子どもにご褒美をあげるときに悩む。
アンケートをみてみると、9割の親が子どもにご褒美をあげています。
ご褒美は子どものためにならないなどの、ご褒美論争は長年続いています。
いまの研究結果では、一定条件で褒美をあげるのは、成績向上につながります。
ご褒美をあげている割合
まずは、ご褒美を子どもにあげる親の割合情報です。
出典:子どもとおかしのアンケート Vol.15(クラシエ)
ご褒美でお菓子を買ってあげた経験がある親は約9割。
残りの1割は聞き分けの良い子なのか、親が買わない方針なのか。
9割なので、大半はご褒美お菓子をあげています。
出典:子どもとおかしのアンケート Vol.15(クラシエ)
ご褒美理由は、多岐にわたっています。
1位は「約束を守ったとき」の50.3%、これをできたらご褒美お菓子ね、を約半数のご家庭で実行しています。
2位の「出来なかったことができるようになった」は37.8%で、これも良く聞きます。
おはし、自転車、水泳、縄跳びなど、子ども達成機会はたくさんあります。
3位が「お手伝いをしてくれた」の36.1%、これも定番です。
出典:子どもが喜ぶ「ごほうび」(Z会)
他の情報として、Z会のアンケート結果がありました。
クラシエとZ会のアンケート結果、1位~3の位理由は同じです。
ご褒美・目的化のリスク
ご褒美をもらうことが目当てになって、ご褒美がないと何もしなくなるリスクはよく聞きます。
このリスクについての研究結果の1つが以下です。
3~5歳の保育園51名に対してのお絵描き実験。
絵を描くことが好きな園児を3つのグループに分ける。
グループA=上手に描けたら賞状をあげると伝えて実際に賞状を与える
グループB=賞状をあげることは伝えず描き終えたら賞状を与える
グループC=約束もせず賞状も与えない
結果グループB、グループCの園児に内発的な意欲の低下は見られず。
グループAの園児だけに意欲の低下が見られた。出典:Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the “overjustification” hypothesis.(American Psychological Association)
本来の「目的(=楽しんでお絵描きをする)」が、「報酬(=賞状)を得るための手段」になる。
その後、モチベーションが低下するのがアンダーマイニング効果です。
ご褒美は「外的動機付け」で、自分から動く「内的動機付け」が理想も同じくよく耳にします。
子どもに自立してほしい、自分の足で歩ける人になってほしいのと根源は同じです。
日本の小中学生に対して、外的・内的動機付けについての調査結果が以下です。
出典:小中学生の学びに関する実態調査(ベネッセ教育総合研究所)
小学生は、内的動機づけがあてはまると答えた子どもは、外的動機づけと回答した子に比べ約1.4倍。
グラフ内の[内的(動機づけ)]にあたる上の3つが、[外的(動機づけ)]の下3つより多いことが見て取れます。
中学生は、内的外的の差はほとんどなく、中学生は報酬を勉強する理由と考える子が、報酬以外の理由と同じくらいの割合になっています。
小学校時代は内的動機づけの勉強や学び自体が楽しいが、中学生になるとその割合が減っています。
経済学的にご褒美報酬は効果あり
上記のアンダーマイニング実験とは別に、アメリカでの大規模な実験結果があります。
約3万6000人もの児童・生徒が参加した、米ハーバード大学のローランド・フライヤー教授による大規模実験です。
フライヤー教授の実験には、大きく分けると2つのタイプがありました。一つは「学力テストや通知表の成績がよくなったら報奨金を出す」というもの。つまり「いい成績」というアウトプット(成果)に対して報酬を出したのです。
その一方、「本を読む、宿題を出す、きちんと出席する、制服を着る」といったインプット(投入)に対して報酬を与えるという実験も行いました。
結果を簡単にまとめると、大人に対する実験ではアウトプットにインセンティブを与えることで禁煙や運動を習慣化することに成功したものが多いのに対して、子供の学力を上げるためには、インプットにインセンティブを与えることが有効だということがわかりました。出典:教育経済学が教える「成績アップ」の意外な常識(PRESIDENT 2016年10月3日号)
