この文章のトピックスは以下です。
・コロナ禍から2024年まで焼肉支出は低下していた
・それが2025年に大きく伸長した
・外食産業売上全体ではコロナ禍以外前年比増加が続いている
・月別にみると焼肉を一番多く食べる月は8月
・焼肉店利用回数は年数回が最多
・1回の支払い金額は2000円から10000円未満が多い
2025年には焼肉支出が約1.5倍
以下の「家計調査」からのデータである「焼肉(外食)」とは、「焼肉店で焼肉を伴った食事」を指します。
自宅で購入した肉を焼いて食べるものは含まれません。

出典:家計調査(家計収支編)調査結果(総務省統計局)
上記は2人以上世帯の年間焼肉支出推移です。
2015年\6,087、2025年\8,854、前後比+\2,767(145.5%)。
2019年からのコロナ過で2024年までしばらく低調が続いています。
その後、2025年は大きく伸長、2015年に比べると約1.5倍(145.5%)の支出額になっています。

出典:経済構造実態調査(一般社団法人日本フードサービス協会)
上記は外食産業全体の売上、対前年比です。
2020年のみ対前年比で落ち込んでいますが、それ以外は100%以上。
2025年の対前年比は107.3%と、物価高影響も含め伸びています。
それでも、1つ上のグラフの2025年焼肉支出の増加はこれよりも大きい。

出典:家計調査(家計収支編)調査結果(総務省統計局)
上記は2人以上世帯の月間焼肉支出です。
一番支出が多い月は8月、一番少ないのはその翌月の9月。
8月は夏休みもあり、帰省先で両親や古い友人と焼肉を食べる姿が想像できます。
焼肉を食べる頻度は年数回が最多

出典:市場調査データ 焼肉店(2025年版)(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
上記は焼肉店の利用頻度です。
1位は「年に数回程度の利用頻度だ」で全体に占める割合は56.7%。
半数強の人は焼肉店を年に数回利用しています。
2位は「かつて利用したことがある」で19.9%と、いまは利用しなくなった人達です。
高齢になると一般的に脂から距離をとるようになりますが、焼肉店に行かなくなるシナリオは高齢化社会の副産物とも言えます。

出典:市場調査データ 焼肉店(2025年版)(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
上記は焼肉店の利用基準です。
1位は「提供メニューのおいしさや豊富さ」です。
焼肉店はたくさんのお肉の種類、またサイドメニューが充実しておりそれが楽しみでもある。
2位は「低価格、お得感」で、コスパ時代を感じます。

出典:市場調査データ 焼肉店(2025年版)(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
上記は焼肉店で使う金額です。
1位は「3000円~5000円未満」30.8%。
2位は「5000円~10000円未満」22.1%。
3位は「2000円~3000円未満」18.3%。
この3つで7割以上を占めており、焼肉1回位あたりの支出は2000円から10000円未満がボリュームゾーンです。

出典:市場調査データ 焼肉店(2025年版)(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
上記は焼肉店を利用する理由です。
1位は「おいしい肉が食べたいため」で、そのモチベーションはやはりお肉。
普段、自宅で食べるお肉とは一味違う、お店ならではの複数種類のお肉を味わいたい。
2位は「少人数、大人数、両方利用しやすいため」。
焼肉店は比較的大人数のグループでも利用しやすいのは確かであり、一人焼肉も最近増えています。

