この文章のトピックスは以下です。
・ソフトクリーム世界市場でみても2029年までは伸び続ける予想
・ソフトクリームを購入する人は年間12個以上が最多
・ソフトクリームは夏場に圧倒的に消費される
・ソフトクリームは「間食・おやつ」でも食されている
・「観光地」でも食べられるが「コンビニ」消費も多い
・ソフトクリームの好きな味1位は「バニラ系」
ソフトクリーム世界市場は伸び続けていく
出典:ソフトクリーム製造機の世界市場規模(ソーシャルワイヤー株式会社)
上記は全世界の情報ですが、ソフトクリーム製造機の世界市場規模予測です。
コロナウイルスまん延時期に一度、市場が縮小していますが、その後は伸び続ける予測になっています。
ソフトクリームは買う人と買わない人が分かれている
出典:データ広場 -2021年のデータ1-(日本ソフトクリーム協議会)
上記はソフトクリーム、年間購入個数です。
1位「12個以上」で32.7%、2位「買っていない」20.0%。
たくさん買う人とまったく買わない人が1位と2位です。
出典:データ広場 -2021年のデータ1-(日本ソフトクリーム協議会)
上記はソフトクリーム、月別購入個数です。
圧倒的1位は「8月」53.1%、2位「7月」31.7%。
この2つを足すと84.8%となり、たいていの人が想像する通りソフトクリームは夏場に購入する人が多い。
出典:データ広場 -2022年のデータ-(日本ソフトクリーム協議会)
上記はソフトクリーム、購入タイミングです。
1位「間食・おやつ」30.3%、2位「レジャー・遊びの時」17.9%、3位「暑い時」10.7%。
4位「甘いものが欲しい時」10.2%ですが、コンビニなど身近に購入できるお店がある人がこう答えているのか。
出典:データ広場 -2022年のデータ-(日本ソフトクリーム協議会)
上記はソフトクリーム、購入場所です。
1位「観光地」22.7%、2位「コンビニ」22.1%、3位「高速道路のPAなど」21.3%。
2位に「コンビニ」が入っているので、やはりいまソフトクリームを買う場所として身近なコンビニがあるようです。
3位の「高速道路のPAなど」は、車に乗る機会がある人は、PAの人の動きを見て確かにと同意する気もします。
ソフトクリームもアイスクリーム同様定番味が人気
出典:データ広場 -2022年のデータ-(日本ソフトクリーム協議会)
上記はソフトクリーム、好きな味です。
1位「バニラ系」27.8%、2位「チョコレート」18.1%、3位「抹茶」15.2%と定番です。
4位「ミルク系」13.8%はアイスクリームの好きな味では上位に入らない、ソフトクリームらしいフレーバーです。
出典:データ広場 -2024年のデータ-(日本ソフトクリーム協議会)
上記はソフトクリーム、今後食べてみたい味です。
1位「地域、期間限定商品」25.7%、2位「昔ながらの」18.5%、3位「贅沢素材・超高級」17.0%。
4位「量より質」12.2%と8位「質より量」4.8%、6位「健康に気を使った」と7位「罪悪感たっぷり」の2つは真逆の回答です。
白い螺旋(物語)
(この物語の人物、商品、店名は架空です。)
僕の中の祖父母との思い出は、ソフトクリームである。
北海道の大自然を感じさせる、すこし螺旋が崩れた濃厚な味のソフトクリームだ。
僕が中学2年の夏、父に連れられて北海道の父方の祖父母が営んでいる家族経営の牧場に行った。
自分が生まれてからずっと東京に住んでおり、東京からは北海道は頻繁に行ける距離ではなく、祖父母宅の訪問は今回で3回目、前回は小学3年生のときだった。
その牧場は札幌から車で二時間ほどの場所にある。
札幌から祖父母の牧場までの道中は、僕が住む東京に比べ信じられないくらい信号の少ない道である。
東京の大きな国道では遠くまで見ると何個も信号が見えるが、北海道は視界が開けている場所でも信号ゼロの景色も普通に存在する。
そんなドライバーにとって気持ちが良いアスファルトの道を走り、牧場の私有地に入ると道は一転、砂利道になる。
私道の横には柵があり、牛たちがのんびりと草を食んでいた。
車を降りると柔らかい風の匂いとともに、空の広さを感じられる開けた場所だ。
滞在中の午後のひと時、祖父は僕に「ちょっと行くか」と軽トラを指さして声をかけてきた。
祖父はどこに行くのか言わなかったが、やることもないので興味本位でついていくことにした。
祖父の車が着いた場所は、町の小さなソフトクリーム屋だった。
その店の建物は木造で古びてはいるが、がっしりとしており、冬の北海道をずっと乗り越えてきた風格を感じさせるものだった。
そしてお店の看板には「うしのしっぽ」と書かれていた。
店の中に入ると中年女性の「いらっしゃいませ」の声が迎えてくれる。
店内はシンプルで、2人が向かい合って座れる木製の椅子と机が2セット、あとは小さなカウンターとレジが1つあるだけ。
支払方法は現金のみというのも、2025年の東京なら考えにくいが、このお店らしい。
メニューは味の違うソフトクリームが3種類と、ジェラートが1つのみ。
祖父は黙ってそこで2つ、ソフトクリーム注文し、僕にひとつ手渡した。
店内にお客さんはいなかったので、店の中で食べることもできたが、祖父は外で食べたかったのだろう、乗ってきた軽トラの荷台に乗って、そこでソフトクリームを食べることになった。
荷台に座ってソフトクリームを一口ほおばる。
それは、今まで食べたどんなソフトクリームよりも味が濃かった。