大人社会のルールとは逆の結果です。
大人社会では結果(アウトプット)に対してお金が支払われますが、子どもの成績アップに効果があったのは、結果であるテスト獲得点数ではなく、いま勉強したらお小遣いをもらえる側です。
子ども達は目先の利益にやる気を出しています。
上記には追加研究があり、アウトプットを高める方法が以下です。
ニューヨーク市立大学のロドリゲス准教授が、アウトプットがマイナスになるのかについて研究を行った。
結果、子どもサポートを行う指導者や先輩がいる場合、学力が向上した。
子どもへのご褒美は、結果(アウトプット)よりも過程(インプット)に対しご褒美を設定する。
あるいは、結果(アウトプット)まで誰かがサポートできるなら、それも成果につながる。
やり方を間違わなければ、ご褒美に効果があります。
のび太の出木杉化計画
子どもにとってプラスに働く何かを探す。
子どものやる気(モチベーション)を引き出すのと意味は近く、ほぼすべての親が抱える課題です。
この文章の最初のグラフの、9割がご褒美を上げている結果からは、やる気を引き出すためにご褒美をあげているのか、何かの結果を出したのでご褒美を上げたのかは違いますが、ご褒美は現代社会では親が使っている1つの方法です。
子どもの夏休みの宿題のモチベーション管理(とご褒美)は、夏の風物詩です。
ドラえもんの登場人物の一人、のび太のお母さんが良く言うセリフ「宿題は終わったの」問いかけは、効果はないと考えた方が良い。
出木杉君のように、自分で勝手に夏休みの宿題を終わらせる子には不必要な声掛けはしない。
のび太のような気分屋さんや、プランニングが苦手の子には適切なサポートをする。
僕は夏休みの宿題は、その内容もさることながら、プロジェクト完遂経験として良い機会だと思っています。
夏休みが何日あって、旅行期間や週のお休み日を考えて、残りの日数から全体配分を考える。
子どもの性格を踏まえ計画を立て、進捗管理とチェック方法を始めに親と一緒に決めて、ルール通り進めていく。
これを、精度高く実行できるようになることが、夏休み宿題プロジェクトの裏目標です。
こうした能力は、社会に出てからの大きな武器になります。
重要ポイントは、精度の高い分析(把握)と、実行するための習慣作り。
親が介入することで、子どもが自分で考える機会を奪っているのではなく。
プランニング経験がない人が大きめのタスクに対し、単独でゴールにたどり着けると思うのは非現実的です。
料理をやったことがない人は、レシピを調べたり包丁の使い方を覚えたり、基本は存在します。
親が何もせず、子どものことは子どもの問題と突き放すのも、難易度は高い。
アドラー心理学の「子どもの課題は子どものもの」と突き放せるほど、心臓に毛が生えている人は多くはありません。
やはり、子ども時代は、長期間の計画を設計・遂行する経験がない・少ないという視点から始める。
仕事のプロジェクトマネージメントの簡易版を、夏休みの宿題と見立て、子どもと一緒に計画立案と実行経験を積む。
一定までだれかが導いて、どこかで背中を押して走り出させるのは、我流の限界を持ち出すまでもありません。
小学校中学年から高学年になって、それまで培った土台から自分でやらせてみる。
この辺りも、子育てに正解がないのと同様、個に依存します。
対し、親は千変万化、変化術のみせどころです。
夏休みが始まった当初は、子どももまだ宿題モチベーションが高い。
前半にウェイトを高くしておくのも大人視点の考えですが、夏休み終盤に(親が)あたふたしないための1つの手法です。
さいごに
ご褒美としてよくできていると感じるのが、ソーシャルゲームの仕組み。
アクティブユーザー数増加を狙い、ログインボーナスなどのうまいご褒美でユーザーを釣る設計がなされています。
僕は運営側経験はないので想像ですが、少数の廃課金者が発生するくらいが理想なのでしょうか。
無料で一定まで楽しんで、ある時点から課金がないと先に進みにくくなる。
ゲーム制作者がお金を稼ぐ手段は大切な事なので、課金自体に僕は悪い感情を持っていません。
おもしろいゲームを作るのにお金がかかるのも当たり前ですし、ゲームであれ音楽であれ、人を楽しませている仕事はすばらしい。
ただ1点、子どもが課金できてしまう仕組みは、やめてほしいと思っています。