米を食べる」という物言いも、僕には同意できる美味しいお米もある。
ですが、僕も時代の潮流に沿って、いまお米を食べる量を控えるようになりました。
潮流と書きましたが、年齢的に必要エネルギーが下がってきたのもあります。
さいごに
アメリカの著名な投資家ウォーレン・バフェットさんは、コーラを1日5本飲むという話があります。
本当かどうかは知りませんし、どのサイズのコーラなのかも分かりません。
ダイエットコーラではなくレギュラーコーラだったと、どこかで読んだことがあります。
何にしても、清涼飲料水の筆頭であるコーラを、長年飲み続けている。
一般的には健康に悪いと分かっていても、習慣として続けている。
好きな飲食物を控えて健康を維持するか、ある程度リスク許容して人生の楽しみを味わうのか。
リスクに敏感な投資家であるバフェットさんだからこそ、この程度は良しとバランスを取っている気もします。