出典:市場調査データ 焼肉店(2025年版)(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
上記は今後の焼肉店を利用するかのアンケート回答です。
1位は「ぜひ利用したい」で51.2%。
半数の人は焼肉店を今後も利用したいと考えています。
2位の「どちらかと言えば利用したい」も含めるなら83.0%です。
「あまり利用したくない」と「全く利用したくない」を足すと5.8%。
大半の日本人は焼肉店が好きです。
(物語)十歳の約束
伯父は、僕がまだ焼肉の単語を発音できなかったころから、いつか一緒に焼肉を食べに行こうと言っていた。
「もう少し大きくなったらな」
伯父はいつもそう言った。
僕が四歳のときも。
五歳のときも。
小学校に入ったときも。
僕が「もう少しって、いつ?」と聞くと、伯父は決まって少しだけ考えるような顔をした。
「十歳くらいかな」
「十歳?」
「そう。十歳になったら、焼肉を食べに行こう」
だから僕にとって十歳というのは、少し特別な年齢だった。
そしてようやく次の誕生日が来れば2桁になる。
焼肉屋に行ける。
それだけのことなのに、僕は十歳になる日をずっと待っていた。
伯父は、僕が小さいころから近くにいた。
学校から帰るときに迎えに来てくれたこともあるし、夏休みに一緒に虫取りをしたこともある。
僕が自転車に乗れるようになったときも、後ろから走ってついてきてくれた。
僕が自転車練習中に転んで膝を擦りむいたときには、
「そうやって痛い思いもして、何でもできるようになっていくんだ」
と言いながら、近くの水道で血を洗い流してくれた。
でも、そのあとだれも見ていないところで、
「痛かったな」
と小さな声で言った。
僕はそれを今でも覚えている。
伯父は、そういう人だった。
少しぶっきらぼうで、でも僕をよく見ていた。
僕の好きなジュースも知っていたし、苦手な野菜も知っていた。
僕が眠くなると、急に口数が少なくなるのも知っている。
そして、焼肉の話をするときだけ、少し遠くを見るような目をした。
僕には、それが不思議だった。
十歳の誕生日を迎えてしばらくした日曜日。
伯父から電話があった。
「行くか」
「どこに?」
僕はいよいよか、という期待を持ちつつわざと聞いた。
伯父は笑った。
「焼肉だよ」
僕は電話を持つ手とは別の手で小さくガッツポーズをした。
そのときのことを思い出すと、今でも少し笑ってしまう。
焼肉屋の店に入ると、肉の匂いが漂っていた。
煙がもくもくするような店ではなく、家族連れが多い大型チェーン店だ。
店内には家族ずれや小さな子どももいて、お父さんが肉を焼き、お母さんが飲み物を取りに行っている。
壁には大きなメニューがあり、カルビ、ロース、ハラミ、タン、ホルモン。
僕には知らない名前ばかりだった。
「どれ食べたい?」
「全部」
「そんなに食べられるか?」
「食べられる」
「じゃあ、まずカルビ」
伯父がテーブル備え付けのタブレットで注文した。
それからドリンクバーに行った。
僕はカルピスを選んだ。
席に戻ると、伯父が笑った。
「やっぱりそれか」
「何が?」
「小さいころから変わらないな」
「覚えてるの?」
「忘れるわけないだろ」
肉が運ばれてきた。
1皿には10切れ前後の肉が乗っており、その皿が何枚もテーブルに並ぶ。
お店に入って席に着いたとき、店員さんが持ってきてくれた肉を焼く用のトングで、伯父が網に一枚の肉を置いた。
ジュッ。
脂が落ち、炎が上がる。
僕は思わず身を乗り出した。
「すごい」
「これが焼肉だ」
伯父は笑った。
僕はカルビを食べた。
柔らかかった。
甘かった。
いままで食べたどんな肉とも違っていた。
「おいしい」
「そうか」
「すごくおいしい」
伯父は肉を焼きながら、僕の顔を見ていた。
嬉しそうだった。
いや、嬉しそうというより、何かを確かめるような顔だった。
「次はハラミな」
「うん」
「タンも食べてみろ」
「この薄くて大きいヤツ?」
「ああ、タンは焼肉のたれではなくレモン汁で食べるんだ」
「あーこれは味の方向性が違っていて、おもしろい」
僕は次々に肉を食べた。
知らない味を知るたびに、世界が少し広がっていくようだった。
そして僕は、自分でも肉を焼いてみたくなった。
「僕が焼いていい?」
「もちろん、やってみろ」
トングを握る。
網の上に肉を置く。
ジュッ。
炎が上がる。
「早くひっくり返せ」
「わかってる」
「焦げるぞ」
「わかってるって」
少し焦げた。
僕はそれを食べた。
「どうだ?」
「おいしい」
「焦げてるぞ」
「でも、おいしい」
伯父は嬉しそうな中に少し影があるように笑った。
その笑い方が、僕には少しだけ変に思えた。
まるで、何年も待っていた何かがようやく終わったような笑い方だった。
食事の最後に、僕はフルーツを取りに行った。
オレンジ、パイナップル、ぶどう。
お肉を食べすぎてお腹いっぱいなので、皿に少しずつ取った。
本当はさらに山盛り食べたいがしょうがない。
席に戻ると、伯父は窓の外を見ていた。
「ねえ」
「ん?」
「なんで十歳なの?」
「何が?」
「焼肉」
伯父はしばらく黙っていた。
「どうして、十歳になるまで連れてきてくれなかったの?」
伯父はすぐには答えなかった。
やがて、小さく息を吐いた。
「お前のお父さんと約束したんだ」
「お父さんと?」
「ああ」
僕の父親は、僕が六歳のときに亡くなった。
だから父親との記憶は、あまり多くない。
声も、もう少しずつ思い出せなくなっている。
「お父さん、焼肉好きだった?」
「大好きだった」
「じゃあ、なんで一緒に行かなかったの?」