濃厚だがしつこくなく、ミルクの甘い味が口の中いっぱいに広がり静かに溶けていく。
それはまるで、時間がゆっくりとほどけていくような味だった。
寡黙な祖父とのここまでの道中、ほとんど会話らしい会話はなかった。
多感な時期の僕にとってそれは居心地の悪い時間だったが、窓の外を見てその時間をやり過ごしていた
そんな祖父が、ソフトクリームを並んで座って食べている時、ぽつりと話し出した。
「ばあさんと初めて話したのも、ここのソフトクリーム屋だったんだ。」
「へぇ。」
「おれが高校生のときさ。彼女がこの店でバイトしててな。ソフトクリームを巻くのが下手で、いつも螺旋が崩れてた。でも、それがなんか良かったんだよ。」
祖父はそう言って照れくさそうに小さく笑った。
僕はその笑顔を、なぜかずっと覚えている。
その時の祖父母宅への帰省は短期滞在で、数日して僕は東京の日常に戻った。
学校、部活、スマートフォン。
祖父との会話は、僕の日常の中に静かに沈んでいった。
その時食べたソフトクリームの味も、少しずつ薄れていった。
それから2年がたち、僕が高1になった時、祖父が亡くなったと父親から聞かされた。
頻繁に会うことはなかった祖父なので「そうなんだ」としか感情は動かなかったが、僕はそのときなぜかあのソフトクリームの味を思い出した。
口の中に、あの白い螺旋がふわりと蘇った。
数年後、僕は大学生になっていた。
学校の授業は比較的真面目に受けていたので単位の心配もなく、コツコツバイトして金欠でもない。
夏休みにどこか旅行に行こうと考えたとき、祖父母の牧場を思い出した。
父親にいま、あの牧場はどうなっているのかと聞いたところ、今は父の兄が継いでいるらしい。
そこに僕が2、3日、滞在は可能か父に聞いたところ、大丈夫だと思うが兄に相談してみるという話で終わった。
その日の夜、父から父の兄から牧場滞在はいつでも大丈夫の回答とともで、日程が決まったら連絡してほしい、と先方の電話番号を渡された。
僕は自分の日程調整して父の兄に連絡を取り、あの牧場に行くことにした。
札幌に降り立ち、レンタカーで今回は自分の運転で牧場に向かう。
ナビが標準装備されたレンタカーだったので、牧場の住所を入力すればそこまで連れて行ってくれる便利な時代だ。
道に迷うことなく牧場について、車を止めて車外に出る。
相変わらず空は高く、牛たちや風も変わらず、ただそこには祖父の姿だけがなかった。
今回の訪問について、表向きの理由として祖父の墓参りと父親にも父の兄にも伝えてはいるが、裏の目的は「うしのしっぽ」のソフトクリームだ。
あの味が自分の心のどこかに引っかかっており、それが味なのかそれとも別の何かなのか。
この旅行に出発する前、東京で「うしのしっぽ」をネット検索してみた。
1ページしかない公式と思えるサイトがヒットし、いまでも開店しているか不明だが、住所はそこから取得できた。
父の兄に電話で「うしのしっぽ」が閉店になっていないか聞いても良いと思ったが、なぜか気恥ずかしくて聞けず。
仮に「うしのしっぽ」が閉店していても、北海道旅行したと考えれば良いと僕は思い、到着翌日、祖父のお墓参りを終えたのち、僕は「うしのしっぽ」を目指した。
店はまだやっていた。
中2の時、訪れたときから時が止まったかのように、何も変わらずそこに残っていた。
店の前の空き地に車を止めて降りる。
店内に入ると、2セットしかないテーブルの1つに祖母が座ってあのソフトクリームを食べていた。
彼女は僕を見ると、少し驚きそして微笑んだ。
僕はカウンターでソフトクリームをオーダーし、それを受け取り祖母の向かいに座った。
祖母が嬉しそうに話しかけてくる。
「前におじいちゃんと、ここに来たことあるでしょ?」
「うん。中2のあのときの味が忘れられなくて、それを確かめに今回ここに来たんだ。」
目を閉じて僕はソフトクリームを一口食べる。
舌の上というか口の中全体で味わってみる。
濃厚だ。
自分の記憶と100%同じとは言えるか分からないが、樹齢数百年を思わせるどっしりとミルクの土台にほんのり甘い花が咲いている。
目を開けてみると、向かいに座っていた祖父母は微笑んでいた。
「おいしいかい。」
「うん、僕にとってソフトクリームといえばこの味なんだ。数年ぶりだけどこれを食べられて満足だよ。」
「それは良かったねぇ。」
残りのソフトクリームをほおばる。
その時ふと、祖父の言葉を思い出した。
「僕がおじいいちゃんにここに連れてきたもらった時、おじいちゃんがおばあちゃんとのなれそめを話してくれたんだ。おばあちゃんの作るソフトクリームの螺旋が少し崩れていたのが良かったと、照れくさそうに言っていたよ。」
「あれ、やだねぇ。あの人はそんなことをあんたに話したのかい。でもね、それは私にとって一番の宝物なんだよ。」
そう言うおばあちゃんも、おじいちゃんほどではないが少し照れくさそうにしていた。
この時、このソフトクリームが祖父と祖母、祖父と僕、いま祖母と僕をを螺旋状につなげてくれたことに僕は気づいた。
さいごに
ソフトクリームは出先で食べることが多い食べ物だと、今回見てきたデータにもありました。
旅先であれば非日常感を演出する食べ物とも言え、それぞれの人にそれぞれの思い出もできる可能性を感じます。
家族で旅先で食べる、恋人同士の初デート、子どもが祖父母宅の帰省タイミングに毎回食べさせてもらう。
ソフトクリームは、家族の歴史のワンシーンにもなりやすい食べ物です。