小中学校での普通教室エアコン設置率は、2022年度時点で95.7%。
寒冷地域で未設置がわずかに残っているレベルで、日本全国の大半で設置が完了していると言えます。
体育館はその容積の大きさからのコスト面で設置が進んでおらず、2022年度で11.9%と途上。
いまの夏場の暑さを考えるなら、勉強する普通教室でエアコンなしは修行です。
普通教室はほぼ100%、体育館は10%強
以前、2017年までの学校のエアコン設置率について、上記の文章を書きました。
以下はその後、2022年度までの情報です。
出典:公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について(令和4年9月1日現在)(文部科学省)
ここ20年強について、公立小中学校の冷房設備推移です。
2022年時点で、普通教室=95.7%、特別教室=61.4%、体育館等=11.9%。
令和時代の公立学校の普通教室は、クーラー完備と言って良い状況です。
体育館等が低い理由は後述します。
出典:公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について(令和4年9月1日現在)(文部科学省)
2022年、幼稚園・小中学校・高校、普通教室・特別教室・体育館等の詳細情報が上記です。
わずかな差ですが、一番冷房設備が充実しているのが幼稚園で高校が低め。
小中学校は特別教室が幼稚園や高校に比べ1位ですが、微差です。
寒冷地以外は普通教室はほぼ100%
出典:公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について(令和4年9月1日現在)(文部科学省)
「普通教室」について、都道府県別の情報が上記で、全国平均は95.7%。
グラフを見て分かる通り100%になっていないのは、気温が低い北海道、青森、岩手、長野。
大半の都道府県で、ほぼ100%の空調設備設置率です。
出典:公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について(令和4年9月1日現在)(文部科学省)
「特別教室」の都道府県別情報ですが、こちらは1つ上のグラフ普通教室と違い都道府県別の差がでています。
設置率が高い順では、香川県=93.9%、東京92.2%、滋賀=89.7%。
全国平均は61.4%です。
出典:公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について(令和4年9月1日現在)(文部科学省)
最後に「体育館等」の空調設備設置率、都道府県別情報です。
東京都の82.1%のみ突出しており、それ以外は低い数字。
時点が大阪府=27.4%、兵庫県=26.6%、奈良県=21.9%の近畿勢で、全国平均は11.9%です。
体育館の空調を設置するのは高額
出典:日本の年平均気温偏差の経年変化(1898~2022年)(気象庁 )
上記、ここ130年の日本の気温上昇の情報ですが、この期間気温は約1.5度上昇しました。
1.5度と聞くとそれ程、気温上昇は感じられませんが、真夏の暑さはそんなレベルではない体感値です。
出典:部活動中の熱中症対策 屋内スポーツ活動編(環境省)
上記が、学校内で熱中症発症時にどんな活動をしていたのか。
運動中が大半を占めており、1位は中学・高校とも運動部活動中です。
いま、真夏の運動部活動は、水分補給や時間制限が一般的になりました。
体育館は屋内だから良いのかと言うとそうでもなく、屋内は温度が籠りやすくもある。
とは言え体育館への空調設置は、普通教室に比べ以下の通り数十倍の初期費用が発生します。
平成28年から31年度の間で工事契約を行った空調機設置事業(約4,200事業)について実績単価を確認
実績単価の平均は約35,000円/㎡(H30年度補助単価:23,200円/㎡)
一教室あたりの平均実績額は220万円出典:公立学校施設の空調単価について(文部科学省)
1体育館あたりの工事費
都市ガス(6,600 万円)
LPガス(4,400 万円)
電気・天吊り(5,500 万円)
電気・据置型(2,200 万円)
ただし、ガス配管、ガス貯蔵部分、電気配線付帯工事等などを除く。出典:屋内運動場(体育館)への空調設備の設置について(立川市)
空調設備を設置したとしても、断熱性能が低ければ、効率も悪くコストが高価になります。
その点についても、現代らしいですが、文部科学省より以下の計画があります。
断熱性の確保がされていない体育館へ空調を設置した場合、過大な能力の空調機が必要となったり、光熱費が過大となったりと、効率的、効果的な施設整備ができません。
断熱性の無い体育館には、空調設置と併せて、断熱性確保のための工事を実施する必要があります。
屋根=遮熱塗装、断熱カバー工法
窓=複層ガラス設置及び建具改修
建具=建具の隙間ふさぎ、日射調整フィルム
壁=断熱材充填、遮熱塗装、遮熱処理の鋼板張り
床=床下断熱出典:体育館空調設置に伴う断熱性確保工事について(文部科学省)
ここまでをまとめると以下です。
・2022年時点、普通教室のエアコン設置率は、一部を除いてほぼ完了
・エアコンが未設置は一部の寒冷地
・普通教室以外では、特別教室は61.4%、体育館は11.9%
・体育館にエアコン設置は大きなコストがかかる
学習環境を整えるのはあとあとまで影響する
以下、このブログで書いた以前の文章ですが、勉強するとき気温が高いと成績が下がる。
教室等の環境に係る学校環境衛生基準
換気=換気の基準として、二酸化炭素は、1500 ppm 以下であることが望ましい。
温度=17℃以上、28℃以下であることが望ましい。
相対湿度=30%以上、80%以下であることが望ましい。出典:学校環境衛生管理マニュアル(文部科学省)
上記は2018年の文部科学省の情報ですが、教室の温度は17度~28度を推奨しています。
ある学習塾ではもっと低め、肌寒いくらい環境を意図的に作り出している。
学習環境にっとって、暑さは大敵です。
この話、学習だけではなく、大人が働く状況として考えても普通のお話です。
夏場の都心オフィスでは、エアコンなしでは仕事になりません。
これだけ酷暑になると、子どもだからエアコンをぜいたく品と言い切るのも厳しい。
平均気温が低い地域やお金の問題はありますが、現代はエアコンは必需品レベルになりました。
エアコン有無はその場限りのお話ではなく、複利的な視点でも考えた方が良い。
勉強に集中できない環境にいる子と、快適な温度・湿度が用意されている子を比べるなら、それが後まで影響する可能性がある。
温度がテストの点数につながる研究はすでに存在しており、それが大学や就職に繋がらないとは言えないのではないか。
格差の固定を見聞きする時代です。
各家庭の差は踏み込んめませんが、学校設備は子ども達みんなが使うものとして、最適な環境を目指す意味は大きい。
2022年の学校のエアコン設置率が95.7%とほぼ設置完了しているのは、良い税金の使い方だと感じます。
さいごに
僕は小中高とも公立でしたが、小中は冷房設備はなく、高校はありました。
高校に冷房設備があった理由は、上空を飛行機が通過する場所で、窓を閉め切る前提で作られた学校のため。
入学前、さすが高校だと興奮したのですが、現実は甘くはありませんでした。
入学後に知ったのですが、その高校のエアコン、過去に一度もスイッチを入れたことがない。
理由は定かではないですが、思うに「気合い」のような根性論だったような気もします。
スイッチを入れたらどんなことになるか怖い、と先生が話していたのはなんだかなぁと思って聞いていました。