自分の子どもに「自制心を持った大人になってほしい」と思う親は多いでしょう。
親側である自分が、その自制心が足りずについ子どもを叱ってしまう。
その反省からも、そう思うのかもしれません。
有名なマシュマロ実験と、残酷な真実になる可能性のあるその後の研究結果についてまとめました。
1960年代に行われた有名なマシュマロ実験
マシュマロ実験は、有名なのでご存知の方も多いと思います。
「小さいときマシュマロを食べるのを我慢できた子はその後も成功している」というもの。
最初のマシュマロ実験は、スタンフォード大学のウォルター・ミッシェル博士によって行われました。
実際にはマシュマロ以外にもクッキーやプレッツェルも使っていました。
対象4歳の子ども186人
子どもたちは1人ずつ部屋に入る
机の上には1つのマシュマロが置いてあり子どもに以下を伝える
「このマシュマロを食べてもよいです、私は用事で15分外出します。戻ってくるまで食べなかったらマシュマロをもう1つあげる」
その結果、2/3の子どもがマシュマロを食べ、1/3分の子どもが待った
この実験では自制心(セルフコントロール)能力を子ども達がどの程度持っているか、という事を測るもの。
子ども達に近い言葉で言うなら、どれくらい「我慢」できるかということです。
その後の追跡調査では
ウォルター・ミッシェル博士の研究を土台に、その後の追跡研究をスタンフォード大学の博士研究員が行いました。
最初の調査対象だった子ども達が、22歳と45歳の時にどうなっているのか。
その結果として、小さいときマシュマロを我慢できた子は、以下のように「良い傾向が継続している」というものでした。
・高い学力、高いSAT(大学進学適正試験)得点を獲得(平均で210点高い)
・健康的な体重
・危険な薬物に手を出さない
・対人関係に優れている
・自尊心が高い
・ストレスと欲求不満にうまく対処する
個人的にも納得です。
大学の試験勉強、体重を維持、人との付き合いで調和点を探るなど。
我慢が適切な言葉かどうか悩みますが、近い意味の根気や継続する力は必須。
試行錯誤する事も含め、一定の積み重ねができなければ、これらは実現できないでしょう。
現代の子どもの方が我慢できるという研究結果
どういう根拠か分かりませんが「いまの子どもは我慢できない」と言う人がいます。
以下のレポートではそれに真っ向、反対の結果です。
ミネソタ大学ステファニー・カールソン博士の研究グループがこれまでの実験結果年代ごとに比較しました。
その結果が以下です。
1980年代の子どもは、1960年代の子どもより1分間長く我慢した
2000年代の子どもは、1960年代の子どもより2分間長く我慢した出典:Can the Kids Wait? Today’s Youngsters May Be Able to Delay Gratification Longer Than Those of the 1960’s(American Psychological Association)
半世紀前の子どもに比べ、現代の子どもの方が我慢強くなっています。
その理由について、ステファニー・カールソン博士は以下の要因という仮説を述べています。
・近代の子どもの方がIQが高い
・近代社会が早期教育の重要性に重点を置いている
昔にくらべIQ的な頭の良い子どもが、食べ物も含め良い環境に置かれている。
情報が豊富かつエビデンスベースで、親側も正しい判断がしやすい。
その結果、最近の子どもの方が、我慢できるようになったということでしょう。
自分の欲望を抑える「セルフコントロール」ができると、社会的に成功しやすいというコレまでの結果。
その「セルフコントロール」は、訓練によって鍛えられることが分かっています。
いくつかの方法を挙げてみます。
・どうしてそれをやりたいのか子どもに聞いてみる
・その上でどうしたらよいか聞いてみる
・自分で決められないのであれば、いくつか提案してみて子どもに決めさせる
・うまく我慢できたらそれを認めてあげる
セルフコントロール能力を高めると健康を害する危険性がある
セルフコントロール能力を高めると健康を害する危険性がある、という厳しい実験結果があります。
2014年ジョージア大学ジーン・ブロディ博士が出したレポートです。
292人のアフリカ系アメリカ人の17歳の学生が対象
対象者が22歳時点で血液検査を実施
血中のDNAメチル化の程度を測定
豊かな家庭環境の学生は、自制心が高いほど免疫細胞が若い
貧しい家庭環境の学生は、自制心が高いほど免疫細胞が老化している出典:Self-control forecasts better psychosocial outcomes but faster epigenetic aging in low-SES youth(PNAS)
対象者数が少なく、人種限定、アメリカの調査結果です。
そしてこの結果は現時点では結論ではなく、まだ研究が始まったばかりとのこと。
しかし、この結果が正しいのであれば、残酷な真実となりそうです。
さいごに
2020年から始まる教育改革もそうですし、実社会ではすでに非認知能力が重要な時代です。
非認知能力については以下。
非認知能力を育てるには、幼児期が重要といわれています。
小さなときの土台をベースに、大きく育つ。
テニスボールくらいの大きさだった雪球を、雪山の頂上から転がす。
どこにもぶつからず、うまく転がり続けて、大人の背より大きくなった雪球のように。
そうは言っても、親の思い通りにならないのが子育て。
「君(子ども)の人生は君のものなので、うまくやっていきなさい」と子どもを突き放す。
親側の心の中では、これくらいの気楽さが、肩の力が抜けていて良いのかもしれません。
ではでは。
最近の子どもの方が自制心が高い
非認知能力は幼少期に育ちやすい