人口減少国における共生と競争の同居の意味

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統計データ

日本人口減少ニュースは、すでに手あかのついたもので驚きはありません。
人口の減少の要因となりえる結婚件数も、調べてみると減少しています。
唯一、人口増加に影響するのは「有配偶出生率」の増加くらい。
人口維持を目指すなら、増やすか、外部から受け入れるか。
どちらにしても、質が伴わければ、本末転倒です。

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日本人口は減少している

子どもに関して最近、2つ気になるニュースを見ました。

出典:日本の人口、1年間で鳥取県の人口分近い「50万人」減る(読売新聞)

1つ目は上記ですが、そもそもタイトルが間違っています。
「日本の人口は30万人減少」が正しく、「日本人のみに絞ると50万人減少」で、「残りの20万人は外国人受け入れ」です。

実際の数値をグラフ化してみると以下です。


出典:人口推計の結果の概要(総務省)

青色(=日本人人口)は下がってきており、オレンジ色(=外国人)が増えています。
あまり一般認知されていない気もしますが、すでに日本は外国人を受け入れている国です。

気になるニュースの2つ目が、コロナ過で妊活を控える動きです。
病院でウィルス感染する心配、感染したときのケアがどうなるのか、子どもへの影響が心配。
妊活当事者は時間との勝負の中、いったん立ち止まるかの判断は、厳しいものがあります。

また妊活有無とは別に、2020年、コロナ過で出産を控える人が一定数いると考えると、来年の出生数は国にとって厳しい数字となりそうです。
政府はコロナの責任にする可能性もありますが。

人口減少要因でいつも出てくる「少子化」の話題。
ファクトチェック的に、いくつかの情報を見てみました。

結婚も離婚も減っている


出典:令和元年(2019)人口動態統計の年間推計(厚生労働省)

いまやだれもが知っている、出生数の減少と、合計特殊出生率の低空飛行。
合計特殊出生率は2005年が1.26%と最低値、その後徐々に上昇して2015年に1.45%。
そのあとまた下がって2019年は1.36%です。
ここには晩婚化の背景がありますが、それは置いておきます。

ここからは、いくつかの視点で、少子化の影響がありそうな情報を並べてみます。
まずは、婚姻に関する情報です。


出典:令和元年(2019)人口動態統計の年間推計(厚生労働省)

日本の婚姻件数と婚姻率が上記です。
婚姻率=年間の婚姻件数÷10月1日現在日本人人口×1000です。

婚姻件数も婚姻率も減少しています。
婚姻件数の最高値は1972年の1,099,984件、最低値は2019年の583,000件、減少率は47%。
戦後から通してみても、2019年が最低値です。


出典:令和元年(2019)人口動態統計の年間推計(厚生労働省)

離婚情報が上記です。
離婚率=年間の離婚件数÷10月1日現在日本人人口×1000です。

婚姻に比べると、件数も割合も小さいです。
離婚件数は2002年が最高値で289,836件、それ以降徐々にですが下がってきて2019年は210,000件。

なぜ、離婚情報も見たかというと、離婚件数が増加していれば、少子化の原因になりえますが、結果はそうではなかったという事です。

結婚すると子どもを産む割合が増えている

結婚した人が子どもを産む割合を「有配偶出生率」と言います。
有配偶出生率=嫡出出生数(母の年齢15~49歳)÷10月1日現在における日本人女子の有配偶人口(15~49歳) ×1,000です。


出典:人口動態調査(厚生労働省)

これは1つのポイントで、青色グラフの有配偶者出生率は、増加しています。
分かりやすい言葉でいうと「結婚した人たちは、子どもを産む」。

ここで先ほどの婚姻件数がかかわってきます。
結婚する人が子どもを産む割合が増加しているのであれば、結婚件数が同じであれば増加の可能性につながる。
ですが、結婚件数は減少なので、有配偶出生率のわずかな上昇では、プラスに転じることはないようです。

また、有配偶出生率は、子どもの数を見ていません。
1人でも2人でも3人でも一緒。
そこで次の情報の「完結出生時数」です。
「完結出生時数」は夫婦の最終的な出生子ども数のこと。


出典:完結出生児数(国立社会保障・人口問題研究所)

グラフでは、一度も上昇することなく、減っています
結婚して子どもを設けるが、1家族当たりの子どもの数は減っている。

ココまでをまとめると以下です。
結婚する人は減った
結婚する人は子どもを産む可能性が上がっている
ただし1家族当たりの子どもの数は減っている

これ以外にも、社会の状況など少子化要因は上げられますが、ひとまず、具体的数字からの結果です。
補足として、母子家庭と父子家庭がどの程度の数なのかも見てみました。


出典:平成27年国勢調査(総務省統計局)

母子父子家庭の件数は1990年と2015年を比べると2割増加していますが、全世帯に占める割合は同じ1.6%。
割合が増加していれば、少子化に影響を与える可能性もありましたが、全体比からも増加率からも、影響は小さいです。

効果的な対策は実施されていない

少子化を題材としているこの文章に載せていない項目として、「家計状況(収入と支出)」、「子育て環境」があります。
給与が増えず、税金は増え、子育て費用は増加。
社会全体が、子育てに寛容ではない。