「行ったことはある」
「そうなの?」
「何度もな」
伯父はそこで言葉を止めた。
「ただな」
少し間を置いてから、言った。
「お前のお父さんは、十歳になったらお前を焼肉に連れていくつもりだった」
僕は黙った。
「お前がまだ赤ちゃんの頃から、そう言ってた」
「僕が?」
「ああ」
「赤ちゃんのときから?」
「そうだ」
伯父は笑った。
「お前がまだ何も食べられないのに、焼肉屋の話をしていた」
僕は笑った。
「変なの」
「変なやつだったよ」
伯父も笑った。
でも、その目は笑っていなかった。
「十歳になったら、一緒に行こうって」
僕は何も言えなかった。
「だけど、お前のお父さんは、その約束を果たせなかった」
店の中では、だれかの笑い声がしていた。
肉の焼ける音もしていた。
ドリンクバーの機械が、小さな電子音を立てた。
「だから俺が代わりに連れてきた」
僕はフルーツの皿を見た。
ぶどうが1つ、パイナップルが2つ、オレンジが1つ。
「……じゃあ、ずっと待ってたの?」
伯父は答えなかった。
帰りの車の中で、僕は眠らなかった。
窓の外を見ていた。
街灯が流れていく。
信号が赤になり、車が止まる。
僕はふと思い出した。
「ねえ、伯父さん」
「ん?」
「僕、前にここに来たことある?」
伯父の手が、ほんの少しだけハンドルを強く握った。
「……どうして?」
「なんとなく」
店の入口。
赤い看板。
ドリンクバー。
網の上で肉が焼ける匂い。
何もかも初めてのはずなのに、何かが頭の中で引っかかっていた。
伯父はしばらく黙って車を走らせた。
やがて赤信号で止まると、僕のほうを見た。
「一度だけな」
「やっぱり?」
「お前が一歳のときだ」
「一歳?」
「ああ」
「じゃあ、僕はその時、焼肉食べたの?」
「食べられるわけないだろ」
伯父は笑った。
「お前はずっとベビーカーで寝てた」
「じゃあ、何しに行ったの?」
伯父は前を向いた。
「お前のお父さんがな」
そこで一度、言葉を切った。
「この子が大きくなったら一緒に焼き肉を食べるつもりだけど、どうしてもいま、待てないので連れていくって言ったんだ」
「まだ一歳なのに?」
「ああ」
僕は笑った。
「変なの」
「そうだな」
伯父も笑った。
車が走り出した。
しばらくして、伯父が言った。
「でもな」
「うん」
「その日、お前のお父さんはもう1つ、変なことを言った」
「何?」
「もし自分が十歳まで待てなかったら、代わりに俺が連れていってくれって」
僕は息を止めた。
「……伯父さんにそんな話をパパはしていたんだ」
「ああ」
伯父は前を向いたままだった。
「だから俺は、お前が十歳になるまで待った」
その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中で、これまでの記憶が1つずつつながっていった。
四歳のころ。
五歳のころ。
小学校に入ったころ。
「もう少し大きくなったらな」
「十歳くらいかな」
あの言葉は伯父自身の約束ではなかった。
父親から預かった約束だったのだ。
僕はしばらく何も言わなかった。
窓の外を見た。
街の明かりがぼんやり滲んでいた。
「伯父さん」
「ん?」
「ありがとう」
伯父は何も答えなかった。
ただ、少しだけ笑った。
その笑顔には、ずっと温めてきた古い約束を果たした達成感を含むようなやわらかい表情だった。
それから何年か経った。
僕は大学生になった。
伯父は少し白髪が増えた。
ある夏の日、僕は伯父を焼肉に誘った。
「今度は僕が払うよ」
「生意気になったな」
「十歳のあのときから、いつかそうするって決めてた」
伯父は笑った。
「そうか」
僕たちは、あの日と同じ店に入った。
メニューを開いた。
カルビ。
ロース。
ハラミ。
タン。
昔より、少しだけ文字が小さく見えた。
僕はドリンクバーに行った。
そしてカルピスを2つ持って戻った。
そして一つを伯父の前に置いた。
「俺はカルピスなんて飲まないぞ」
「知ってる」
「じゃあ何で?」
「僕が父さんと焼肉屋に行くなら、きっとこうしたから」
伯父は黙った。
僕は肉を焼いた。
網の上で、脂が落ちた。
ジュッ、と音がした。
一瞬だけ炎が高く上がった。
僕はその炎を見ながら思った。
人は、いなくなった人の代わりになるにはならない。
父親の代わりに伯父がなれるわけではない。
伯父の代わりに僕がなれるわけでもない。
でも、人から人へ渡せるものはある。
それは焼肉を食べるという、どうでもよさそうな小さな約束だったりする。
僕が十歳の時、伯父は僕に焼肉を食べさせたかったのではない。
父親から預かった「十歳の約束」を、僕に手渡したかったのだ。
そして今度は僕が、それをだれかに手渡す番なのだ。
そう考えると、僕にとって焼肉屋という場所は少し特別な場所になった。
僕はカルビを一枚、伯父の皿に乗せた。
「食べて」
「自分で食えよ」
「いいから」
伯父は少し笑って、それを食べた。
「うまいな」
「うん」
僕も笑った。
自分の中では一歩大人になった達成感があった。
さいごに
8月29日は焼肉の日。
年間365日、すべての日に何かしらの記念日が割り当てられていますが、焼肉は語呂合わせである8月29日です。
僕は若いころ、食べ放題の焼肉が好きで、友人とお金がある時にたまに行っていました。
焼肉屋さんは、普段食べる外食のお値段より少し高いので、バイト代が入った後など懐に余裕がある時限定の楽しみでした。
友達と〇月〇日に焼肉に行こうぜ、と約束が決まった後は少しうれしかった。
大半の女性からは同意は得られないでしょうが、僕にとってケーキバイキングは心が動きませんが、焼肉はハッピーフードです。