どちらも、大きな要因で深堀すると長くなりそうなので、今回は対象外。
これを除いて、今回調べた情報のみから少子化対策するなら、以下が考えられます。

結婚する人を増やす
外国人受け入れを増やす
結婚している人の子どもの数を増やす
シングルでも子どもが増える環境を作る
結婚制度をなくす

僕は現在、子育て中の当事者ですが、上記の対策案の実現度を判定すると、どれも実現しない。
フランスの出生率が上がった(実際は直近は下がっている)話が比較として良く出てきますが、詳細を見ると移民受け入れが原因でフランス国民のみで見ると、日本同様に人口減少している。
保守的な日本がこの先、移民の大幅増加を選択するとは思えず、実現はしないと予想。

若者が「結婚や家庭を持つことに対し前向きに考える」のは、スマートな彼らが選択する確率は下がる一方。
LGBT受け入れですら、政府も国民もおよび腰で、結婚制度をなくすくらいのドラスティックな変化は夢物語。
少子化対策、本気度ゼロの日本政府なので、人口減少はなるべくしてなるです。

以前も書きましたが、僕が考える人口増加に一番効果が高いのは、子どもを産んだ人への「お金」インセンティブ。
子どもの数によって一時金なのか、ハンガリーが導入した「子ども4人産んだら所得税一生免除」のようなもの。

ハンガリーが導入した案は、感情論としては微妙な感はあります。
女性が4人産んで出産後に働く、このルールを進んでくださいと暗に要求される。
そのルールに乗れない人への配慮。
感情論としては受け入れにくいかもしれませんが、良い点も見いだせます。

女性が社会復帰した段階で、パートナーの男性が仕事を減らして、家庭の事を顧みるようになる。
賛否があるにせよ、その柔軟性は日本の政府に欠けていると感じました。

「共生」と「競争」を獲得する

何度か僕はこのブログに、人口減少は良いことと記載しました。
理由は単純に人が多すぎる、頭数の時代ではないと考えているからです。

僕は東京在住で、東京の通勤状況を肌で知っていますが、通常はオフピークを狙う、どうしても必要な時以外ラッシュアワーに乗らないよう気を付けています。
それくらい、人心地がしない。
住宅事情についても狭小住宅で、1戸1戸の過密感は高いです。

成熟社会は一定の文化度の高さなり、一定の文化度になった国は少子化に向かうのも世界標準です。
生まれたときから停滞した社会で生きてきた若者が、物事を判断するとき、コスパを考えるのは防衛本能とも言えます。
そしてコスパ意識を考えたなら、子どもを持たない、子どもの数を減らすのは、現実をみているだけで違和感はありません。
それに対し、「人口減少で大変だ」と声を上げているのは、中高年以上、特に高齢者なのではと僕は感じています。

その高齢者は、1970年代の高度復興経済時代を経験しており、右肩上がりの社会が当たり前だと感じていますが、すでに時代は変わっています。
高度経済社会で日本のGDPが伸びた要因は、人口ボーナスが最大の理由と僕は考えており、人が減っていく国においては衰退が既定路線です。

人口減少しても、一定以上の国際競争力が必要なのか、それは個人の考えが出るところです。
ただ、時代は労働集約型ではなく、頭脳労働が主戦場になっており、そこでは「数」ではなく「質」が求められます。
人口減少を受け入れ、社会保障のソフトランディングを目指しつつ、「質」が高くなる方向性が日本の目指す先です。

「質」を考えるうえで、現代日本は子どもに極端に「競争」を回避させすぎていると僕は考えています。
手をつないで徒競走で全員一緒にゴールさせるような競争排除で、強い人間が作れるのであれば良いです。
有名私立高校出身者が口をそろえる、周囲と切磋琢磨する「共生」環境こそが宝だったという発言。

「共生」と「競争」は正反対で同居できないのではなく、両方を獲得するのが理想です。

補足として、ワシントン大学保健指標評価研究所が「2100年までの人口や出生率の予測」を、2020年7月に発表していました。
Fertility, mortality, migration, and population scenarios for 195 countries and territories from 2017 to 2100: a forecasting analysis for the Global Burden of Disease Study

この研究結果では2100年の日本人口は5,200万人~6,900万人、出生率は1.37でした。
僕が一番驚いたのは2100年、GPDランキングで日本が4位にとどまっていることです。

この研究結果通りの未来になるのであれば、2100年日本は人口が減って、国際競争力は高い。
2100年の日本は魅力的な国と、僕は感じました。

さいごに

今回、少子化の数値を見ましたが、コロナ過で恋愛が減少しないかと思っています。
オブラートに包まれたような外出制限が掛かっている中、独身者はどうやって新たな出会いの機会を得るのか。
オンライン飲み会のようなものが、代替として機能するのか。

また、婚活市場でも、コロナ影響で男性側の収入が減って、来年さらに厳しくなるニュースを見ました。
僕は未経験ですが、婚活登録男性は、自分の収入を昨年の源泉徴収票で証明が必要らしい。
来年は年収が下がり、マッチ率が低くなり、成婚率も低くなるシナリオです。

結婚しない理由の不動の1位は「適当な相手がいない」ですが、コロナは少しこの理由に現実感を持たせました。